相律 金属材料基礎講座(その10)

更新日

投稿日

 

金属材料

◆ 相律

 ギブスの相律とも言いますが、単に相律とも言います。通常、1つの系を扱う時に成分が 1つだけの時と 2種類以上の時があります。成分が1つの時を1成分系、成分が2つの時を2成分系などと呼びます。そして、系を扱う時には系に含まれる成分とともに液相、固相、気相などの相も扱います。相律とはこの成分と相によって自由度が決まるという関係で次式で表します。

 F=C-P+2

  F:自由度
  C:成分の数
  P:相の数

 自由度とは温度や圧力などを変化させることができる項目の数です。

 例えば、水であれば、成分としては1つです。ここで、水を構成する水素原子や酸素原子などは扱いません。あくまで「水」という単一の成分を扱います。

 水には液相(水)、固相(氷)、気相(水蒸気)の状態があります。水は1気圧であれば0℃から100℃までは液相として存在します。100℃以上の温度では気相、0℃以下の温度では固相となります。相が1つの時の自由度はF=1-1+2=2となります。これは温度も圧力もある範囲内であれば変化させることができることを表します。

 次に、例えば、0℃では固相と液相が変化する凝固点となり、100℃では液相、気相の2相が存在する沸点となります。

 この時の自由度は、F=1-2+2=1となります。この時は、温度または圧力のどちらか片方しか変化させることができません。最後に液相、固相、気相の3相が存在するときの自由度は、F=1-3+2=0とな...

 

金属材料

◆ 相律

 ギブスの相律とも言いますが、単に相律とも言います。通常、1つの系を扱う時に成分が 1つだけの時と 2種類以上の時があります。成分が1つの時を1成分系、成分が2つの時を2成分系などと呼びます。そして、系を扱う時には系に含まれる成分とともに液相、固相、気相などの相も扱います。相律とはこの成分と相によって自由度が決まるという関係で次式で表します。

 F=C-P+2

  F:自由度
  C:成分の数
  P:相の数

 自由度とは温度や圧力などを変化させることができる項目の数です。

 例えば、水であれば、成分としては1つです。ここで、水を構成する水素原子や酸素原子などは扱いません。あくまで「水」という単一の成分を扱います。

 水には液相(水)、固相(氷)、気相(水蒸気)の状態があります。水は1気圧であれば0℃から100℃までは液相として存在します。100℃以上の温度では気相、0℃以下の温度では固相となります。相が1つの時の自由度はF=1-1+2=2となります。これは温度も圧力もある範囲内であれば変化させることができることを表します。

 次に、例えば、0℃では固相と液相が変化する凝固点となり、100℃では液相、気相の2相が存在する沸点となります。

 この時の自由度は、F=1-2+2=1となります。この時は、温度または圧力のどちらか片方しか変化させることができません。最後に液相、固相、気相の3相が存在するときの自由度は、F=1-3+2=0となり温度と圧力もある一定値になり、どちらも変化させることができません。このような状態を三重点と言います。

 金属材料を扱う時には圧力はほぼ一定として扱うことが多いため、実用上、相律の式を以下のようにして扱います。このような系を凝縮系と言います。

 F=C-P+1

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
レーザー溶接、FSW 金属材料基礎講座(その30)

   レーザー溶接は熱源にアーク放電ではなく、CO2レーザーやYAGレーザーなどを使用しています。  レーザーは単一波長で位相差のない光のた...

   レーザー溶接は熱源にアーク放電ではなく、CO2レーザーやYAGレーザーなどを使用しています。  レーザーは単一波長で位相差のない光のた...


金属結合とは

  鉄原子やアルミニウム原子など金属を構成する物質の最小単位は原子です。原子の結合には主に金属結合、イオン結合、共有結合があります。この金...

  鉄原子やアルミニウム原子など金属を構成する物質の最小単位は原子です。原子の結合には主に金属結合、イオン結合、共有結合があります。この金...


偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その172) わかりやすく解説

  ◆ 偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の偏晶組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模式図を示します。...

  ◆ 偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の偏晶組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模式図を示します。...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...