EVMとは?アーンドバリューマネジメントの基本と重要な指標を解説

 

メーカーの製品開発プロジェクトは、プロジェクトで費用管理する必要性がなく、コスト管理は、予算という企業会計に対して行われ、個々のプロジェクトまで費用管理をやる必要は無いという考え方です。しかし、プロジェクトマネジメントとしてコスト管理することの重要性が理解され、経済的環境の厳しさからプロジェクト軸でのコスト管理を導入する企業も増えました。開発者がQCDを把握して進めることは設計開発根拠や優先順位を決めるための指標となり得ます。 

このような背景を踏まえて、今回は、プロジェクト軸でのコスト管理のやり方であるEVMの概要を解説します。

1. EVM(Earned Value Management)とは何か?

EV(Earned Value)とは、直訳すれば「稼いだ価値」となります。 例えばプロジェクト計画時に予定した日程が遅れそうになった時に人員や設備を増加して何とか間に合わせたとしても、それは計画どおりとは言えません。 実際に得られた価値と投入したコストを時間軸に沿って評価する事で計画に対する現時点での評価やプロジェクト完了時点での到達予想を定量的に実行する事が可能となり、このEVを使ったプロジェクトの実績と進捗を管理する方法がEVMです。

2. EVMの導入でできることやメリット

EVMは、次のメリットを持つツールで、コスト管理に最適な手段です。開発プロジェクトにおいてQ:クオリティ&品質、C:原価&工数、D:スケジュール&納期をバランス良く進めることは至難の業です。そこでQCDを1指標=コスト換算することで同じ価値観で比較し判断材料にすることでより早期決定を促すことが可能になります。

(1)プロジェクトの進捗管理が容易になる

EVMは、予算とスケジュールに対する実績を統合的に分析することで、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握することができます。これにより、問題や遅延が早期に発見され、適切な対策が取られるため、プロジェクトの成功率が向上します。

(2)予算の効率的な管理が可能になる

EVMは、予算と実績の比較を通じて、プロジェクトのコストパフォーマンスを評価することができます。これにより、予算の適切な配分やリソースの最適化が可能となり、コストの過剰な支出や無駄な出費を防ぐことができます。

3. EVMを構成する指標

(1)PV:Planned Value:計画価値

PVは、計画作成時予算で、ある時点までに完了すべき作業にかかる予算総コストです。例えば人件費などの費用を予想して算出することです。

(2)EV:Earned Value:出来高

EVは、出来高で、成果の実績値です。例えばあるツールを開発するにあたり、1カ月での出来高はいくらか、期間を限定して出来高を算出します。作業の到達度をコストに変換する考え方です。到達度を時間軸では見ません。

(3)AC:Actual Cost:実コスト

ACは、ある時点までに投入した実際費用の合計値です。例えばあるツールを開発するにあたり、1カ月で実際にかかった費用はいくらと算出することです。

(4)BAC:Budget at Completion:完成時総予算

BACは、プロジェクトが完了した時点での総予算を表す指標です。つまり、プロジェクト全体の予算がどれくらいかを示すものです。BACはプロジェクトの予算管理や進捗状況の把握に役立ちます。プロジェクトが進行するにつれて、BACと実際の費用との比較を行うことで、予算の適切な管理やコントロールが可能となります。

4. EVMによるプロジェクト管理における重要な数値

EVMによるプロジェクト管理における次の数値は、プロジェクトの進捗状況やコストパフォーマンスを把握し、問題を早期に発見して対策を講じるために重要です。どの数値もプロジェクトマネージャーにとって貴重な情報源となります。

(1)SV(スケジュール差異)

SVは、プロジェクトの進捗状況を示す指標で、予定された作業量と実際の進捗の差を示します。SVは、PV(計画価値)からEV(実際の価値)を引いた値で算出されます。

(2) CV(コスト差異)

CVは、プロジェクトのコストパフォーマンスを示す指標で、予算と実際のコストの差を示します。CVは、EVからAC(実際のコスト)を引いた値で算出されます。

(3)SPI(スケジュール生産性指標)

SPIは、プロジェクトのスケジュールパフォーマンスを示す指標で、進捗と予定の比率を示します。SPIが1より大きい場合、進捗が予定より速いことを示します。

(4)CPI(コスト効率指標)

CPIは、プロジェクトのコストパフォーマンスを示す指標で、予算と実際のコストの比率を示します。CPIが1より大きい場合、予算内で作業が進んでいることを示します。

(5)ETC(残作業コスト見積り)

ETCは、プロジェクトの残りの作業にかかる見積もりコストを示す指標です。ETCは、BAC(完了時予算)からEVを引いた値で算出されます。

(6)EAC(完了時コスト差異)

EACは、プロジェクトの完了時の総コストを示す指標で、プロジェクトの進捗状況を考慮して将来のコストを見積もります。

5. EVMグラフの作成方法

EVMグラフは、プロジェクトの進捗状況を視覚的に表現するための有用なツールです。次に、EVMグラフを作成する手順を簡単に説明します。プロジェクトの進捗状況やコスト管理に役立ててください。

①プロジェクトのスケジュールと予算の準備:プロジェクトのスケジュールと予算を準備します。これには、作業パッケージやタスクの予定開始日、予定完了日、予算額などが含まれます。

②実績データの収集:プロジェクトが進行するにつれて、実績データを収集します。これには、実際の進捗状況や実際の費用などが含まれます。

③EVMパラメータの計算: EVMグラフを作成するためには、以下の主要なパラメータを計算する必要があります。

  • Planned Value (PV): 予定価値 
  • Earned Value (EV): 獲得価値
  • Actual Cost (AC): 実際の費用

④EVMグラフの作成:これらのパラメータを使用して、EVMグラフを作成します。横軸に時間(進捗)、縦軸に金額をとり、PV、EV、ACの値をプロットします。これにより、プロジェクトの進捗状況やコストパフォーマンスを一目で把握することができます。

6. まとめ

EVMは、アーンドバリューマネジメントで、当該プロジェクトに対して、時間的指標ではなく、費用的指標で進捗管理する手法で、プロジェクトを管理するマネージャーが知ると有効な手法の一つです。目標・作業量の到達度をコスト変換したEarned Value:出来高の概念で管理します。

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