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今回は、清掃に関連した事例を紹介します。
この写真は乱流方式のクリーンルーム付属の二次更衣室です。左側は、社服を吊るすハンガー上部です。元々は、ハンガーの上についている金具をそのままパイプにかけていました。一般的にはそうするでしょう。
自分の社服をハンガーにかける時や逆に取り出す時は、その場所を広くしたいという心理が働きます。そして両側のハンガーを自分のハンガーから遠ざけてスペースを確保しようとします。この時、ハンガーの上部とパイプが擦れ金属粉が発生します。また、パイプの上には埃などがついています。それもこの動作によって落ちてきます。
その下に社服があるので、社服にそれらのゴミが付着します。上部でゴミを発生させ、下の社服で受けているわけです。
このことは防塵衣を吊るしてあるハンガーパイプも同じです。防塵衣を汚してしまうわけです。
その対策として、結束バンドでハンガーを固定した例です。もちろん安全のことも考え、結束バンドの尻尾も切り取った。パイプの上は埃が付着しやすいので、清掃ポイントとしたが、本当に清掃ができるかやってみた。
結束バンドの尻尾を切取った部分は滑らかではなく、ギザギザになっています。そこにワイパーが引っ掛かり、清掃しにくいだけではなく、ワイパーの繊維が千切れて残ることもあることが分かった。結束バンドの尻尾を切る時は、締め付けた後、上で切るのが作業しやすい。そこまでで終わってしまうことがあるが、実際にやってみて清掃しにくかったので、切り取った部分を側面に持って行った例です。
せっかく対策をしても、清掃しにくいとやらなくなってしまいます。パイプの上も清掃のポイントに加えたのだから、清掃ができるかどうかも確認したということです。
少し前に、メンテナンスはどこからどこまでやるのかということを説明しました。
このハンガーの固定作業を、そのメンテナンスに当てはめてみると、結束バンドを切っただけでは、やりっ放しと同じです。やったことが良いかどうかを考え、何を評価するか、保証するかです。先の中国の清掃事例にも触れたように、自分のやったことを自分で評価し、保証するとところまでやっておきたい。
結束バンドの尻尾で目をつく事例があり、締め終わった後、尻尾を切るということを実践するところは多いですが、切ったままというところもあります。切り取り部分が上になっているのです。そのようなところでは、あのパイプの上は清掃していないだろうと推測しています。指で触れてみると嫌な顔をされる時もあります。重箱の底をつつくように見えるのでしょう。恐らく、パイプの上の清掃は考えていないだろうと思います。
更衣室内のゴミは、浮遊しているもの、落下しているもの、どちらも非常に多いです。落下しているものでも、人の動作、行...
動でかなり高く巻き上がります。それがパイプの上にも落下します。ゴミの内容によって、そしてその堆積の量によっても違うでしょうが、指先で感じることができる場合があります。ざらざら感だと、粒子の大きなゴミです。また細かなものの場合は、指先に白く付いて来たとか、指先同士を擦り合わせてみると、違和感があるのでわかるでしょう。クリーンルームの中だけでなく、取り巻く環境に着目するのも良いですね。
次回に続きます。
◆関連解説『環境マネジメント』