荷重という言葉は材料力学等において良く出てきますが、力・外力・重量と同じような意味です。単位としてはニュートン、キログラム重です。一方、応力となると荷重を面積で割った単位面積当たり荷重、言い換えれば力がかかった時の圧力のことです。材料力学で、最初に理解しなければならないのが応力です。設計の場面でもこの概念は頻繁に使われます。
機械設計者は、まず検討段階で壊れそうか、壊れないかを判断し、それから詳細設計に入ります。応力が集中する位置では強度が不足するため、この影響についての検討が最重要です。今回は、このような背景を踏まえて、応力の概要について解説します。
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1. 応力とは
応力とは、力を受けた物における負荷の大きさです。負荷の大きさを表すのであれば力でもいいようですが、材料における負荷の大小は、力だけで判断できません。ですので、正しくは、物体が力を受けた時に物体内部に発生する力、言い換えると、外力に応じる力の事、変形に抵抗する力を応力といいます。
すなわち、応力は、内部に発生した単位面積あたりの力で、1ミリ平米あたりにかかる力です。実際の設計では製品が壊れないようにするために、高い応力が発生している箇所は応力を下げる必要があり、余裕のある場合は軽量化させることが出来ます。
応力の単位は重要で、単位を間違えて計算すると全く異なる答えになります。構造力学、構造計算では単位変換は当たり前に行いますので、応力の単位、換算、種類、読み方、各単位の使い方は重要です。
2.応力が変化する仕組み
応力は、物体内部の単位面積あたりの力として定義されます。具体的には、応力 = 力 / 面積として表されるもので、これは物体が外部からの力や内部の構造変化に反応する際に生じる現象です。
外部からの荷重:
物体に外部から力が作用すると、その物体はこの力に抵抗するために内部の応力が発生します。例えば、橋に車が乗ると、橋の材料は車の重さに対抗するための応力が生じる。
温度変化:
温度が上昇または下降すると、物質は膨張や収縮を起こすことがあります。このような体積の変化は内部での応力を生じさせる可能性があります。
物質の変形:
物質が曲がったり、伸ばされたりすると、その形状の変化に応じて内部の応力が変動します。この応力は、物質の元の形状に戻ろうとする力として働くことが多い。
結晶構造の変化:
一部の物質は、温度や圧力の変化に応じて、結晶構造が変わることがあります。この結晶構造の変化は、内部応力の変化を引き起こすことがある。
不均一な材料:
材料が不均一である場合、異なる部分が異なる方法で反応する可能性があります。このような場合、一部の領域で高い応力が発生する可能性があります。
図1、応力集中による破壊イメージ図
総じて、応力は物質が外部の環境や内部の条件の変化に応じて変化する際の重要な要因です。この応力の変化を理解することで、材料の振る舞いや、それがどのようにして破壊されるのかを予測することが可能となります。
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応力の種類には曲げ応力、せん断応力、ねじり応力などがあります。応力は単位面積あたりに作用する力ですから、荷重が作用面に対して垂直方向であれば垂直応力、作用面に対して平行であればせん断応力と呼びます。この単位は、応力の種類で変わります。また応力度と応力の違いでも単位が変わります。各応力・応力度の単位の理解は重要です。NとkNは1文字の違いですが、意味は全く違います。1文字の違いで、3桁も値が変わるからです。構造計算をするときには、単位を合わせることが重要です。
【応力の種類】
図2、応力の種類
- 圧縮応力(圧縮応力度)
- 曲げ応力(曲げ応力度)
- せん断応力(せん断応力度)
- 引張応力(引張応力度)
応力には、上記のような種類がありますが、引張応力と圧縮応力は、合わせて垂直応力と言います。
応力の種類と単位です。
① 圧縮応力
概要: 圧縮応力は、物体が外部からの力により圧縮される際に生じる内部の応力です。具体的には、物体の断面積に対して垂直に作用する圧縮力の強さを示すものです。
単位はN、kNで表します。
求め方: 圧縮応力=圧縮力/断面積
② 曲げモーメント
概要: 曲げモーメントは、物体が曲がる際に生じるモーメント(力の回転効果)を示すものです。構造物の某点での曲げモーメントは、その点での力の大きさと、力の働点からの距離の積として表されます。
単位はN・mm、kN・mで表します。
求め方: 曲げモーメント=力×力の働点からの距離
③ せん断力
概要: せん断力は、物体の断面をスライドさせる方向に作用する力を示すものです。物体が二つの異なる方向の力を受けることにより、その断面にせん断応力が生じ、これに対抗する力がせん断力です。
単位はN、kNで表します。
求め方: せん断力の計算方法は構造や状況によるが、一般的には物体の断面における力のバランスから直接計算される。
④ 引張応力
概要: 引張応力は、物体が外部からの力により引き伸ばされる際に生じる内部の応力です。物体の断面積に対して垂直に作用する引張力の強さを示します。
単位はN、kNで表します。
求め方: 引張応力=引張力/断面積
4.ひずみとは?
