1.MPM導入ステップ
MPM導入ステップは次のような6ステップになっています。順次ご説明していきますが、コンセプトが一般的な設備管理・保全と著しく違いますので、できるだけ丁寧にご説明するつもりですが、もしご不明な点がありましたら、お気軽にこの場にご質問を投げかけて頂ければと思います。
- Step 1:現有設備の状態把握と分類
- Step 2:オペレーターの設備管理能力把握とクラス分け
- Step 3:オペレーターの設備管理能力と設備の状態とのマッチング
- Step 4:オペレーターの設備管理能力育成
- Step 5:MPMキックオフ
- Step 6:活動状況のチェックとフォロー
【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その69)へのリンク】
2.MPM導入ステップの説明
Step 1:現有設備の状態把握と分類
MPM導入に際し、最初に取り組むべきことは、現有設備の状態把握と分類で、その進め方を下記します。
1)現有設備の状態把握基準
現有設備の状態把握は、設備が作り出す製品の品質の出来栄えを念頭に「表51-3 設備の状態別分類」(以下“表”)に従って行うのですが、表にある、適格・不適格、正常・異常の判定基準は、後工程や顧客に対する検査規格値に対する工程能力指数Cpになります。
・適格・不適格の基準は「工程能力指数Cp」
安定した品質は、そのデータの分布が正規分布であることが前提で、その分布の幅は、標準偏差σの6倍とし(正規分布するデータが6σの中に入る確率は、統計的に99.47%)、規格の幅を6σの値で除した値が「工程能力指数Cp」で、この値が、少なくとも1以上、即ち“Cp≧1”が適格の条件で、理想としては“Cp≧1.33”になります。要するに、正規分布したデータの幅(6σ)が規格の幅と同じかそれ以下、即ち、データの分布の幅が、規格幅以内であることが適格の基準と言うことです。蛇足ですが、標準偏差sは、各データから平均値を差し引いた値を二乗したものを加えた値を“n-1”で除した値の平方根です。
・安定・不安定の基準は「工程能力指数Cpk」
データの分布幅6σが、規格幅より小さくても、中心がずれたのでは、規格から外れたデータが生じますので、“安定”とは言えません。この中心の偏りを考慮した工程能力指数がCpkで、中心が、プラス側にずれる場合で言いますと、規格上限から平均値を差し引いた値を3σで除した値、中心が、マイナス側にずれた場合は、平均値から規格の下限を差し引いた値を3σで除した値となります。即ち、“Cpk≧1”が、安定の条件になります。
2)現有設備の状態別分類
上記把握基準を使って現有設備を表にある①~④に分類するのですが、次のようなステップを踏むとやり易いです。
先ず、Cpの値で、設備の適格、不適格を判断し、次に、設備の安定、不安定をCpkの値で判断します。
その結果、“Cp≧1”で適格、“Cpk≧1”で安定、となった設備は①に分類します。“Cp≧1”で適格となっても、“Cpk<1”で不安定、となった場合、不安定の検出が容易で、安定簡単な操作で安定化できる設備は、適格の範囲として②に分類します。“Cp<1”で不適格となった設備の場合、不適格の度合いが軽度、即ち、“改良保全”で適格化が可能な設備は③に分類します。不適格の原因が、設備の根本的な不具合、即ち、不適格の原因が、強度や機構に関わる場合は④に分類します。
以上のステップを図式化したものが、下図「図52-1 設備の状態別分類の仕方」です。
図52-1 設備の状態別分類の仕方(Y=Yes、N=No)
3)現有設備の状態の数値化
設備の状況改善活動を進める際、成果が数値で示されると、インセンティブが高まりますので、設備減点数を①0、②1、③3、④5として、総合計設備減点数0を目指すのがいいと思います。
4)このステップの狙い
このステ...
次回に続きます。