ビジネスの世界では、売上などの時系列データを使い予測モデルを構築し、近未来を予測しながらビジネス活動する人や組織があります。ただ、予測モデルを構築するときに、どのモデル(アルゴリズム)がいいのか?どの説明変数Xの組み合わせがいいのか?どのハイパーパラメータの値の組み合わせがいいのか?は、モデル構築前に通常はわかりません。そのため、色々な組み合わせパターンで試す必要があります。試すとき、予測モデルを構築するために利用するデータセットを「訓練データ」と「検証データ」します。
色々なパターン(モデルと説明変数Xとハイパーパラメータの値などの組み合わせ)で「訓練データ」で予測モデルを学習し求め「検証データ」で検証し、より良いパターンを探索します。ここで、データセットを「訓練データ」と「検証データ」に分割しチューニングする場合、どう分割するのかという問題があります。そのやり方の1つが、クロスバリデーション法です。今回は「時系列データに対するクロスバリデーション法」というお話しをします。
1. クロスバリデーション法とは?
クロスバリデーション法とは、データセットを複数に分割し「訓練データ」による予測モデルの学習と「検証データ」による評価を、複数回実施する方法です。例えば、データセットをランダムに10個に分けます。このとき「訓練データ」と「検証データ」のデータセットの組み合わせを10セット作ります。
それぞれのセットで予測モデルを学習し評価することで、個々の評価結果を出します。最終的にその評価結果を取りまとめ総合評価結果とします。
2. クロスバリデーション法のイメージ
もう少し分かりやすく説明します。1セット目です。10分割したデータの1つを「検証データ」とします。それ以外の9個のデータを「訓練データ」とします。この「訓練データ」で予測モデルを学習し「検証データ」を使い評価します。
2セット目です。10分割したデータの中から1セット目と異なる「検証データ」を1つ選択し「検証データ」とします。それ以外の9個のデータを「訓練データ」とします。この「訓練データ」で予測モデルを学習し「検証データ」を使い評価します。
このような感じで、3セット目以降も同様に「訓練データ」による予測モデルの学習と「検証データ」による評価を実施します。最終的に、10個の評価結果が手に入ります。多くの場合、評価結果の平均を取り総合評価とします。もちろん、平均ではなく最大値や最小値などを求め「最悪のケース」を総合評価とすることもあります。
3. そのまま時系列データに適用したとき起こる問題
今説明したクロスバリデーション法は、時間軸を考慮した予測モデルのチューニングをするとき問題が起きます。
「訓練データ」は「検証データ」よりも時間的に過去のデータである必要があります。ランダムに分割すると「過去のデータで予測モデルを学習し、未来の目的変数yを予測する」という前提を満たさない可能性が高いからです。そのため、ある時点で2つにデータセットを分割し、時間的に前のデータを「訓練データ」時間的に後のデータを「検証データ」とします。
4. 時系列データに対するクロスバリデーション法
クロスバリデーション法は複数の「訓練データ」と「検証データ」のセットを準備し、それぞれのセットで予測モデルを学習し評価し、最終的にその評価結果を取りまとめ総合評価結果とします。時系列データの場合には、次のように「訓練データ」と「検証データ」を分割する時点を複数設け、その時点ごとに「訓練データ」と「検証データ」のセットを作ります。
訓練データの期間を伸ばしていくエクスパディング型と、訓練データの期間を常に一定と...
- エクステパディング型:実務で予測モデルを構築するとき、手に入る過去データをできるだけ使うケース
- ローリング型:実務で予測モデルを構築するとき、ある一定の期間の過去データを使うケース(もしくは、古いデータを定期的に破棄するケース)