大型プロジェクトにおいては、プロジェクトマネジメントとしてコスト管理することは利益を管理することに直結します。しかし、メーカーの製品開発プロジェクトにおいては、プロジェクトのコストは管理されていません。メーカーは、日程管理をしているが、コストはプロジェクトとは別に各部門で管理しています。
メーカーの製品開発プロジェクトは、プロジェクトマネジメントから考えると、費用はプロジェクトに対して発生しており、日程がプロジェクトで把握されているにもかかわらず、費用は各部門で管理されているのです。これで、プロジェクト全体をマネジメントできるのでしょうか?
メーカーの製品開発プロジェクトは、プロジェクトで費用管理する必要性がないのです。コスト管理は、予算という企業会計に対して行われますが、個々のプロジェクトまでやる必要は無いという考え方です。しかし、プロジェクトマネジメントとしてコスト管理することの重要性が理解され、経済的環境の厳しさからプロジェクト軸でのコスト管理を導入する企業も増えました。開発者がQCDを把握して進めることは設計開発根拠や優先順位を決めるための指標となり得ます。
このような背景を踏まえて、今回は、プロジェクト軸でのコスト管理のやり方であるEVM(Earned Value Management)の概要を解説します。
1. EVMとは
EVMとは、アーンドバリューマネジメントで、当該プロジェクトに対して、時間的指標ではなく、費用的指標で進捗管理する手法で、プロジェクトを管理するマネージャーが知ると有効な手法の一つです。目標・作業量の到達度をコスト変換したEarned Value:出来高の概念で管理します。
◆EVMの指標
EVMを導入するための5つの指標について紹介します。
- 計画価値:PV
- 実コスト:AC
- 出来高:EV
- スケジュール差異:SV
- コスト差異:CV
【Planned Value:計画価値】
PVは、計画作成時予算で、ある時点までに完了すべき作業にかかる予算総コストです。例えば人件費などの費用を予想して算出することです。
【Actual Cost:実コスト】
ACは、ある時点までに投入した実際費用の合計値です。例えばあるツールを開発するにあたり、1カ月で実際にかかった費用はいくらと算出することです。
【Earned Value:出来高】
EVは、出来高で、成果の実績値です。例えばあるツールを開発するにあたり、1カ月での出来高はいくらか、期間を限定して出来高を算出します。作業の到達度をコストに変換する考え方です。到達度を時間軸では見ません。
【Schedule Variance:スケジュール差異】
SVは、現時点の出来高と計画時の想定予算コストの合計の差分で、スケジュール差異のことです。EVーPV=SVで算出して、結果がプラスは、スケジュールは早く進んでいます。例えば、あるツールの開発で、2カ月目までの出来高が100万円。ツール開発の2カ月目までにかかると考えられる予算が80万円なら、EVーPV=20万円:SVになるので、スケジュールは早く進んでいます。
【Cost Variance:コスト差異】
CVは、ある時点までに投入した実際コスト:ACと、現時点の出来高:EVとの差で、コスト差異のことです。EVーAC=CVで算出して、結果がマイナスは、予算オーバーです。
2. EVMのメリット
EVMは、次のメリットを持つツー...
- プロジェクトに対して現状を評価してクリティカルパスを特定します。
- ステークホルダーに可視的に説明責任を果たします。
- ポートフォリオのレベルで全体像を示します。
- データに基づいて未来へのアクションと意思決定を行います。
- プロジェクトの予算調整、リソースの調達、優れた技術への投資へ迅速に介入します。