延性破面と脆性破面 金属材料基礎講座(その45)

更新日

投稿日

 

◆ 延性破面と脆性破面

 ミクロ的な延性破面についてはその形態からディンプルと呼ばれます。延性破面(ディンプル)の形成過程を図1に示します。ディンプルの起点となるのは不純物介在物などの小さな欠陥です。材料に応力が負荷されると、母材と不純物介在物のはく離が起きます。

 はく離によってできたすき間を空孔といいます。空孔は応力によって徐々に成長していき、やがてとなりの空孔と合体して一つになります。これが一つの断面積全体に広がることで材料の破断が起きます。ディンプルの起点となった不純物介在物は破面に残る場合もあれば、破断時に剥がれ落ちることもあります。材料中に残った不純物介在物は破面観察時にディンプルの奥に観察することができます。

金属

図1. 延性破面

 

 脆性(ぜいせい)破面はミクロ的な破面においても伸びがほとんど見られません。脆性破面では粒内から脆性的に破壊する粒内破面と粒界から脆性的に破壊する粒界破面がります。

 へき開破壊は一種の脆性粒内破面ともいえます。へき開の破面は結晶粒界ではなく、結晶粒のへき開面と呼ばれる場所です。粒界破面は材料の結晶粒に沿って脆性的に破壊が起きます...

 

◆ 延性破面と脆性破面

 ミクロ的な延性破面についてはその形態からディンプルと呼ばれます。延性破面(ディンプル)の形成過程を図1に示します。ディンプルの起点となるのは不純物介在物などの小さな欠陥です。材料に応力が負荷されると、母材と不純物介在物のはく離が起きます。

 はく離によってできたすき間を空孔といいます。空孔は応力によって徐々に成長していき、やがてとなりの空孔と合体して一つになります。これが一つの断面積全体に広がることで材料の破断が起きます。ディンプルの起点となった不純物介在物は破面に残る場合もあれば、破断時に剥がれ落ちることもあります。材料中に残った不純物介在物は破面観察時にディンプルの奥に観察することができます。

金属

図1. 延性破面

 

 脆性(ぜいせい)破面はミクロ的な破面においても伸びがほとんど見られません。脆性破面では粒内から脆性的に破壊する粒内破面と粒界から脆性的に破壊する粒界破面がります。

 へき開破壊は一種の脆性粒内破面ともいえます。へき開の破面は結晶粒界ではなく、結晶粒のへき開面と呼ばれる場所です。粒界破面は材料の結晶粒に沿って脆性的に破壊が起きます。その様子を図2に示します。粒界破壊は不純物介在物の偏析などによって起こります。遅れ破壊、応力腐食割れ、焼戻し脆性などの破壊で観察されます。

金属

図2. 脆性破面

 

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
疲労破壊 金属材料基礎講座(その2)

  1. 疲労破壊 (1) 金属疲労について  疲労という言葉は一般的に使用されており、人が様々なストレスにさらされて疲れた状態のこと...

  1. 疲労破壊 (1) 金属疲労について  疲労という言葉は一般的に使用されており、人が様々なストレスにさらされて疲れた状態のこと...


ミラー指数の方向 金属材料基礎講座(その24)

   ミラー指数には結晶の面だけでなく、方向の表示も重要です。方向の表示にもいくつかの決まり事があります。  まず、面の時と同様に図1(a)...

   ミラー指数には結晶の面だけでなく、方向の表示も重要です。方向の表示にもいくつかの決まり事があります。  まず、面の時と同様に図1(a)...


ヤング率【縦弾性係数】とは?意味や求め方をやさしく解説

  【目次】   1.ヤング率【縦弾性係数】とは ヤング率(英語: Young's modulus 日本語...

  【目次】   1.ヤング率【縦弾性係数】とは ヤング率(英語: Young's modulus 日本語...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...