「上手くいったものを横展開すると上手くいく」というのは、時と場合によっては幻想かもしれません。少なくても、データ活用のケースでは、幻想であることが少なからずあります。
- ある企業で上手くいったことをやったら上手くいかず……
- 米国の販社で上手くいったことを日本でやったら上手くいかず……
- 別の事業部で上手くいったことを真似してやったら上手くいかず……
なぜ上手くいかないのでしょうか? 今回は「横展開という悪魔」というお話しをします。
【目次】
1. 身近な成功事例を真似る
2. 友人の勉強法が自分にも使えるのか?
3. データ活用も同じ
4. 横展開が上手くいくかどうかの判断
5. 個人差も重要
【この連載の前回:(その276)データ起点で考える不幸へのリンク】
◆データ分析講座の注目記事紹介
1. 身近な成功事例を真似る
身近な成功事例を真似ると、上手くいきやすいかもしれません。
- 同じ業界の他者の成功事例を真似る
- 同じ企業グループの成功事例を真似る
- 隣の部署の成功事例を真似る
なんとなく上手くいきそうな気配がします。ただ、データ活用の場合、そうでない場面に幾度となく出くわしました。データ活用に限った話しではないかもしれません。
2. 友人の勉強法が自分にも使えるのか?
個人レベルで考えてみます。理系な私が、苦手な現代文の得点を伸ばそうと、文系で現代文の得意な友人のAくんの勉強法を真似したとします。私の現代文の得点は伸びるでしょうか?
それほど足の早くない私が、50m走のタイムを伸ばそうと、インターハイの100走で決勝に進んだ友人のBくんの練習法を真似したとします。私の50m走のタイムは伸びるでしょうか?ほぼ無理です。現状が異なりますし、個人差も大きいことでしょう。真似するなら、出発点が現在の私のような人で、そして実際に伸びた方法です。
3. データ活用も同じ
売上アップのためにA事業部の営業部で上手くいったことを、売上アップのために同じ企業のB事業部の営業部でやってみても、上手くいかないことがあります。
例えば、出発点(抱えていた課題など)が異なりますし、事業部差も大きい場合です。A事業部で新規顧客の開拓に課題を抱えていた、そこであるデータ活用をしたら上手くいき売上アップした、それを既存顧客の離反に課題を抱えていたB事業部で実施してみた。恐らく、A事業部のような売上アップは、期待できないことでしょう。
売上アップのために解決すべき課題が異なるからです。
4. 横展開が上手くいくかどうかの判断
事業部などで横展開して上手くいくことがあります。
それは、出発点(抱えていた課題など)がほぼ同じで、事業部差が小さい場合です。少なくとも、出発点(抱えていた課題など)がほぼ同じというのは必須です。既存顧客の離反に課題を抱えている事業部で、新規顧客の開拓のためのデータ活用をしても、既存顧客の離反という課題は解決されません。
そんなの当然と思うかもしれませんが、意外とこのようなケースは見られます。要は、その事業部の抱えている「課題」まで把握しないと、横展開が上手くいくかどうかの判断はできません。
5. 個人差も重要
出発点(抱えていた課題など)がほぼ同じであるかどうかは非常に重要ですが、個人差も重要です。事業部であれ...
ば事業部差、国が異なればエリア差、企業が異なれば企業差です。例えば、ある企業の海外販社で、米国の販社で上手くいったことを、日本の販社で試してみたら全く上手くいかない、何てことはあります。
米国と日本の営業活動や商習慣などの違い、いわゆるエリア差が大きいからです。個人で考えれば、自分と同じような人が同じような課題を抱えていて、そして上手くいったやり方が、非常に良いお手本になる、ということです。当たり前といえば当たり前ですが、個人から組織へと規模が大きくなると、なぜか忘れがちです。