析出強化 金属材料基礎講座(その12)

更新日

投稿日

 

金属材料

◆ 析出強化:金属の強化方法のその2

2つ目の強化方法は析出強化です。粒子分散強化という時もあります。これは材料中に硬い粒子を微細分散させて転位の動きを妨げることです。

例えばジュラルミンなどのアルミニウム合金はこの析出強化によって高強度になります。

材料中に硬い粒子が存在すると、転位は多くの場合この硬い粒子をせん断して通過することができません...

 

金属材料

◆ 析出強化:金属の強化方法のその2

2つ目の強化方法は析出強化です。粒子分散強化という時もあります。これは材料中に硬い粒子を微細分散させて転位の動きを妨げることです。

例えばジュラルミンなどのアルミニウム合金はこの析出強化によって高強度になります。

材料中に硬い粒子が存在すると、転位は多くの場合この硬い粒子をせん断して通過することができません。そのため、粒子の周りに転位が止められるところと、その周りを通過する転位が張り出します。その様子を下図に示します。

金属材料

 図. オロワン機構

このまま転位が進むと、析出物の周りに転位がループを残して通過します。これをオロワン機構とよび、この時に析出物を通過する応力をオロワン応力と呼びます。このオロワン応力は粒子間距離が狭くなればなるほど大きくなります。この析出強化では粒子のサイズについて理論的な扱いはありません。

しかし、実際の粒子サイズとその距離は関連性があるため、粒子サイズを細かくすることも広い意味で析出強度に影響するため有効になります。

また、時効析出硬化において時効時間をかけすぎて強度が低下する過時効とよばれる段階があります。これは、最も強度が出る時の析出物の状態から、析出物が大きくなりすぎて、粒子間距離も広くなり、オロワン応力が低下するために起こる現象です。

次回は、その3:転位強化です。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ビーチマーク、延性破壊と脆性破壊 金属材料基礎講座(その44)

    1. ビーチマーク  ビーチマークも前回のストライエーションと同様に割れの進行で見られる特徴的な破面の一つです。  亀...

    1. ビーチマーク  ビーチマークも前回のストライエーションと同様に割れの進行で見られる特徴的な破面の一つです。  亀...


腐食反応 金属材料基礎講座(その49)

  ◆ 身近で起こる金属の不具合  腐食は金属材料の主要な不具合の一つです。  腐食反応は金属材料の性質のなかでも電位差やイオン化傾向...

  ◆ 身近で起こる金属の不具合  腐食は金属材料の主要な不具合の一つです。  腐食反応は金属材料の性質のなかでも電位差やイオン化傾向...


鉄鋼製錬とは:金属材料基礎講座(その87)

  1. 鉄鋼製錬 ~ 転炉・取鍋製錬技術 (1) 転炉  転炉では溶銑予備処理を済ませた鉄以外にもスクラップの鉄も投入されます。 ...

  1. 鉄鋼製錬 ~ 転炉・取鍋製錬技術 (1) 転炉  転炉では溶銑予備処理を済ませた鉄以外にもスクラップの鉄も投入されます。 ...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...