1. 銅製錬
製錬として基本となるのが自溶炉-電解精製法です。自溶炉-電解精製法の流れを図1に示します。
図1.銅製錬の工程
現在、日本の銅鉱山はほとんど閉山していますので、銅の原料はほぼ全て海外から輸入しています。銅製錬の主な原料となるのは黄銅鉱(CuFeS2)という硫化物の鉱石です。しかし、鉱山から採掘した銅鉱石はそのままでは純度が低いので浮遊選鉱と呼ばれる方法で銅の含有量を高くします。浮遊選鉱を行った銅鉱石を銅精鉱と呼びます。銅精鉱の銅含有量は約30%になります。
図2. 反応式
(1)スラグとは?
スラグとは、金属の精錬過程で生成される副産物のことを指します。主に、鉱石から金属を取り出す際に、不要な不純物や酸化物が溶融状態で分離し、浮遊することで形成されます。スラグは、転炉や自溶炉などの炉で生成され、炉内の温度や化学反応によってその成分が異なります。転炉で生成されるスラグは、特に銅や鉄などの金属を含むことが多く、再利用が可能です。自溶炉のスラグは、一般的に銅含有量が低くなる傾向があります。スラグは、建材やセメントの原料としても利用されることがあります。
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2. 銅精製の順序
(1)銅精鉱
銅精鉱をまずは珪石(けいせき・SiO2)と一緒に自溶炉に投入します。自溶炉の反応を図2の(1)式に示します。
(2)自溶炉
自溶炉では黄銅鉱のFe(鉄)、S(硫黄)が酸素によって酸化反応が起こります。そして、この時の反応熱で黄銅鉱や珪石が溶解します。自溶炉を経た銅はFe、Sとともにマットと呼ばれる状態になります。マットの銅含有量は約60%です。またFeO(ウスタイト)はSiO2と結びつきスラグとなり、SO2はガスとして排出され、硫酸として回収されます。
(3)転炉
マットは転炉によってFe、Sが除去され純度約99%の銅となります。転炉の反応を図2の(2)式に示します。ここでもFe、Sが酸素との酸化反応によってFeOはSiO2とスラグとなり、SO2(亜硫酸ガス)は排ガスとなります。転炉で生成されたスラグの方が自溶炉のスラグよりも銅含有量が高くなります。転炉によって生成された銅を粗銅と呼びます。
(4)精製路
粗銅には酸素が含まれているので、精製炉にてブタンなどのガスを流して酸素を還元除去します。
(5)アノード鋳造
精製路によって銅の純度は約99.5%になります。この時の銅を精製粗銅と呼びます。これをアノード電極用に鋳造(ちゅうぞう)します。
(6)電解精錬
アノード電極の銅を、硫酸銅水溶液を張った電気分解層に、ステンレス板または元となる銅のカソードと交互に挿入して直流電流を流します。アノードでは銅以外の金属元素も溶解しますが、銅よりイオン化傾向の大きいNi(ニッケル)などはカソードに析出できずに溶液に溶出したままです。一方、銅よりもイオン化傾向の小さいAu(金)やAg(銀)などは溶液に溶出できず、そのまま沈殿してアノードスライムとなります。アノードスライムは貴金属の資源として回収されます。
(7)金属銅
約10日間通電を行い、ステンレス板からはがして電解精製の銅が完成します。電解精製によって最終的には銅の純度は99.99%まで高められます。
3. まとめ
銅製錬は、銅鉱石から純粋な銅を取り出す重要なプロセスであり、主に二つの段階、すなわち焙焼と還元によって行われます。焙焼では、鉱石を高温で加熱し、硫黄や不純物を取り除きます。その後、還元反応を通じて、酸化銅を金属銅に変換します。この過程で生成されるスラグは、銅の不純物を含む副産物であり、製錬プロセスの効率を高める役割を果たします。スラグは再利用されることも多く、環境への配慮が求められる現代において、資源の有効活用が重要です。銅製錬は、産業界において欠かせない技術であり、持続可能な社会の実現に寄与しています。
次回に続きます。