1. 理系新卒者の問題点
近年の大手企業の理系の新卒採用では、大学院修士卒の割合が多くなってきました。筆者の電気や自動車メーカーなどのクライエント企業人事担当者に伺った話では、ほとんど修士卒ということでした。採用担当者によれば、就職灘で、見かけ上は少し改善されているようですが、理系新卒の多くに次のような問題点があるようです。
①答えのないようなハードルの高い課題は最初からあきらめて挑戦しようとしない。
②周りから干渉されるのを嫌い、コミュニケーションが苦手な人が多い。
③プレゼンテーションが苦手である。
2. 実験授業の概要
筆者が講師を務める大学の授業で、簡単な実験授業を10年間実施しています。例えば、事前準備として、図1のように高さの深いメスシリンダーにピンポン玉を入れておきます。学生たちに、「ピンポン玉をメスシリンダーに手を触れずに外に取り出す方法を考え、それを実行せよ。」という課題を与えました。最初、学生たちは、解決策のハードルが高いと思いこんだり、失敗したら恥ずかしいと考えたりしていたようです。何もしようともしません。次に、いくつか解決策のヒントを与え、1つの方法をやってみせました。その後、失敗してもよいからといくつか挑戦してもらいました。そうすると、1人、2人が解決策を見つけて、恐る恐る実行しました。そのタイミングで、「それは、良いアイデアだね。」、「今の方法は、良かったね。」などと褒めてあげます。特に、学生に自信をつけさせる魔法の褒め言葉は「やればできるじゃない。」です。すると、あまり興味を示さなかった学生たちも、真剣に考え出し始めたのです。 行動を起こさせることによって、やる気スイッチに点火させたのです。多くの学生が、どんどんアイデアを出し、実現しようとチャレンジし始めました。年度により、学生たちの個性の違いが多少ありましたが、ほぼ同じような傾向を示します。
図1 実験器具
3. 山本五十六メソッドとは
つい最近、「最後の元老」と呼ばれた西園寺公望に宛てられた山本五十六からの書簡類が、京都府長岡京市で新たに見つかりました。第二次大戦の連合艦隊司令長官であった山本五十六のことばに、「やって見せ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」という名言があります。これは、長い間、人材育成の虎の巻として使われてきていると思います。これ以外にも、多くの名言が残されています。例えば、「実年者は若者が何をしたか、などと言うな。何ができるか、その可能性を発見してやってくれ。」なども人材育成の金言と言えます。
4. 結論
簡単な実験授業でしたが、学生たちに、山本五十六メソッドが通用したことを感じた瞬間でした。企業の新入社員教育や...