前回の【快年童子の豆鉄砲】(その119)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(6)からの続きです。
2. ゼロ・ラウンド(0R)の進め方
1)QCサークル活動のスタート
職制戦略会議で検討した準備態勢を整えた上で、QCサークル活動をスタートさせる段階です。
AR(アプローチ・ラウンド)の目標は、経営幹部が、経営戦略の一環としてのQCサークル活動の意義を理解し、社内への具体的展開方策についての検討結果を共有することですが、対象が経営幹部ですので意思統一がしやすく、比較的達成しやすいと言えます。
ところがこの0Rの場合、様々な職場事情と力量を抱えるQCサークルが対象ですので、職制戦略会議で手に入れた共通認識は、活動推進の軸になり得ないところが難しい所です。
従って、この0Rの場合、理論を超越した具体的必達目標「各サークルの目標達成」が活動の原動力になります。しかも、活動の将来像を「自主自立」に置いているわけですから「サークルメンバーそれぞれが自分の貢献を実感できる目標達成」である必要がありますので、その実感を生むことのできる「充実したQCサークル活動」の実践が必須なんですが、それを可能にするためのポイントは次の3点です。
- 効果的な活動が出来る(D)
- サークルメンバーが集まる(C)
- サークルメンバーが一生懸命活動する(E)
それぞれの意味するところと必要な背景、並びに、それらをどのように進めるのかを次項以降に説明しますので、0R推進の参考にして頂ければと思います。
2)効果的な活動が出来る(D)
これが出来ないことには、先述した具体的必達目標「各サークルの目標達成」は無理で、効果的な活動を支える次の4点をクリアする必要があるのですが、何しろサークル活動初体験なので、自主性に任せたのではとても無理で、職制の全面的な支援が必要です。ただ、効果を急いで支援が前面に出たのでは、目指す将来像である「自主自立」の芽を摘んでしまいかねませんので、前弾で基本方針とした「職制の指導・支援は、サークルリーダーを通して行う」を守る必要があるのですが、それぞれに対する注意点を下記しますので参考にして頂ければと思います。
① 目標達成に相応しいQCストーリーの立案
これは職制が立案し、その背景を含めてリーダーに対して理解を得ると同時に目標達成のめどを感じてやる気になるところまでよく説明する必要があります。
② QCストーリー推進に必要なQC手法の活用
上記QCストーリーには、推進上目標達成のために必要なQC手法の存在が必ずと言っていいほど存在しますので、その手法の使い方の説明が必要になります。ただ、一般的な使い方の説明をして使わせるのではなく、リーダーを通じて逐一説明しつつ、この事例を通じて、リーダーに完全にマスターしてもらうようにします。
③ 効率的なサークル活動を進めるための適切な作業分担
目標を達成したとき、メンバーそれぞれが自分の貢献を実感できることが狙いにありますので、各人が何らかの形で作業を分担する必要があります。ただ、そのために、活動の効率が下がるようでは主客転倒になりますので、効率的な分担を心掛ける必要があります。この場合、効率的な活動を支える意味で、必要に応じてサブリーダーを任命することは有効です。
④ メンバーそれぞれが担当作業を一生懸命に実行する
これは非常に重要な要素なんですが、決め手は、上記の分担を決める際、本人をどれだけやる気にさせるかに掛っていますので、分担決定に際しては、リーダーとだけでなく、サブリーダーも加わって作戦を練る必要があります。
以上なんですが、重要なのは、職制の全面支援を肌で感じるのは、リーダーだけ、即ち、職制としては、メンバーに対してはあくまで黒子に徹することが重要です。
3)サークルメンバーが集まる
サークル活動が軌道に乗ってきますと、必ずしも集まる必要のない活動も出てくるのですが、この0Rだけは、サークル活動とはどのようなものかを体感してもらう狙いがありますので、毎回必ず全員が集まるようにする必要があります。
そのためには、前回、ご説明しましたが、職場やサークルの特殊事情を汲んで臨機応変柔軟な対応を心掛けて、毎回全員が出席出来る配慮を心掛けてください。
4)サークルメンバーが一生懸命活動する
既にご説明した「2)④」の狙いは、メンバー自身にやる気になってもらうような分担、即ち、分担作業内容の適正なんですが、ここで取り上げようとしているのは、雰囲気作りです。どんな活動でも、うまく行くときもあれば中々うまく行かないこともあり、それがメンバーそれぞれに起こるわけですから、下手をする...
そこで、サークルメンバーの活動状況を把握して、褒めたりサポートしたりすることにより、サークルメンバーが一生懸命活動する雰囲気作りをするということです。一番大変なのは、サークルメンバーの活動状況の把握なのですが、何かあったら言ってくるようにと言ったことでは、リーダーが把握しきれないケースも出てきますので、サークルメンバーが活動状況ノートをリーダーに提出するといった工夫も必要です。こうすることにより、そのノートに記載された内容をリーダーと検討して、メンバーのやる気醸成につながるアクションを取ることが出来ますので参考にして頂ければと思います。
5)サークル活動を通じた自己成長サイクル力
以上の実施は大変ですが、このラウンドの使命は、リーダーが職制の全面支援を受けて無我夢中で活動する中で、1R以降のサークル活動を支える「スパイラルアップ力」即ち「サークル活動を通じた自己成長サイクル力」をサークルに芽生えさせることですので、その点を念頭に着実な実施を心掛けて頂ければと思います。それを受けて、サークルが「また成果を上げたくなる」と言う心境になることが、次のラウンドに移行できる具体的な条件になりますので、活動成果を、周囲を巻き込んで褒める作戦は重要だと思います。
1R(1ラウンド)以降の進め方は、次回以降でご説明します。