ある電子機器工場で、緊急事態が起きました。それは、働いている人の命を脅かす事故でした。高濃度の有害薬品が漏洩し、配管に圧力がかかっていたので、周囲に勢いよく飛散しはじめたのです。配管の下には、多くの働く人達が作業をしていました。この状況下、現場リーダーの取った信じられない行動とは? 今回は、声が出せるリーダー/出せないリーダーのおはなしです。あなたの大切な人達を守ることができますか?いざというときに備えていますか?
1. 緊急時に取った、とっさの対応
ネットを読んでいると「ほんと、現場のことが解ってないのに、勝手なことを言っているな。」と感じる投稿を目にします。
- 「リーダー研修で、大声を出させられた。ここは昭和の時代か?」
- 「声出し訓練をしたら、喉が痛くなった。ブラック企業だから仕方ないのか?」
話を戻しましょう。危険な薬液が漏洩飛散した現場では、雨のように有害薬液が降り始めたのです。この時、そこのリーダーが取った行動は・・・・・・
降り散る薬液を目の前に、床に膝をつき、頭を抱えて塞ぎ込んでしまったのです。そして、働いている人達も、何をどうすれば良いのか?といった感じで、現場から離れないのです。人とは、いざという時、適切な指示が無いと動けないものです。
これは、危険だと感じ、私は大声で「みんな!現場からまず離れろ!直ぐに離れろ!」と怒鳴りました。
その大声が届いたのか、現場の人はその場所から離れはじめました。また、被液をした人は、直ぐにシャワールームへ向かわせ、薬液洗浄をするよう指示しました。薬液配管の元バルブも見つけて、バルブを閉め、飛散を止めました。幸い、被液はしたものの、作業服が耐薬品素材でできていたので、薬品やけどなどを起こした人はいませんでした。
それでもその間、その現場のリーダーは・・・・、相変わらず、床に崩れ落ち頭を抑え、震えながら、塞ぎ込んでいました。私は、リーダーへ「直ぐに後処理をしないと、二次被害が広がりそうだから、直ぐに処置をはじめましょう。」と、声をかけました。
すると、リーダーは「はい。はい。はい。」とは、返事をするものの、体が動かない様でした。そんなリーダーに私は「リーダーを差し置いて、余計なことをしてしまい、すいません。でも、あの場合、直ぐに危険を皆に知らせて、避難させることが第一優先だったと思っています。さあ、立ち上がって、処置を進めましょう。」と声をかけました。
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2. いざという時のための訓練を
私は、いざという時リーダーは、声を出せなければ、部下や後輩の命を失うかもしれないとこの時思いました。リーダーなら、いざという時、状況を的確に把握し、チームが最も安全な行動がとれるよう、強くリーダーシップを発揮しなければなりません。
とはいえ、人なんて弱い存在です。いざという時、誰もが的確な指示が与えられるかと言ったら、それは解りません。だからこそ、声を出す訓練が必要なのではないでしょうか。
私が担当する「次世代リーダー研修」では、リーダー達が、いざという時、声を出せる様に育成して...