最近のデータ分析やモデル構築では「予測を当てればいい!」という風潮もありますが、確かに当てるだけであれば、それで問題ないでしょう。画像処理などの世界では、それでいいかもしれません。ただ、ビジネス系のデータ分析の場合、単に当てるだけというよりも「なぜそうなったの?」という要因分析ニーズが高いのです。要因分析で使えるデータ分析手法の多くは、解釈性の高い伝統的な統計モデルが多いのです。最も簡単な手法は、相関係数を使ったものです。それはそれで、シンプルで強力な手法です。このような中、最近では「統計的因果探索」という手法が注目され始めています。
今回は、「ビジネス要因分析で欠かせない統計的因果探索」というお話しをします。
【目次】
1.要因分析とは?
2.相関分析とは?
3.2つの変量間に線を引く
(1)統計的因果探索とは?
(2)因果推論と因果探索
(3)本当の因果ではない!
1.要因分析とは?
着目している指標である目的変数Y(売上など)の異常が検知された場合……
- なぜこのような異常が起こったのか?
- 異常の要因は何だったのか?
- そのためにどのような対策を打つべきなのか?
……など、色々と協議されることでしょう。このとき、着目している指標である目的変数Y(売上など)に影響を与えるであろう、X(説明変数)のデータがある場合、X(説明変数)から要因を探る要因分析を実施することがあります。
このとき、X(説明変数)同士がどのような関係性にあるのかを知ることは、対策を考える上で非常に重要です。「構造の把握」と言います。最もシンプルなのが、2変量の関係性を探る相関分析です。
2.相関分析とは?
相関分析とは、2変量間の線形関係を、相関係数という指標で分析するものです。
線形関係とは、「一方の値が増えると、他方の値も比例して増える」みたいな関係です。もちろん、「増える」という関係性だけでなく、「減る」という関係性もあります。
大きく3つの線形関係を見出していきます。
- 正の相関関係がある(相関係数が1に近い)
- 相関関係がない(相関係数が0前後)
- 負の相関関係がある(相関係数が-1に近い)
ちなみに、相関係数は-1以上1以下の値を取ります。
3.2つの変量間に線を引く
相関分析は、2つの変量間に線形関係がありそうかどうかを検討します。
そして、2つの変量間に線形関係がありそうな場合、その間に「線」を引くことで表現することが多いです。その「線」は、単なる線に過ぎません。なんとなく、「線」に「矢印」があると嬉しいでしょう。特に、説明変数X同士の場合には、「矢印」を付けられると便利です。
(1)統計的因果探索とは?
一言で言うと、「矢印の向きを分析する」という感じです。
日本でよく使われるのは、LinGAM(Linear Non Gaussian Model、線形非ガウス非巡回モデル)という手法です。非正規分布を仮定し因果関係を推測する手法です。
(2)因果推論と因果探索
似たようなワードに、統計的因果推論というものがあります。似たような感じですが、データ分析の置かれている状況がことなります。超簡単に言うと、統計的因果推論は、検討したい因果をあらかじめ想定した、伝統的な統計学アプローチの1つである実験計画法・分散分析の流れを汲んでいます。
一方、統計的因果探索は、手元にあるデータから因果構造の分析する、探索的なデータ分析の流れを汲んでいます。数理統計学に詳しい方は、伝統的な統計学アプローチの1つであるパス解析をイメージすると、分かりやすいかもしれしれません。
(3)本...
当の因果ではない!
統計的因果探索をいくら精緻に実施したところで、それはあくまでもデータから垣間見た因果関係のようなものに過ぎません。
統計的因果探索だけの話しではなく、RubinやPearl系の統計的因果推論もそうですし、時系列データに対する因果推論であるGranger因果などもそうです。データから統計学的な手法を用いても、あくまでもデータ上の関係であって、因果関係どころか、たまたまそのように見えるだけで、まったくの無関係の可能性すらあります。要は、最後は人間の経験値と洞察力がものを言います。