【この連載の前回:データ分析講座(その227)データがあるから何かやってへのリンク】
DX(デジタルトランスフォーメーション)だぁー! ということで、データ活用が一部の特殊な人の世界の話から、多くの人に関係する話になってきました。なぜならば、DXの前段階であるデジタライゼーション(Digitalization)は、データ活用が前提になっているからです。
ちなみに、デジタライゼーション(Digitalization)の前段階にデジタイゼーション(Digitization)という状態があります。デジタイゼーション(Digitization)は、業務などがデジタル化しデータが適切に発生する状態にすることです。多くの人がイメージするDXは、デジタイゼーション(Digitization)からデジタライゼーション(Digitalization)までの流れでしょう。言葉の定義や認識はさておき、言いたいことはデータ活用が一般化しつつあるが、上手くいっているとは言えない状況がある、ということです。
では、どうすればいいのか?今回は、「羊頭狗肉なDX神話。上手くいかないと思ったらデータで裏付けるところから始める」というお話しをします。
【目次】
1.羊頭狗肉なDX神話
2.今あるデータから価値を作ろう!
3.データで裏付けるところから始めよ
(1)当たり前をデータで裏付ける
(2)アクションに繋がるプラスアルファを追加する
3.データを利益に変えろ!
1.羊頭狗肉なDX神話
ここ10年で、ビッグデータ、AI(人工知能)と来て、最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)です。ほぼ同じことを別の切り口で語っているかのようです。共通しているのは、データを使うことと、何かスゴイことが起こるかもという神話が添えられていることです。ビッグデータ神話、AI神話、DX神話、そこで語られる神話は夢のようなお話しで、現実はもっと地味なものです。
例えば、DX化だ! と言って不必要な業務をRPA(Robotic Process Automation)化しても、不必要な業務が効率化するだけで、不必要な業務そのものは残り続け、そこにかけた費用だけ無駄なコストが発生します。
ちなみに、RPAとは機械学習の技術やルールエンジンなどで、人間が実施していたPC上の処理などを代替する仕組みです。Excelマクロで作業効率しているのと、正直大差ないと思います。実際、Excelマクロでサクッと余計なお金をかけることなく出来ることを高額なRPA(例:月額課金など)を導入している残念な企業を何社も見たことがあります。
神話は神話のまま終わります。そもそも、今あるデータすら上手く活用できていないのに、デジタイゼーション(Digitization)だぁー! とか言って、データ発生と活用の基盤を整えても、残念な結果に終わる可能性が高いです。
2.今あるデータから価値を作ろう!
では、どうすればいいのか?今あるデータから価値を作ってみればいいのです。そうすることで、データから価値を生み出す感覚を持つことが出来ることでしょう。
そして、こんなデータがあるとこんなことが出来るのにとか、色々と現実的なアイデアが広がっていきます。要は、神話ではなく、現実的な希望が見えてきます。
3.データで裏付けるところから始めよ
今あるデータから価値を作るときの進め方は、非常にシンプルです。
- 当たり前をデータで裏付ける
- アクションに繋がるプラスアルファを追加する
注意点が1つあります。それは、データ起点に物事を考えないと言うことです。
どういうことかと言うと、「このデータで何が分かるだろうか?」とは考えないと言うことです。あくまでも、現場起点です。
どういうことかと言うと、「以前からこう言われているけど本当かな? データで確かめてみよう!」と考えると言うことです。
(1)当たり前をデータで裏付ける
先ず、データのことを一切合切忘れ、現場の都市伝説を洗い出していきます。
先ほど述べた「以前からこう言われているけど本当かな? データで確かめてみよう!」の前半部分の「以前からこう言われているけど本当かな?」です。
それは、次の流れです。
- ①-1 現場の都市伝説を集める(ブレストなど)
- ①-2 集めた都市伝説を親和図法などを使いまとめる(神話グループを作る)
- ①-3 入手できそうなデータのカタログ(データの概要やサンプルデータなど)を集める
- ①-4 各神話グループごとにロジックツリーで構造化する(データなどで確認できるレベルまで粒度を細かくする)
- ①-5 データで確認できることを確認する(都市伝説のファクト化)
やっていることは簡単で、ブレストなどで現場の神話を洗い出し、親和図法(別名KJ法)でそれを整理しまとめ、ロジックツリーでデータなどで確認できるレベルまで粒度を細かくし、そしてデータで検証していくということです。
最終的には、現場の都市伝説のいくつかがデータで裏付けられファクト(事実)になっているはずです。
例えば、「顧客コンタクト件数が少ないほど顧客離反が増える」という現場の都市伝説がデータで裏付けられ、都市伝説のファクト化されたという感じです。ちなみに、①-3までデータは登場しません。データを念頭に置きながら①-1と①-2を実施すると、思考の幅が狭まるので、「データ」というキーワードを頭の中から消し去って取り組みましょう。
(2)アクションに繋がるプラスアルファを追加する
「顧客コンタクト件数が少ないほど顧客離反が増える」という現場の都市伝説がデータで裏付けられることは、それだけで価値があることかもしれません。しかし、現場は嬉しくないかもしれません。現場の営業パーソンが当たり前と思っている「顧客コンタクト件数が少ないほど顧客離反が増える」がデータで裏付けられました、というだけだからです。
毎晩睡眠をとっている人に、「あなたの腕に付けてもらっているリストバンド型のウェアラブル・デバイスのデータから『あなたが毎晩、睡眠をとっていることが分かりました』」と言っているようなものだからです。当然と思っていることを、データで裏付けただけだからです。
では、どうすればいいのか?データからアクションに繋がるプラスアルフ...
先ほどの「顧客コンタクト件数が少ないほど顧客離反が増える」に対しては、例えば「最適な顧客コンタクト件数は年7回です」という感じに提示したりし、顧客コンタクト件数の閾値を提示してあげれば、顧客コンタクトのし過ぎやしなさ過ぎを防げるかもしれません。
3.データを利益に変えろ!
どのようなデータ活用も、ビジネス活動というか企業活動としてやるからには、利益変動が起こらないと価値に感じてもらえません。端的に言うと、売上アップかコストダウンです。顧客コンタクトのし過ぎを抑制し無駄なコンタクトが減れば、業務効率化しコストダウンになるかもしれません。
顧客コンタクトのしなさ過ぎによる離反が減れば、その分の売上ダウンを回避(データ活用前考えると売上アップ)できるかもしれません。
(1)の「当たり前をデータで裏付ける」だけで良い利益変動が起こるのであればそれで十分です。
(1)の「当たり前をデータで裏付ける」で良い利益変動が起こる見通しがなく、(2)の「アクションに繋がるプラスアルファを追加する」を実施する場合には、良い利益変動が起こらないと意味がありませんので、そのことを十分に注意しましょう。
次回に続きます。