ひずみは、材料や物体が外部からの力や温度変化などにより変形するときの、その変形の程度を非次元で示す量です。具体的には、物体の変形前と変形後の長さの差を、変形前の長さで割ったものとして定義されます。
図3、ひずみのイメージ
ひずみが起きる仕組み
物体に力が作用すると、その物体の内部に応力が生じます。この応力が物体の特性や強度を超えると、物体は変形を始め、これがひずみとして観察されます。この変形は、物体の材料特性、応力の種類や大きさ、持続時間などによって異なります。
ひずみの計算式
基本的なひずみの計算式は以下のように表されます。
ひずみ(ε)=変形後の長さ−変形前の長さ変形前の長さ
ひずみの計算例
例: 10cmの棒が1cm伸びた場合のひずみを計算すると、
ε=(10cm-11cm)/10cm=0.1
となります。
また、実際の応用では、応力とひずみの関係を示す「応力-ひずみ曲線」を利用して材料の特性や変形の程度を評価することも多いです。
ひずみとポアソン比の関係
ポアソン比について
ポアソン比(ν, ニューと読む)は、材料の機械的特性を示す指標の1つです。これは、ある方向に応力を受けたときに、その応力方向と直交する方向で生じるひずみの比率を表します。言い換えれば、材料が一方の方向に引張られるときに、他の方向にどれだけ収縮するか、または逆に圧縮されるときに他の方向にどれだけ膨張するかを示すものです。
ポアソン比の定義
ポアソン比(ν)=-(横ひずみ(εy)/縦ひずみ(εx))
- εx は応力方向のひずみ(縦ひずみ)
- εy はその直交方向のひずみ(横ひずみ)
- マイナス符号は、縦ひずみが引張の場合、横ひずみは通常収縮するため、その比率を正の値として取るためです。
ポアソン比を利用したひずみの求め方
縦方向のひずみが既知で、ポアソン比がわかっている場合、横方向のひずみは以下の式で求めることができます。
εy=−ν×εx
材料ごとのポアソン比の例
材料ごとのポアソン比の例(表)
材料 | ポアソン比 |
鉄や鋼 | 約0.28 - 0.30 |
アルミニウム | 約0.33 |
銅 | 約0.34 |
ゴム | 約0.49 |
ほとんどの岩石やセラミックス | 0.1 - 0.4 (材料や条件によりばらつきがある) |
ポアソン比は、材料の変形特性や応力状態の評価において非常に重要な役割を果たします。特に、多軸の応力状態下での材料の応答を理解するためには欠かせないパラメータとなっています。
5.応力の単位、まとめ
応力とは、物体が力を受けた時、物体内部に発生する力、言い換えると、外力に応じる力の事、変形に抵抗する力と説明しました。
応力の単位は重要で、単位を間違えて計算すると全く異なる答えになります。構造力学、構造計算では単位変換は当たり前に行いますので、応力の単位、換算、種類、読み方、各単位の使い方は重要です。
応力の種類には曲げ応力、せん断応力、ねじり応力などがあります。応力は単位面積あたりに作用する力ですから、荷重が作用面に平行な場合は断応力、作用面に垂直な場合は垂直応力と呼びます。この単位は、応力の種類で変わります。応力と応力度の違いで単位が変わります。
【主な応力の単位一覧】
- パスカル(Pa)
- ニュートン毎平方メートル(N/m2)
- ニュートン毎平方ミリメートル(N/mm2)
- キログラム力毎平方ミリメートル(kgf/mm2)
- キロ重量ポンド毎平方インチ(ksi)
材料力学では部材に働く力により発生する応力を公式で計算します。そして部材に形状不連続がある場合には、文献等で応力集中係数を見積もり、実際にどの程度の応力が発生するかを予測するのです。実際の部材は教科書に出てくるような単純な形状や構造ではなく複雑なので、応力を求めることは多くの場合非常に難しいことです。
材料力学で、最初に理解しなければならないのが応力です。設計においても、応力という概念は頻繁に使われます。
機械設計者は、まず検討段階で壊れそうか、壊れないかを判断し、それから詳細設計に入ります。応力が集中する位置では、強度が不足するため、この影響についての検討が最重要です。
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