「あなたはデータを活用し、利益を生み出しつづけていますか?」 はたしてどうかなと思われた方は、財務諸表を見るといいでしょう。財務諸表と聞くと大げさな感じがしますが、要は売上や利益、コストなどを見るといいということです。上手くいっていれば、売上や利益、コストなどに何かしら変化が起きているはずです。1年経ってもピクリとも変化しない場合、そのデータ活用(データサイエンスや機械学習など含む)の取り組みは上手くいっていない可能性が高いのです。
ではデータ活用で成果が出ない場合、何が問題なのでしょうか。データが不十分だから、IT基盤が不十分だから、数理モデルの精度が不十分だからでしょうか。今回は、「孫氏の教え(各個撃破せよ!)」というお話しをします。
【目次】
1.データが十分にない!
(1)IT基盤が重要なのか?
(2)孫氏の教え
(3)ランチャスター戦略
(4)戦いの場の選択
2.「戦いの場の選択」に問題がある
(1)上手くいく可能性はぐんと高くなる
1.データが十分にない!
「うちの会社にはデータが十分にないから」という言い訳もよく聞きますが、多くの企業には、活用できそうなのデータは何かしら存在します。例えば、受発注や売上、出荷履歴などのデータは必ずあります。このデータがないと企業活動ができませんし、決算処理もできないことでしょう。
(1)IT基盤が重要なのか?
じゃぁIT基盤が重要なのかとなりますが、そうでもありません。
例えば……
- データが十分に蓄積され
- IT基盤がそれなりに整備され
- 予測モデルの精度もまずまず
……なのに、なぜか上手くいかない! ということは少なくありません。
(2)孫氏の教え
私が20代の頃、50代のベテランデータ分析者から勧められたのが「孫氏」です。データ分析をする上での要諦が書かれているというのです。「戦わずして勝つ」という教えが印象深い「孫氏」ですが、戦うことが避けられないのであれば……
- 強者を避け弱者を取り込み対抗する力を付ける
- 強者に対し弱点を集中的に攻める
……などがポイントになります。
(3)ランチャスター戦略
もう少し時代を現代に近づけると、20世紀前半にランチャスターやクープマンなどです。データと絡めた議論を展開しています。この辺りは、ランチェスター戦略として馴染みのあるビジネスパーソンも多いことでしょう。要約すると、「強者と面と向かった戦闘を避け、強者の戦力を分断させ局地戦に持ち込み、そこに戦力を集中させ各個撃破する」といった感じです。
(4)戦いの場の選択
物騒な話しになりましたが、この考え方は、「データを活用し利益を生み出しつづける」ことにも応用できます。ここでの「戦い」は「データ分析・活用(データサイエンス実践)」になります。重要なのは、次の3つです。
- 戦いの場の選択
- 戦力の集中と各個撃破
- その戦場を良く知ること
言い換えると、次のようになります。
- データ活用する現場の「お困りごと」(問題)を適切に捉え小さなテーマに分解し、取り組むテーマを設定する
- この「お困りごと」(問題)を解決するために、個々の小さなテーマを戦略的に実践する
- 現場状況と、そこでどうデータ活用するのかを良く理解する
2.「戦いの場の選択」に問題がある
上手くいっていないケースの多くが、テーマ設定に問題があります。「戦いの場の選択」に問題があるということです。何となくテーマを決めていたり、エライ人から思い付きのようなテーマが降ってきたり、声の大きな人の意見を採用したりと滅茶苦茶です。筋のいいテーマを設定したかどうかは運しだいになっています。
多くの場合、勝ち目のないテーマを選んで右往左往しているのです。仮に、幸運にもデータから有意義な情報(集計...
結果や予測結果など)を導きだしても、当の現場は「提供された情報をどう活用し成果を生み出せばいいのか分からない」といった残念なケースも多いです。現場のことをよく知らないがために起こる、よく目にする悲劇です。
(1)上手くいく可能性はぐんと高くなる
繰り返しになりますが「戦いの場の選択」「戦力の集中と各個撃破」そして「その戦場を良く知ること」が重要です。このことを意識し適切にテーマ設定し、アナリティクス(データ分析や数理モデル構築など)を設計さえすれば、データ活用で上手くいく可能性はぐんと高くなります。少なくとも現場で活用されないアナリティクス(データ分析や数理モデル構築など)は避けられます。