フィッシュアイとストライエーション 金属材料基礎講座(その43)

更新日

投稿日

 

1.フィッシュアイ

 フィッシュアイは主に内部起点破壊の周辺に見られる模様です。

 浸炭や高周波焼入れなどの熱処理をした鋼は表面が硬いため、内部から破壊を起こしやすいのです。この時に観察されるのがフィッシュアイと呼ばれる模様です。起点を中心に放射状の跡が観察されます。起点は主に不純物介在物や内部欠陥などです。このフィッシュアイ周辺は、へき開破壊のような滑らかな破面となり、その周りと色合いが異なります。

 

金属

写真説明:フィッシュアイ

 

2. ストライエーション

 材料に繰返し応力負荷がかかることで亀裂が進行すると、ストライエーションと呼ばれる破面が形成されます。

 破面の特徴としてはμmオーダーの細かい段差が観察されます。ストライエーションは疲労破壊の特徴的な破面として知られています。ストライエーションの発生過程には、亀裂と繰返し応力が関係しています。亀裂先端に引張応力が負荷されると、亀裂先端ですべり変形が起きます。その後、逆方向の引張応力や圧縮応力が負荷されると、き裂の逆方向にすべり変形が起きます。これが新しいき裂(ストライエーションの1間隔)になります。そして、再度応力が加わる時に新しい亀裂先端からストライエーションの進行が起こります。この様子を図1に示します。ストライエーションの1つの間隔は応力...

 

1.フィッシュアイ

 フィッシュアイは主に内部起点破壊の周辺に見られる模様です。

 浸炭や高周波焼入れなどの熱処理をした鋼は表面が硬いため、内部から破壊を起こしやすいのです。この時に観察されるのがフィッシュアイと呼ばれる模様です。起点を中心に放射状の跡が観察されます。起点は主に不純物介在物や内部欠陥などです。このフィッシュアイ周辺は、へき開破壊のような滑らかな破面となり、その周りと色合いが異なります。

 

金属

写真説明:フィッシュアイ

 

2. ストライエーション

 材料に繰返し応力負荷がかかることで亀裂が進行すると、ストライエーションと呼ばれる破面が形成されます。

 破面の特徴としてはμmオーダーの細かい段差が観察されます。ストライエーションは疲労破壊の特徴的な破面として知られています。ストライエーションの発生過程には、亀裂と繰返し応力が関係しています。亀裂先端に引張応力が負荷されると、亀裂先端ですべり変形が起きます。その後、逆方向の引張応力や圧縮応力が負荷されると、き裂の逆方向にすべり変形が起きます。これが新しいき裂(ストライエーションの1間隔)になります。そして、再度応力が加わる時に新しい亀裂先端からストライエーションの進行が起こります。この様子を図1に示します。ストライエーションの1つの間隔は応力の1サイクルと一致します。そのためストライエーションの間隔と応力負荷の回数から疲労過程を考察する方法もあります。

 

金属

図1.ストライエーションの進行

 

 次回に続きます。

 

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
延性破面と脆性破面 金属材料基礎講座(その45)

  ◆ 延性破面と脆性破面  ミクロ的な延性破面についてはその形態からディンプルと呼ばれます。延性破面(ディンプル)の形成過程を図1に示しま...

  ◆ 延性破面と脆性破面  ミクロ的な延性破面についてはその形態からディンプルと呼ばれます。延性破面(ディンプル)の形成過程を図1に示しま...


ダニエル電池 金属材料基礎講座(その55)

  ◆ ダニエル電池の仕組み  ボルタ電池は腐食モデルとしては良いのですが電池としての性能は悪く実用的ではありません。  ボルタ電池は...

  ◆ ダニエル電池の仕組み  ボルタ電池は腐食モデルとしては良いのですが電池としての性能は悪く実用的ではありません。  ボルタ電池は...


ネルンストの式 金属材料基礎講座(その58)

  ◆ネルンストの式とは ネルンストの式とは電気化学において電池の電極電位を示した式です。 熱力学において化学反応が進行するためにはギブス...

  ◆ネルンストの式とは ネルンストの式とは電気化学において電池の電極電位を示した式です。 熱力学において化学反応が進行するためにはギブス...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...