あらゆるモノがインターネットを介して繋がるIoT社会の実現においては、センシング技術は、産業活動にとって競争力・効率性を維持するため、その重要性が一層大きくなっています。将来のVRグラスは各種の人体センシング機能組み込みが一般的になり、またさまざまなウェアラブルセンサも組み合わされて、人の体や心の状態とリアルタイムで連動するゲームなどのエンタテインメントを体験できるようになることが予想されます。今回は、センシング技術とは?課題と活用事例を解説します。
1. センサーとは?活用例についても紹介
センサーは、五感に例えられます。人の感覚器官の機能は明確に定義されています。人間は五感により外部環境に関する情報を取り込み、脳が適切な行動を指示します。体の快適性・安全性を維持するには、感覚器官の機能は欠かすことができません。
センシング技術とそのアプリケーションは、テクノロジーのニーズに合わせて進化しています。距離・熱・圧力の多様な特性を検出するセンサーを利用することで今日の製品は、周囲のすべてを感知し、消費電力が少なく、設置・保守が安価な能力を備えています。ビジネスに新しい価値を生み出す重要なコンポーネントがセンサーです。多種多様な物理的・化学的特性を検出できるセンサーが開発されてきました。一例を次に紹介します。
自動運転自動車に関する研究開発が世界各国で活発に行われています。この自動運転自動車の開発には、従来人間が行っていた認知判断操作を車載センサーおよびコンピュータにより代替させる必要があります。このような自動運転には、不確実性のあるセンサー情報を目的に合致するように解析し、適切な判断を行うセンサー情報処理アルゴリズムが必要となります。
また、光と電波の間の電磁波領域であるテラヘルツ波は、物質固有の振動スペクトルを非接触で分析でき、非極性物質(紙・プラスティックなど)を透過する性質など、非破壊で物質の内部情報をイメージ・センシングできる革新的な技術として着目されています。現状では、実用的な光源・検出器の開発が進んでおらず、産業として大きく伸びていない状況です。しかしながら、テラヘルツ光は、システムが高効率化すればその特徴を活かして、様々な分野への活用がなされると期待されています。
◆ センサーの活用例
- スマートホーム技術:センサーが人の存在や動きを検知して、照明や温度などを自動で調整する
- 環境モニタリング:センサーが大気中の汚染物質や水質を測定し、環境保護活動に役立てる
- 医療機器:センサーが患者の体温や心拍数などの生体情報をモニタリングし、医療スタッフに通知することで早期の異常を検知する
- 農業:センサーが土壌の湿度や栄養状態をモニタリングし、適切な時期に水やりや肥料の追加を行う
- 自動車の衝突回避システム:センサーが周囲の車両や障害物を検知し、ドライバーに警告を送ることで事故を防ぐ
- 省エネ:工場内の温湿度や照度、作業者の有無を検知し、空調機や換気システム・照明の調整など、エネルギーコストの削減につなげる。
2. センシング技術とは
センシング技術とは、計測対象の変化や状態をセンサーで計測し、定量的にとらえ付加価値の高い情報に変換する技術がセンシング技術です。
(1)センサー計測とデータ
光・温度・湿度・重さ・音・地磁気・加速度などの物理変化や状態をセンサーで計測することが可能です。カーナビは、エンジン回転数をセンサーで検知して、GPSとそれ以外の電波を検知して正確な位置を割り出しています。スマートフォンでは、センサーにより本体の傾き・動きなどをデータ利用しています。このように、センシング技術を使った機器は、街中にそして、身に着けるものなど、あらゆるものに利用されています。
(2)データの処理と解析
センサー単体のデータでは、一元的な価値しかありませんが、それをソフトウェアで処理することにより、例えば歩いているのか、車なのか、電車なのかがわかります。ソフトウェアのアルゴリズムを絡めると、何をしているのかが確度が上がって検知できるようになります。
IoTにおいては得られたデータが解析されることで意味を持ちます。ビッグデータをAIで解析して、データの意味、どのように反応すべきかがわかり、フィードバックができるようになります。
(3)データの活用
データは、どう使うかが最も重要です。何と何を組み合わせれば使用目的にあったアウトプットを出せるかという仮説を立てます。IoTのエンジニアは、さまざまなセンシング技術を知り、その組み合わせでデータをどう活用するかを考えることが重要です。
今後活用が期待されるセンシング技術の一つが、画像処理技術です。CPU性能の向上とAI技術の組み合わせにより、画像処理解析を早く、容易に行えるようにしました。画像処理解析によるアプローチは表情や物の動きなど、物理量では計測が難しいものに対して、ほぼリアルタイムで処理する様な用途に有効です。
3. センシング技術の種類と特徴
センシング技術は、様々な種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。光学センシングは光を利用して物体の位置や動きを検知し、高精度で細かい動きも検知可能です。音響センシングは音波を利用して物体の位置や距離を検知し、遠距離でも利用可能で、環境に左右されにくい特徴があります。地磁気センシングは地球の磁場を利用して位置や方向を検知し、屋内でも利用可能で、GPSが利用できない場所でも有効です。圧力センシングは物体の重さや圧力を検知し、タッチスクリーンや体重計などに利用されます。温度センシングは温度の変化を検知し、環境の温度管理や体温計などに利用されます。それぞれの技術は異なる状況や用途に応じて適切に活用されています。下表に整理します。
4. センシング技術の進歩
最近のセンサーは小型化にもかかわらず、高い応答性を備え、故障率が低く、消費電力も少ないので、企業は製品や生産工程における更なる機能や効率の向上を期待できます。
センシング技術の今後の進歩は、より高性能かつ高速に相互ネットワーク化されたセンサー群としての展開です。プロセス産業用のセンサーは、多くの企業に展開されて...
5. センシング技術の活用事例
以下は、センシング技術の活用事例です。他にもさまざまな分野でセンシング技術が活用されています。
(1)製造業での活用事例
- 製造プロセスの監視と最適化:センサーを使用して製造ライン上のデータをリアルタイムで収集し、生産効率を向上させる。
- 予防保全:機械のセンサーデータを分析して、故障の予兆を検知し、メンテナンスを行うことで生産停止を防ぐ。
(2)製造業以外での活用事例
- スマートホーム:センサーを使用して、家庭内の照明や温度、セキュリティシステムを自動で制御する。
- 医療分野:患者の生体情報をセンサーでモニタリングし、医師がリアルタイムでデータを確認して適切な治療を行う。
6. まとめ
センシング技術は、状況が激動しているだけに、例えばインターフェイス標準化の動向が読み切れないのも不安材料の一つかもしれません。消費材は、製品システムの中でサービスが完結するので、必ずしも企業間で標準化しなくても構わないのですが、産業用途のセンシング技術では、異なる装置をインターネットで接続する時に、データのフォーマットが統一されていないと使いにくいことになります。