マグネシウム製錬とは?マグネシウムを含んだ鉱物は?:金属材料基礎講座(その90)

更新日

投稿日

マグネシウム製錬とは?マグネシウムを含んだ鉱物は?:金属材料基礎講座(その90)

【目次】

    1. マグネシウムの製造法

    マグネシウムの精製方法は大きく分けて熱還元法(ピジョン法)と電解法(Dow法、IG法など)があります。

    近年では、中国における熱還元法によってマグネシウムの8~9割が生産されています。それに対し、電解法はロシアやイスラエルで行われています。マグネシウムの資源は地殻に多く存在し、マグネシウム製錬原料としては、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)、マグネサイト(MgCO3)、海水などがあります。

    (1)熱還元法

    熱還元法は原料として主にドロマイトが使用されます。熱還元法ではドロマイトに還元剤を添加し、減圧化で加熱します。そうすると、マグネシウムが還元剤によって還元され気体となります。気体状のマグネシウムを集めて冷却させると金属マグネシウムが得られます。還元剤としてはフェロシリコン(Fe-75~80%Si)が使用されます。この時の反応式を式(1)に示します。

     

     2MgO+2CaO+Si→2Mg(gas)+2CaO・SiO2   (1)

     

    通常であれば、酸化マグネシウムを還元させるにはマグネ...

    マグネシウム製錬とは?マグネシウムを含んだ鉱物は?:金属材料基礎講座(その90)

    【目次】

      1. マグネシウムの製造法

      マグネシウムの精製方法は大きく分けて熱還元法(ピジョン法)と電解法(Dow法、IG法など)があります。

      近年では、中国における熱還元法によってマグネシウムの8~9割が生産されています。それに対し、電解法はロシアやイスラエルで行われています。マグネシウムの資源は地殻に多く存在し、マグネシウム製錬原料としては、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)、マグネサイト(MgCO3)、海水などがあります。

      (1)熱還元法

      熱還元法は原料として主にドロマイトが使用されます。熱還元法ではドロマイトに還元剤を添加し、減圧化で加熱します。そうすると、マグネシウムが還元剤によって還元され気体となります。気体状のマグネシウムを集めて冷却させると金属マグネシウムが得られます。還元剤としてはフェロシリコン(Fe-75~80%Si)が使用されます。この時の反応式を式(1)に示します。

       

       2MgO+2CaO+Si→2Mg(gas)+2CaO・SiO2   (1)

       

      通常であれば、酸化マグネシウムを還元させるにはマグネシウムよりも酸化しやすい材料を還元剤に使用する必要があります。ここで、式(1)を成立させるためには、生成したマグネシウムガスを回収して化学反応の生成量を下げることが必要です。その結果、化学平衡を利用して、マグネシウムを還元させる反応を起こすことができます。なお、熱還元法には高温が必要です。中国ではそのために石炭を使用するため、CO2が発生します。

       

      (2)電解法

      電解法は原料として主に海水が使用されます。原料からMgCl2(塩化マグネシウム)を製造して溶融塩電解を行います。IG法ではマグネサイト(MgCO3)を焼成したり、海水を焼ドロマイト処理して水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を生産します。

       

      水酸化マグネシウムを沈殿、焼成することで酸化マグネシウム(MgO)を得ます。酸化マグネシウムを石炭と固めて、塩化炉にて塩素と反応させて無水塩化マグネシウムを製造します。これを電気分解してマグネシウムを精製します。Dow法では海水に石灰乳(Ca(OH2))を加えてMg(OH)2を作り、沈殿ろ過後に塩酸(HCl)を加えて加熱・脱水によりMgCl2・1.25H2Oを製造します。これを電気分解してマグネシウムを精製します。

       

      2. マグネシウムを多く含んだ鉱物とは

      マグネシウムは、地球上で非常に重要な元素の一つであり、さまざまな鉱物に含まれています。特に、マグネシウムを多く含む鉱物として知られているのが、オリビンやピンクマグネサイト、そしてダンバー石などです。これらの鉱物は、主に火成岩や変成岩の中に見られ、地球のマントルや地殻の形成に寄与しています。

       

      オリビンは、特にマグネシウムと鉄を含む鉱物で、緑色の結晶が特徴です。火山岩の一部として見られ、地球の内部の成分を知る手がかりとなります。また、ピンクマグネサイトは、マグネシウムを豊富に含む鉱物で、主に変成岩に見られます。この鉱物は、宝石としても利用されることがあります。

       

      マグネシウムは、植物や動物の生命活動にも欠かせない元素であり、特に植物の光合成において重要な役割を果たします。したがって、マグネシウムを多く含む鉱物は、自然環境においても重要な存在です。さらに、マグネシウムは軽量で強度があり、航空機や自動車の材料としても利用されています。これにより、マグネシウムを含む鉱物の採掘と加工は、産業界でも重要な役割を果たしています。マグネシウムを多く含む鉱物は、地球の構造や生態系、さらには人間の生活においても欠かせない存在であると言えるでしょう。

       

      次回に続きます。

      ◆【関連解説:金属・無機材料技術】

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      福﨑 昌宏

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


      「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      接合の分類 金属材料基礎講座(その28)

         板や棒やパイプなどの金属材料を接合する方法は大きく分けてボルト・ナットなどで締結する機械的接合法と溶接のように材料の一部を溶解・凝固過程...

         板や棒やパイプなどの金属材料を接合する方法は大きく分けてボルト・ナットなどで締結する機械的接合法と溶接のように材料の一部を溶解・凝固過程...


      疲労強度とは? 疲労の概要やS-N曲線の見方など基礎的な知識について解説

      機械や構造物の破壊事故の約80%は疲労による破壊が原因とされており、疲労破壊による航空機や鉄道車両、自動車、橋梁などの重大な事故も多く発生しています。...

      機械や構造物の破壊事故の約80%は疲労による破壊が原因とされており、疲労破壊による航空機や鉄道車両、自動車、橋梁などの重大な事故も多く発生しています。...


      防食の分類とは:金属材料基礎講座(その75)

        ◆ 防食の分類と防食技術  金属の腐食はイオンとして溶出したり、さびなどの腐食生成物を形成することです。金属の状態よりも、イオンや酸...

        ◆ 防食の分類と防食技術  金属の腐食はイオンとして溶出したり、さびなどの腐食生成物を形成することです。金属の状態よりも、イオンや酸...


      「金属・無機材料技術」の活用事例

      もっと見る
      ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

       15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

       15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


      金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

       私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

       私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...