経営進化の段階 中小企業経営の基礎講座(その8)

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【中小企業経営基礎講座 連載目次】

 

 これまで経営計画は、企業という船に乗っている人の安心・安全をいかに実現するかの行動基準であることを述べてきました。前回は、存在理念・経営理念・行動理念について解説しました。今回は、全員参画の隊形(フォーメーション)にも、進化の段階と局面による使い分けがあることを、創業型・制度型・戦略型の三つの隊形で、スポーツに例えて解説いたします。

 

1.第1段階は、創業型企業・・・ゴルフタイプ

 創業時のトップは、ゴルフのスタープレーヤーに例えられます。体技の基本をしっかりと身につけ、不断の訓練を積み、メジャーゲームに出てライバルと切磋琢磨して力量を高めた者は、どんな状況下でも適確に判断して最も安全な方法を選択して実行します。
 クラブやアプローチの選択は全て自己責任で、キャディのアドバイス以外は受けられません。スコアーのアテストも自己責任です。少ないスコアー申告は即失格の厳格なルールです。特徴はワンマン的で俺についてこい型のマネジメントで、経験主義でもあります。社員を役務提供者としか見ておらず、給与を払えば良いとしか思っていません。参加する喜び、自己実現の喜び、個性を生かす事など考えてもいません。能力ある者を、潜在的に自分の地位を脅かす者として排除します。
 したがって後継者が育ちません。生業や家業の段階でとどまるのならば、トップにとっては面白いやり方ですが、一代限りになるでしょう。存在理念はほとんどなく、経営計画も目標管理のレベルであればこの段階と判断されます。俺がルールブック的な組織運営の段階です。
 ただし、ピンチの時や創業時の「陣頭指揮」は別の話であり、必要に応じての「率先垂範」は、立派なリーダーシップです。              

 

2.第2段階は、制度型企業・・・野球タイプ

 野球はチームプレーで戦い、9人のプレーの他に交代要員・監督・マネジャ−・オーナー等と機能分化して、それぞれの持ち場でチームを勝利させる任務を遂行します。勝敗は、ピッチャーの出来・不出来にかなり左右され、その交代やバント・盗塁等の作戦は監督の采配に100%したがう事で、組織運営は成り立っています。
 この段階で進化が止まってしまうか否かの判断は、トップが持つ権限が組織にどれだけ委譲されているか、次世代を担う人材を育てているかの経営姿勢によります。部門別独立採算制であろうと分社経営であろうと責任者は肩書きだけで、新しいビジネスモデルや商材を考える社風がないのでは、経営環境適応力は養われずに衰退の道を歩む事になります。
 もし有能な経営幹部がいないと嘆くのであれば、それは育てていないからであり、組織が成長しないために人が採用できないで、人材不足という悪循環に陥ることになるのです。次の段階の戦略型に進化するには、この段階で「仕事の基本と組織運営のノウハウ」をしっかりと体得するのが安全な方法です。「急がば回れ」も勇気ある選択の一つです。

 ベンチャー企業が持続できない原因は、ゴルフ型から一気に戦略型に飛躍しようとしてチームプレーができない事によるのです。また、総務や管理部門に対する考え方や行動理念を見れば分かります。官僚的でかたくなであれば、制度型企業にとどまり、総務や管理部門をムダと軽んじている企業はゴルフ型なのです。

 制度型を通過点と考えているのであれば、次の戦略型に進化することができます。

 

3.第3段階は、戦略型企業・・・サッカータイプ

 ゲームが始まれば、プレーヤーの状況判断力や体力、心理的強靱さが勝敗を決めるゲームです。全員精鋭型のチームで戦うスポーツで、チャンスとリスクがワンプレーで入れ替わる面白さを味わえます。監督の戦術も大事ですが、フィールド(現場)の展開能力が決め手です。
 基礎的な訓練と共に、常に局面をイメージしたフォーメーション・プレーを訓練して、連携プレーやコンビとの信頼関係を高めて戦闘能力のレベルを上げます。フロント/ゼネラルマネジャーの「資本」と、監督/プレーヤーの「経営」とが機能分化されて、フォアー・ザ・チームが徹底されています。
 中小企業経営は、プレーイング・マネジャーがほとんどですが、外部とのコラボを含めてこの型に進化すれば、持続可能な企業になることができますし、持続している企業体は常に柔軟な対応をし続けているのです。トップが社長の仕事をして、プレーは現場に任せるのが発展の条件となります。
 戦略的であるか否かの判断ポイントは、経営計画の策定の過程が全員参画型になっているか、小集団活動があるか?トップがどのように社員と向き合っているか?社員は自己啓発や自己実現をしていると感じているか?にあります。

 理念経営がめざす企業体はこの「戦略型企業」であり、存在理念を立てて経営計画を強く回し続ければ、必要な経営資源が集まり必...

