転位強化 金属材料基礎講座(その13)

更新日

投稿日

 

◆ 転位強化:金属の強化方法のその3

 金属材料に引張試験を行うと、降伏応力以上になると塑性変形を起こします。

 この時ひずみの増加とともに応力値も増加します。これが一般的な加工硬化現象です。加工硬化が起きる時、材料内では多くの転位が導入されています。多量の転位が材料内にあると、転位同士の相互作用が起こります。

 その一つが下図に示した不動転位です。これは転位の相互作用によって転位が固定され、それぞれの転位が動けなくなることです。

金属材料

 図.不動転位

 不動転位が出来ると、周りの転位はそこを通ることができないため、転位のすべり運動が起きずらくなります。転位強化と加工硬化を混同することがありますが、強化を使う時は転位強化であり、硬化を使う時は加工硬化と言います。転位強化の強化機構で材料を硬くすることを加工硬化と言うこともできます。塑性加工量が多くなるほど不動転位の量も多くなるため、より硬くなり...

 

◆ 転位強化:金属の強化方法のその3

 金属材料に引張試験を行うと、降伏応力以上になると塑性変形を起こします。

 この時ひずみの増加とともに応力値も増加します。これが一般的な加工硬化現象です。加工硬化が起きる時、材料内では多くの転位が導入されています。多量の転位が材料内にあると、転位同士の相互作用が起こります。

 その一つが下図に示した不動転位です。これは転位の相互作用によって転位が固定され、それぞれの転位が動けなくなることです。

金属材料

 図.不動転位

 不動転位が出来ると、周りの転位はそこを通ることができないため、転位のすべり運動が起きずらくなります。転位強化と加工硬化を混同することがありますが、強化を使う時は転位強化であり、硬化を使う時は加工硬化と言います。転位強化の強化機構で材料を硬くすることを加工硬化と言うこともできます。塑性加工量が多くなるほど不動転位の量も多くなるため、より硬くなります。一方で伸びは減少していきます。加工硬化において強化と伸びの関係はトレードオフの関係にあります。

 次回は、金属の強化方法のその4:結晶粒微細化による強化です。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
腐食速度と流速 金属材料基礎講座(その62)

    ◆ 腐食速度と流速の関係  腐食速度に影響する要因の一つに水の流速があります。  流速は腐食反応における酸素の供給量に...

    ◆ 腐食速度と流速の関係  腐食速度に影響する要因の一つに水の流速があります。  流速は腐食反応における酸素の供給量に...


微生物腐食とは:金属材料基礎講座(その74)

  金属表面に微生物が付着することで、表面に酸素や水分が閉じ込められ、腐食が進行しやすくなり、微生物が生成する酸や有機酸が表面を腐食させる...

  金属表面に微生物が付着することで、表面に酸素や水分が閉じ込められ、腐食が進行しやすくなり、微生物が生成する酸や有機酸が表面を腐食させる...


オールドセラミックの用途と製造方法

    地球上の物質は、金属や岩石、水、空気、塩類などの無機物と植物、動物、合成樹脂・ゴム、油などの有機物から成っています。無機物...

    地球上の物質は、金属や岩石、水、空気、塩類などの無機物と植物、動物、合成樹脂・ゴム、油などの有機物から成っています。無機物...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...