予算などの計画値を考えるとき、前年同又は前年比1.1倍みたいな立て方があります。
例えば……
- 前年これぐらい使っているから、来年も前年と同じぐらいでいこう!
- 前年よりも売上を伸ばしたいから、今年は前年比1.1倍ぐらいでいこう!
……というものです。
前年を引き合いに出すことが、周囲を納得させる最大のロジックになっています。今回は、「前年踏襲という意味不明なロジックがデータ活用でもたまに登場する」というお話しをします。
【目次】
1.前年踏襲ロジック
(1)ポンコツな仮定の下でのデータ分析には限界がある
(2)最大の問題はロジックを疑わないこと
(3)間違いだと証明されない限り続く
2.不問の仮定をデータ分析で打破せよ
1.前年踏襲ロジック
前年踏襲ロジックとは、前年もしくは例年という概念を持ち出して、予算などの計画値を考えることです。数字ではなく「アクション」で考えると、「いつもやっているから、やる」ということになります。この前年踏襲ロジックを前提に、データ分析・活用(データサイエンス実践)をしている姿をたまに見ます。
例えば、決められた広告販促予算の中で最適な広告配分をする、などです。
この「決められた広告販促予算」が前年と同額であったり、前年比〇〇%という感じで、前年基準の前年踏襲ロジックになっているのです。このような仮定を設定しものごとを考えることを、前年踏襲ロジックといっています。
前年踏襲ロジックそのものの善し悪しの判断がない状態で、このロジックを使っているケースがあります。
(1)ポンコツな仮定の下でのデータ分析には限界がある
このような前年踏襲ロジックは、なかなか厄介です。
もし前提踏襲ロジックがポンコツであれば、その仮定の下で実施したデータ分析などはどうなるでしょうか? 素晴らしいものになるでしょうか?ポンコツな仮定の下でのデータ分析には限界があります。データ分析で得られたあろうベネフィットを十分に甘受できないことでしょう。もったいないです。
(2)最大の問題はロジックを疑わないこと
この場合の最大の問題は、前年踏襲ロジックのような、善し悪しの分からない仮定を疑わないことです。
お話しを聞くと……前年踏襲ロジックを使っている認識がありこれでいいのだろうかと思っている……という状態、つまり「未知の知」(知らないことを知っている)であるケースが多いです。
前年踏襲ロジックの善し悪しが証明されない限り、この仮定を後生大事に守り使い続けるようです。ちなみに最悪なのは、「未知の未知」(知らないことは知らない)の組織です。前年踏襲ロジックを無意識で使い続けている組織です。
(3)間違いだと証明されない限り続く
恐ろしいことに、間違いだと証明されない限り続くことがあります。
「いつもやっていることだから」という理屈で物事が進むケースです。「いつもやっていること」が間違いだと証明されない限り続きます。「いつもやっていること」が正解だという証明をしていないのにです。前年踏襲ロジックもその一つです。
この前年踏襲ロジックですが、善いとするケースもあれば、ダメというケースもあります。善し悪しは確かめてみないと分かりません。要は、ある仮定の下でデータ分析などをするときに、そもそもの仮定自体をデータ分析の対象とした方がいいということです。
2.不問の仮定をデータ分析で打破せよ
データ分析をするとき、なんだかんだと色々な仮定をおいて実施しています。
先ほど、「未知の知」(知らないことを知っている)と「未知の未知」(知らないことは知らない)という、ややこしいお話しをしました。データ分析をするときに置いている仮定も、「未知の知」のものと「未知の未知」のものがあります。少なくとも「未知の知」の仮定はデータ分析の力を借りて検証してみましょう。
例えば、前年踏襲ロジックを使っているが、そのロジックの善し悪しは分からないが何となく使って...
いる場合には、前年踏襲ロジックそのものの善し悪しをデータの力で検証するということです。
どうやって検証するの? という疑問はあると思います。一番簡単なのは、その仮定を無くすか緩めるかして、データ分析をしてみることです。
例えば、広告販促の予算配分の前提として「総額予算は前年と同じ」というのがある場合は、「総額予算の仮定を排除する」であるとか「総額予算の仮定に幅を持たせる」などとし、その結果どうなるのかをデータの力で確かめてみるという感じです。
その結果、前年と同じ総額予算が最適という結論に達することもあります。