腐食の基本原理 金属材料基礎講座(その52)

更新日

投稿日

金属

 

◆ アノード反応とカソード反応

 腐食の分野において酸化反応をアノード反応、還元反応をカソード反応といいます。

 和訳すると陽極反応、陰極反応ですが、電池反応における陽極反応、陰極反応と混同する恐れがあるので、腐食反応ではそのままアノード反応、カソード反応と表記することが多いようです。

 実際の腐食反応におけるカソード反応は金属の還元反応ではなく、金属表面で水分や酸素が反応して水酸化物イオンを生成するような反応が行われます。アノード反応、カソード反応、全体反応を図1に示します。Fe(OH)2が腐食生成物となります。腐食反応ではこのように電子やイオンが反応するので電流が流れます。この腐食反応で発生する電流を腐食電流(ガルバニック電流)と呼びます。そしてこの時の電気回路を腐食電池と呼びます。

 

金属

図1. 水中腐食の基本モデル

 

 全体反応において鉄は酸化数が0から+2に増加したため、酸化されたといえます。一方、酸素の酸化数が0から-2に減少したため還元されたといえます。

 酸化と還元は必ずペアになって反応が行われます。そして鉄のように相手を還元させる物質を還元剤、酸素のように相手を酸化させる物質を酸化剤といいます。腐食では金属がアノード溶解するので、金属が還元剤、酸素などが酸化剤となります。そして腐食に関係する酸化剤は酸素以外にも水...

金属

 

◆ アノード反応とカソード反応

 腐食の分野において酸化反応をアノード反応、還元反応をカソード反応といいます。

 和訳すると陽極反応、陰極反応ですが、電池反応における陽極反応、陰極反応と混同する恐れがあるので、腐食反応ではそのままアノード反応、カソード反応と表記することが多いようです。

 実際の腐食反応におけるカソード反応は金属の還元反応ではなく、金属表面で水分や酸素が反応して水酸化物イオンを生成するような反応が行われます。アノード反応、カソード反応、全体反応を図1に示します。Fe(OH)2が腐食生成物となります。腐食反応ではこのように電子やイオンが反応するので電流が流れます。この腐食反応で発生する電流を腐食電流(ガルバニック電流)と呼びます。そしてこの時の電気回路を腐食電池と呼びます。

 

金属

図1. 水中腐食の基本モデル

 

 全体反応において鉄は酸化数が0から+2に増加したため、酸化されたといえます。一方、酸素の酸化数が0から-2に減少したため還元されたといえます。

 酸化と還元は必ずペアになって反応が行われます。そして鉄のように相手を還元させる物質を還元剤、酸素のように相手を酸化させる物質を酸化剤といいます。腐食では金属がアノード溶解するので、金属が還元剤、酸素などが酸化剤となります。そして腐食に関係する酸化剤は酸素以外にも水素などがあります。通常、酸素は水中に溶存酸素として含まれています。そして水素は塩酸などの酸性溶液に含まれます。腐食反応の酸化剤が酸素の時は酸素消費型の腐食、水素の時は水素発生型の腐食といいます。

 

 次回に続きます。 

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ネオジム磁石の特長とは?利用例も紹介

  ネオジム磁石は、レアアース磁石の一種で、小型でも高い磁性を発揮する特に強力な永久磁石です。この記事では、ネオジム磁石の特徴や活用方法に...

  ネオジム磁石は、レアアース磁石の一種で、小型でも高い磁性を発揮する特に強力な永久磁石です。この記事では、ネオジム磁石の特徴や活用方法に...


液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

  ◆ 液相のある偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の液相が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模...

  ◆ 液相のある偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の液相が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模...


ボルタ電池 金属材料基礎講座(その54)

  ◆ ボルタ電池の仕組み  2枚の材質の異なる電極を希硫酸などの電解質に浸すと電流が流れます。これは酸による腐食の簡単なモデルです(図...

  ◆ ボルタ電池の仕組み  2枚の材質の異なる電極を希硫酸などの電解質に浸すと電流が流れます。これは酸による腐食の簡単なモデルです(図...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...