高精度な予測モデルが使えるモデルとは限りません。「使えるモデル」とは、ビジネスの現場で使えて、成果をだすモデルです。ビジネスの現場で予測モデルが使えるかどうかを考えるとき、幾つかの視点があります。今回は「高精度な予測モデルが『使えるモデル』とは限らない」というお話しをします。
【この連載の前回:2種類の時系列データとは、 データ分析講座(その305)へのリンク】
1. よくある2つの視点
ビジネスの現場で予測モデルが使えるかどうかを考えるとき、幾つかの視点があります。例えば、次の2つです。
- 予測モデルが使えるかどうかを考えるときの視点 : スピード
- 予測モデルが使えるかどうかを考えるときの視点 : 予測の外し方
それぞれについて、説明します。
2. 予測モデルが使えるかどうかを考えるときの視点 : スピード
「スピード」は、使えるモデルかどうかを検討する上での、大きな視点の1つです。時間をかけて高精度な予測モデルを作るよりも、それなりの精度の予測モデルをスピーディに構築し活用する方が、ビジネス現場で必要とされるケースが多いからです。
使いたいタイミングで使えないようでは、どんなに高精度でもビジネス成果を生むことはありません。
ある寿司チェーンで、広告効果測定モデルおよび予測モデル、最適化モデルを構築しました。四半期ごとにモデルを更新(再学習)させていました。当初の計画では、データが揃ってから2日~3日必要でしたが、利用するマーケターの要望は次の日の朝まででした。2日後にアウトプットを出しても活用してもらえません。妥協点を探りながら、ビジネススピードを殺さないよう、どうにかする必要があります。
3. 予測モデルが使えるかどうかを考えるときの視点 : 予測の外し方
「予測の外し方」も、使えるモデルかどうかを検討する上での、大きな視点の1つです。
予測精度が高くても、重要な局面で外すような予測モデルは使いものになりません。あるコンビニエンスストアで、近くのイベント会場でどのようなイベントが開催されるかで、おにぎりなどの需要を予測し発注をしていました。
イベント開催日以外の日常を上手く予測できるより、イベント時の需要を予測出来たほうが良いでしょう。この需要の跳ねを上手く予測できれば売上も跳ね上がります。外すと廃棄を増やすか機会損失が大きくなるか、どちらかになります。上手く予測したいものです。
さらに、実測値よりも高く予測するのか低く予測するのかで、ビジネス的な意味合いが異なることがあります。その辺りも考慮する必要があります。
あるコーヒーチェーンで、従業員のシフト管理のために来客数の予測モデルを構築しました。実際よりも予測値の方が小さく場合、シフトに入れる従業員の人数を少なくしてしまいます。実際よりも予測値の方が大きい場合、シフトに入れる従業員の人数を多くしてしまいます。
4. 「使えるモデル」を確実に作れるようにはならない
今「スピード」と「予測の外し方」という視点の典型例をお話ししましたが、他にも色々な視点があります。では色々な視点で知り多角的に考えればいいのか、となりますがそうではありません。このような視点をたくさん知り考え尽くしたからといって「使えるモ...
5. 結局のところコミュニケーション
活用する現場の方が「これは使える!」と思ってもらえるかどうかが大きなポイントになります。机の上で悶々と考えるよりも重要なことは、しっかり現場の方とコミュニケーションを取ることです。