リモートセンシングとは、離れたところから対象物に触れずに、その形状や性質など様々な情報を取得する技術または手法のことをいいます。可視光線の他、赤外線やマイクロ波といった電磁波が利用されます。
一般的には人工衛星や航空機に搭載したセンサーにより地上を観測する技術を指すことが多いのですが、ソナーなどの超音波による水中探査、地上での遠隔による構造物診断や自動車で移動しながら情報を取得するモバイルマッピングシステムなども広い意味でのリモートセンシングと言えます。今回は、リモートセンシングの概要を解説します。
1.リモ―トセンシングの利点
リモートセンシングの利点として以下が挙げられます。
- 広い範囲を短時間で計測できる
- 離れた(人が近づけない/見られない)場所を容易に計測できる
- 周期的に同じエリアを同じ条件で繰り返し計測できる
2.センサーと計測対象
リモートセンシングに用いられるセンサーとしては主に以下のような種類があり、それぞれ計測できる内容が異なります。また、対象物から放射される電磁波を計測する受動型センサーと、機器が自ら光や電磁波を照射してその反射波を計測する能動型センサーに分けることができます。
(1)光学センサー
- ①RGBカメラ:可視光の赤(R)緑(G)青(B)の3波長を撮影します。地表の2次元情報(地形、土地利用、災害状況など)の把握に用いる他、複数の写真から三角測量の原理を応用して地表面の凹凸を三次元化する写真測量に利用されます。
- ②マルチスペクトルカメラ/ハイパースペクトルカメラ:可視・近赤外線領域を、青・緑・赤・近赤外の波長帯毎に計測して映像化します。これにより、植物の分布や生育状況などを可視化することが可能になります。最近ではこの技術を活用して、農作物の生育状況に応じて農薬や肥料の散布場所や量を細かく制御するスマート農業(精密農業)が進められています。
- ③熱赤外線センサー:対象物が放射する熱赤外線を可視化して温度分布を映像化します。地表面や海水面の温度分布、火山活動や森林火災の状況把握に利用されます。
- ④LiDAR(Light Detection And Ranging):対象物に近赤外線のレーザーパルスを照射する能動型センサーの一つで、物体に当たって跳ね返ってくる強さと時間を計測することで、物体までの距離や方向、位置、形状などを測定します。地表面の高さや、建造物や樹木の形状を計測するのに利用されます。
(2)マイクロ波センサー
- ①受動型センサー:物体が放射するマイクロ波を計測します。地表や海面の温度、積雪量、雲の状態などの計測に利用されます。
- ②能動型センサー:マイクロ波を地表に照射し、反射して戻ってくるマイクロ波を計測します。地形、植物の有無、降雨分布、風向・風速などの計測に...