前回、理念経営4つの要件を解説しました。今回は、企業進化論の重点的なことを解説します。
ダーウィンが述べた進化は観察の結果であって、真理ではないと言われています。進化とは、未来の環境に肉体の形態を合わせると共に、食生活等のライフスタイルとともに子孫を残す方法を変えて適応することです。
この事にもとづけば、次のようなことが言えるでしょう。
1.社長の器以上に、企業の器は大きくならない
この言葉は事実ですが、同時に多くの誤解も生み出しています。「企業の器」とは、売上や資本金や従業員の数ではなく、「持続」する力。未来に適応しながら未来を創る力です。業態が変わっても伝えられる「存在理念」が未来につながっているか、時代精神を創ろうとしているかが、その企業の器なのです。
自悔と反省を込めながら解説するならば、創業型社長の基本的態度は専制的なワンマン経営者です。自分の「カンと度胸」で会社の意思を決定し、その内容は自己中心的です。陣頭指揮型のワンマンは、難局やピンチを乗り切るには、むしろ好ましい指揮体制です。
ここでは硬直した自己体験中心の価値基準・判断基準のことをワンマン経営と云っています。つまり、私我を脱皮できないオーナー経営なのです。新入社員を採用して育てたこともなく、自分が新入社員研修や経営者教育を体系的に受けることがなかったり、俊厳な指導者に鍛えられたことのない社長にはこのタイプが多いようです。ただし、このタイプが目覚めたときは戦略型の全員参画型に、一気に進化することもしばしばです。
一方、制度型は先見性や決断力よりも”仲良し”やバランス感覚が中心です。このタイプは、太平の世では名君となることもありますが、これからの混沌としたアセンション時代では先見性と決断力が勝負の分かれ目です。新製品開発では多数決原理主義者よりも、ハイリスクハイリターン型の意思決定我できる挑戦者が勝ち組みとなる時代が続きましたが、これからの「人本位経営=理念経営」の時代では、大きく変わるでしょう。
つまり、グランドデザイン(GD)にそっているかが、ポイントなのです。インターネットによって、最終ユーザーの意志と行動がすぐに知れ渡る時代となり、事実上直接民主主義が実現しつつあります。
そして、戦略型の経営は常にプロジェクト型です。最も問題解決にふさわしい担当者がリーダーとなる風土があります。経営者は、そのプロジェクトの目的を達成できる経営資源と環境を整えましょう。「やってみろ!俺が責任をとる」という気概。そして、決して妥協のない強さがチームを動かすのです。高い評価を得ている「プロジェクトX」の数々のサクセスストーリから学ぶことができます。(古いたとえになってしまいました)
社長の姿勢は、社員への姿勢、後継者作り、経営統制に大きな影響を与えます。今存在する経営課題、特に社員との関係は、社長の姿勢が反映した姿なのです。このことに気がつかないかぎり、進化する事は難しいでしょう。この姿勢を明文化したものが経営理念や経営指針ですから、経営計画がないならば「企業」とは云えないと断言できます。
2.社員をどう見ているのかが全てを決める
人間をどのように見ているか。社会生活をどのように受け止めているかが問われています。企業の社会的責任のとらえ方には、環境や地域社会への貢献等いろいろな考え方があり...
コミュニティ・ビジネスや理念経営の立場から述べれば、生活保障型(経済的豊かさ)から人生保障型(業務遂行能力・教養・社会活動・生涯現役等)で人格や家庭が豊かになり、その結果「世のため・人のため」になるのが理想です。社員が生活保障欲求を強め、経営者が利益追求のみを強めれば、社員は生産性向上の手段と化し、やがてロボットとなり、賃金の安い海外生活へシフト一辺倒ということになって、経済発展をとげて社会的歪が拡大していくでしょう。地域密着型の中小企業では労働の価値観も変えて、コミュニティ・ビジネス型になるべきと私は主張していますが、深い課題と調和が必要ですので詳論は次の機会とします。