国内繊維産業の中で、唯一健闘しているのが不織布です。生産でも中国の台頭によりその量は中国が多い状況で、製造技術についても大型開発が途絶えています。近年ナノファイバー技術の進展が著しく、なかでもセルロースナノファイバーは日本が世界をリードし、ナノファイバー不織布が繊維産業を再興させるかもしれません。新しい繊維が開発されると、その利用は先ず不織布から始まります。
今回は、不織布の概要を解説します。
1.不織布とは、その特徴
不織布とは織らない布のことで、原料となる繊維を織らずに、さまざまな方法で結合させて作ります。不織布の構造は、繊維間に小さなスキマを無数に有する構造であることから、通気性・吸水性・保湿性に優れているのが特徴です。不織布は、原料、製法の組み合わせによって、布状・レザー状・綿状・紙状などの形状にすることができ、しなやかなものから頑丈なものまで作れます。
不織布はJIS‒L0222で「繊維シート、ウェブまたはパットで繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、融着、接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編み物、タフト及び縮絨フェルトを除く」とされています。文字通リ繊維を何らかの方法で絡ませたり、接着したりして作った繊維状のシートです。
【不織布の特徴】
- 大量生産可能で、織物に比べると安価
- 切ってもほつれないで、厚みや密度が柔軟に変えられる
- 抗菌や撥水性など新機能が付与できる
- 使用する素材の組み合わせが無数にある
繊維状のシートのため不織布に様々な製法があるのです。使用する原料と製法の違いによってシートの特徴があります。この製法は長繊維と短繊維不織布の2つに大別できます。長繊維不織布は原料を高圧で押し出し熱風で吹き飛ばすことで極細不織布にするメルトブロー不織布などでスパンボンド不織布が主体です。
短繊維不織布は接着剤を使用するものがケミカルボンド不織布、特殊針で繊維を交絡させるものがニードルパンチ不織布、熱融着繊維などを使ったものがサーマルボンド不織布、高圧水流で繊維を絡ませるのがスパンレース不織布です。
2.不織布の製法
不織布の材料繊維は、天然繊維と、化学繊維があります。原料となる繊維はポリエステル・レーヨン・ナイロン・ビニロン・オレフィン繊維などを主に使用し、場合により機能化繊維を活用し、他の繊維をブレンドする事により様々な用途に適用出来ます。次に主な不織布の製法、特徴、用途です。
【サーマルボンド法】繊維結合法は、繊維を熱により溶融し、繊維同士を熱融着します。エアースルー法、熱カレンダー法があります。ウェブ形成は、パラレルウェブ、クロスウェブ、ランダムウェブです。繊維のみのため、衛生的で環境にも優しい。繊維の種類で風合い、硬さを調整出来ます。マスク、衛材、フィルター(エアー・液体用)、芯地、農業等の用途です。
【ケミカルボンド法】繊維結合法は、ウェブを接着樹脂(エマルジョン系)に含浸、またはスプレー後、乾燥して繊維の交点を結合します。ウェブ形成は、パラレルウェブ、クロスウェブ、ランダムウェブです。樹脂の種類、付着量で風合い、厚みなど様々に調整可能です。フィルター、自動車部材、土木、建材、工業用等の用途です。
【ニードルパンチ法】繊維結合法は、ウェブをニードルで上下に突き刺し、バーブによって機械的に繊維を絡ませます。ウェブ形成は、クロスウェブ、ランダムウェブです。繊維のみのため衛生的で、繊維の太さでバルキー性、ポーラス性を出せます。自動車部材、建材、生活資材等です。
3.不織布メーカー
次に主要な不織布メーカーを紹介します。
【デュポン】
米国の世界最大級の化学メーカー。日本では旭化成との合弁会社の旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツにて不織布(タイベック)を展開。
【フロイデンベルグ】
ドイツの不織布メーカー大手。2015年に日本バイリーンに対して東レとともに子会社化しました。ポリエステルスパンボンド不織布とフィルター事業が二本柱です。
【Berry】
米国のプラスチ...
【キンバリー・クラーク】
キンバリー・クラークは、米国の衛生用品及びティッシュメーカー。不織布を内製しています。クリネックスブランドでティッシュにも強みを持ちます。消費者向けだけでなく業務用でも展開しています。
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不織布は紙の代替、織物、編み物や皮革の代替という、安価な代替品というイメージがあり、名称も織布にあらずと不を付けたものです。一方、商品開発が進むにつれ、不織布にしかできないものが多く開発されて、あらゆる分野に不織布が浸透していきました。新型コロナ騒動でマスクの不織布でその認識が広がりました。