高分子・樹脂・有機化学は、高分子、プラスチックに関連する総合的な固有分野であり、加工、材料、重合、分析、信頼性、応用と様々な技術分野に渡ります。プラスチックは重合度を組み合わせることにより、強度、耐薬品性、耐熱性などの特性を変化させることができ、成形で金型を使って量産性に優れるために、自動車部品、医療分野などへ利用が拡大しています。
特に石油を主原料として作られる合成樹脂は、汎用プラスチックと呼ばれ広い分野で使用されており、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチックなど今日の日常生活においても多大な貢献をしています。プラスチックの特長は室温から200℃程度の範囲で、弾性と粘性の両方の性質を示す振る舞いをします。特に熱可塑性樹脂は、この温度範囲で液体から固体へと容易に形態変化をします。このような特性から、射出成形法等で複雑な3次元形状の成形品も容易に作ることが出来ます。プラスチックの用途は広く、現在世界中で最も多く使用されている樹脂材料です。
プラスチック製品は使われていないモノを見つけることが難しいくらい我々の生活の中に浸透しています。携帯製品のスマートフォンなどにもプラスチックは使われています。「小型化」、「薄型化」、「軽量化」、「省電力化」、「機能・性能の高度化」および「低コスト化」などの要素が、強く要求されていて今後の開発製品に対応が必要です。
これら市場要求に応えるため、製品要件を整理し製品設計に当らねばなりません。製品設計に当たっては、決して「プラスチック材料」「金型」「成形加工」単体の断片的な偏った知識では太刀打ちできません。これらの基礎知識を持ち、全体のバランスを図ることが重要です。
今回は、熱硬化性樹脂を解説します。
1.「熱硬化性樹脂」とは
樹脂やプラスチックは、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分けられます。
熱硬化性樹脂は、熱硬化性を持つ合成樹脂の総称のことをいい、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステルなどがあります。
熱硬化性樹脂の成形では、成形材料を金型に投入した後で、150℃以上で加熱します。
材料はすぐに溶けてしまい、液状になりますが、その後は加熱による化学反応で固化させて、個体の製品になります。
加工後は溶媒に溶けなくなり、樹脂の軟化も再加熱しても起きません。
つまり、熱加工で二度と形状を変化させることができない素材の樹脂となっています。
加熱することで、重合を起こして高分子の網目構造を形成するので、硬化してしまいます。
それぞれの種類ごとに素材としての特徴がありますが、金属とは別の素材として注目されており、新しい素材としてメーカーが可能性を追求しています。
熱硬化性樹脂の成形方法には、トランスファー成形、射出成形、注型成形、圧縮成形、積層成形などがあります。
2.「熱硬化性樹脂」の種類と特徴
フェノール樹脂
耐熱性、耐寒性に優れています。酸や溶剤、水にも強い特性があります。
樹脂自体が耐衝撃性には弱いです。
樹脂の製品名には、ベークライトと呼ばれています。
メラニン樹脂
傷がつきにくい特性があり、光沢がある素材で、色付けがしやすいです。
耐水性、耐薬品性、耐アーク性があります。
ひび割れやが起きやすい点、スチームや水に弱い欠点もあります。
ユリア樹脂
耐油、電気特性に優れています。
熱硬化性樹脂の種類の中でも、最も安価な素材である熱硬化性アミノ樹脂になります。
そのため、成形材料として幅広く使用されています。
耐薬品性、耐スチーム性、耐熱水性が弱い特徴があり、ひび割れも起こりやすいです。
エポキシ樹脂
硬化剤を利用して得られるプラスチック素材になります。
汎用タイプには、ビスフェノールA型エキスポ樹脂があり、絶縁性や耐薬品性があり、ガラス、金属に相性が良いことで有名です。
3.「熱硬化性樹脂」のメリットとデメリット
熱硬化性樹脂のメリット
- 成形しやすく、大量生産が可能になる。
- 低原材料のコスト削減が可能になる。
- 溶剤や腐食性物質に対する...
熱硬化性樹脂のデメリット
触媒後の反転や再成形ができないというデメリットがあります。
そのため、熱硬化性複合材料のリサイクルは非常に困難になってきます。
4.熱硬化性樹脂の材料選定のポイント
- 材料の熱伝導性が良い。
- 材料の流動性が良い。
- 加熱時のガスの発生量が少ない。
- 効果速度が速いこと。
- 離型性が良いこと。
- 収縮率が小さいこと。
最後に、熱硬化性樹脂の知識は製品設計だけでなく、資材調達、購買、成形加工、製造、品質保証・品質管理、研究・開発、販売・営業などの全てで必要な知識です。設計者だけでなく、ものづくりに関わる多くの方の役に立つ知識であると思います。