◆ 疲労破壊に影響する因子
疲労破壊には応力集中などの機械的・形状的な要因の他にも、金属組織や結晶粒径など冶金的な要因も影響します。
疲労破壊の第1段階として割れの起点があり、第2段階として割れの進行があり、第3段階として部品の最終的な破壊が起きます。この3つの段階の中で第3段階は急速に破壊が進行するため、これを防ぐ効果的な手法はほとんどありません。そのため、疲労破壊を防ぐには第1、第2段階の起点および割れの進行をどのようにして防ぐか、ということに注目します。
金属材料で疲労破壊の起点となるのは主に酸化物や硫化物などの不純物介在物。そして鋳造欠陥や溶接欠陥などの小さい欠陥・割れなどです。
内部欠陥の発生は溶解・鋳造の引け巣やポロシティ[1]、溶接のブローホールなどある程度限られているため、注意や対策を取ることができます。一方でこのような欠陥が存在しても、周りの金属素地が強化されていると、欠陥や割れの進行が進みにくくなります。これには結晶粒微細化などによる材料強化方法や硬さや圧縮残留応力、材料の延性・脆性などが影響します。
疲労破壊に関係する冶金的因子は強度などのように高いほど良い項目と、欠陥などのように少ないほどよい項目に分けることができます。それが、次のような疲労破壊に影響する因子です。
【疲労破壊に影響する因子】
1. 良い影響
- 硬さ向上
- 圧縮残留応力付与
- 表面粗さが滑らか
- 材料強化を行う
- 負荷応力を下げる
- 延性的である
2. 悪い影響
- 応力集中がある
- 不純物介在物がある
- 内部欠陥がある
- 偏析がある
- 脆性(ぜいせい)的である
強度など高いほど良い項目は結晶粒微細化や硬さなど、材料ごとにおおよその上限があります。また、硬さは硬くしすぎると、伸びや延性がなくなり、材料が脆性的になります。そのため、これら項目は強度と伸びのバランスを考慮して材料設計する必要があります。欠陥などの少ないほど、良い項目はその量を減らすことが最も効果的です。しかし不純物介在物などを完全になくすことはできません。これらはできる限り量を減らし、残った量は微細分散させることが実用的な対策になります。微細分散させることで欠陥部分の応力集中を緩和できるからです。
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