 

【中小企業経営基礎講座 連載目次】

 

 これまで経営計画は、企業という船に乗っている人の安心・安全をいかに実現するかの行動基準であることを述べてきました。前回は、存在理念・経営理念・行動理念について解説しました。今回は、全員参画の隊形(フォーメーション)にも、進化の段階と局面による使い分けがあることを、創業型・制度型・戦略型の三つの隊形で、スポーツに例えて解説いたします。

 

1.第1段階は、創業型企業・・・ゴルフタイプ

 創業時のトップは、ゴルフのスタープレーヤーに例えられます。体技の基本をしっかりと身につけ、不断の訓練を積み、メジャーゲームに出てライバルと切磋琢磨して力量を高めた者は、どんな状況下でも適確に判断して最も安全な方法を選択して実行します。
 クラブやアプローチの選択は全て自己責任で、キャディのアドバイス以外は受けられません。スコアーのアテストも自己責任です。少ないスコアー申告は即失格の厳格なルールです。特徴はワンマン的で俺についてこい型のマネジメントで、経験主義でもあります。社員を役務提供者としか見ておらず、給与を払えば良いとしか思っていません。参加する喜び、自己実現の喜び、個性を生かす事など考えてもいません。能力ある者を、潜在的に自分の地位を脅かす者として排除します。
 したがって後継者が育ちません。生業や家業の段階でとどまるのならば、トップにとっては面白いやり方ですが、一代限りになるでしょう。存在理念はほとんどなく、経営計画も目標管理のレベルであればこの段階と判断されます。俺がルールブック的な組織運営の段階です。
 ただし、ピンチの時や創業時の「陣頭指揮」は別の話であり、必要に応じての「率先垂範」は、立派なリーダーシップです。              

 

2.第2段階は、制度型企業・・・野球タイプ

 野球はチームプレーで戦い、9人のプレーの他に交代要員・監督・マネジャ−・オーナー等と機能分化して、それぞれの持ち場でチームを勝利させる任務を遂行します。勝敗は、ピッチャーの出来・不出来にかなり左右され、その交代やバント・盗塁等の作戦は監督の采配に100%したがう事で、組織運営は成り立っています。
 この段階で進化が止まってしまうか否かの判断は、トップが持つ権限が組織にどれだけ委譲されているか、次世代を担う人材を育てているかの経営姿勢によります。部門別独立採算制であろうと分社経営であろうと責任者は肩書きだけで、新しいビジネスモデルや商材を考える社風がないのでは、経営環境適応力は養われずに衰退の道を歩む事になります。
 もし有能な経営幹部がいないと嘆くのであれば、それは育てていないからであり、組織が成長しないために人が採用できないで、人材不足という悪循環に陥ることになるのです。次の段階の戦略型に進化するには、この段階で「仕事の基本と組織運営のノウハウ」をしっかりと体得するのが安全な方法です。「急がば回れ」も勇気ある選択の一つです。

 ベンチャー企業が持続できない原因は、ゴルフ型から一気に戦略型に飛躍しようとしてチームプレーができない事によるのです。また、総務や管理部門に対する考え方や行動理念を見れば分かります。官僚的でかたくなであれば、制度型企業にとどまり、総務や管理部門をムダと軽んじている企業はゴルフ型なのです。

 制度型を通過点と考えているのであれば、次の戦略型に進化することができます。

 

3.第3段階は、戦略型企業・・・サッカータイプ

 ゲームが始まれば、プレーヤーの状況判断力や体力、心理的強靱さが勝敗を決めるゲームです。全員精鋭型のチームで戦うスポーツで、チャンスとリスクがワンプレーで入れ替わる面白さを味わえます。監督の戦術も大事ですが、フィールド(現場)の展開能力が決め手です。
 基礎的な訓練と共に、常に局面をイメージしたフォーメーション・プレーを訓練して、連携プレーやコンビとの信頼関係を高めて戦闘能力のレベルを上げます。フロント/ゼネラルマネジャーの「資本」と、監督/プレーヤーの「経営」とが機能分化されて、フォアー・ザ・チームが徹底されています。
 中小企業経営は、プレーイング・マネジャーがほとんどですが、外部とのコラボを含めてこの型に進化すれば、持続可能な企業になることができますし、持続している企業体は常に柔軟な対応をし続けているのです。トップが社長の仕事をして、プレーは現場に任せるのが発展の条件となります。
 戦略的であるか否かの判断ポイントは、経営計画の策定の過程が全員参画型になっているか、小集団活動があるか?トップがどのように社員と向き合っているか?社員は自己啓発や自己実現をしていると感じているか?にあります。

 理念経営がめざす企業体はこの「戦略型企業」であり、存在理念を立てて経営計画を強く回し続ければ、必要な経営資源が集まり必ず実現できると断言できます。
 

 

4.皆さんの企業は

 どの段階にありますか? また、どの段階をめざしていますか?どのようにすれば達成できると考えていますか?
 赤ちゃん・幼児・少年・青年・壮年・老人とその体質が違うように、またプロとアマでは持てる力が決定的に異なるように、置かれた環境と持っている適応力はそれぞれに異なります。一流と云われる人や企業をめざすのは良いのですが、そのまま真似をするのは、「鵜のまねをするカラス、水におぼれる」で自己破壊しかねないほどの危険を呼び込む事になります。中小企業が、大手の成功事例や経営理論や手法をそのまま真似てもうまくいかないのは、持てる経営資源と経営体質が全く違うからなのです。
 体質に合わない薬を飲めば、副作用や障害が表れて死を早める事がある様に、企業経営の革新や改善も同じなのです。自らの経営体質と段階を正しく認識して、隊形を選択して経営理念にあった組織運営・人材育成をすすめる、つまり「人が育つ土壌・しくみ」を醸成する事が、持続可能な企業体となる絶対条件です。

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この記事の著者

平本 靖夫

中小企業の経営支援43年間で350社の実績をベースに、貴社にとっての実務直結メンターとなります!

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