シュミット因子 金属材料基礎講座(その39)

更新日

投稿日

 

♦ すべり系とシュミット因子

金属材料はすべり運動によって塑性(そせい)変形が起きます。

そしてすべり面は最密充填構造です。結晶構造によってすべり系の数は異なります。体心立方格子が48個、面心立方格子が12個、稠密(ちゅうみつ)六方格子は3個です。一般にすべり系が多いほど塑性変形しやすいのです。

 

金属

図1.丸棒に働くせん断応力

図1、断面積Aの単結晶の丸棒に引張荷重Fが負荷された時を考えます。材料には軸方向に応力が負荷されますが、塑性変...

 

♦ すべり系とシュミット因子

金属材料はすべり運動によって塑性(そせい)変形が起きます。

そしてすべり面は最密充填構造です。結晶構造によってすべり系の数は異なります。体心立方格子が48個、面心立方格子が12個、稠密(ちゅうみつ)六方格子は3個です。一般にすべり系が多いほど塑性変形しやすいのです。

 

金属

図1.丸棒に働くせん断応力

図1、断面積Aの単結晶の丸棒に引張荷重Fが負荷された時を考えます。材料には軸方向に応力が負荷されますが、塑性変形が起こるためには、すべり面にせん断応力 τ が作用して、すべり運動を起こすことが必要です。

すべり運動は丸棒の垂直断面から、ある角度のすべり面で起こります。ここで λ はすべり面と引張荷重の角度、θ はすべり面の法線と引張荷重の角度です。引張荷重のうちすべり面に負荷される荷重は Fcosλ となり、すべり面の面積は A/cosθ となります。この荷重を面積で割ることでせん断応力が求められます。これを式(1)に示します。

 

τ=F/Acosλcosθ=σcosλcosθ (1)

 

σ は引張応力です。cosλcosθシュミット因子と呼ばれ、最大値は λ=θ=45° すなわち 0.5です。すべり系の中でも大きなシュミット因子を持つすべり系を主すべり系と呼びます。シュミット因子により、丸棒に引張応力を負荷した場合、最大のせん断応力は斜め45°の向きに働くことを表します。

 

次回に続きます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
熱処理とは?【基礎知識】代表的な種類や違いをわかりやすく解説

  1. 熱処理とは? 熱処理とは、金属に熱を加えてその組織を変化させ、機械的性質や耐食性、耐摩耗性などの性能を向上させるための加工技術...

  1. 熱処理とは? 熱処理とは、金属に熱を加えてその組織を変化させ、機械的性質や耐食性、耐摩耗性などの性能を向上させるための加工技術...


化学成分の分析:金属材料基礎講座(その141) 元素の成分分析とは

  ◆ 化学成分の分析 化学成分の分析では主に試料中の元素(炭素、鉄など)の成分(含有量、不純物量など)を分析します。化学成分の分析には...

  ◆ 化学成分の分析 化学成分の分析では主に試料中の元素(炭素、鉄など)の成分(含有量、不純物量など)を分析します。化学成分の分析には...


鉄鋼製錬とは:金属材料基礎講座(その87)

  1. 鉄鋼製錬 ~ 転炉・取鍋製錬技術 (1) 転炉  転炉では溶銑予備処理を済ませた鉄以外にもスクラップの鉄も投入されます。 ...

  1. 鉄鋼製錬 ~ 転炉・取鍋製錬技術 (1) 転炉  転炉では溶銑予備処理を済ませた鉄以外にもスクラップの鉄も投入されます。 ...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...