データ活用の末路、データ分析講座(その309)その末路とは

 

DX、AI、データサイエンス、機械学習、ディープラーニングなど、データ活用を目論むことが多くなった昨今です。ただデータ活用を過度に進めることで、ちょっとしたことが起こります。データ活用の末路とも言ってもいいかもしれません。他社に先行し、その末路に陥った企業も存在します。その末路とは、いったい何でしょうか?今回は「データ活用の末路」というお話しをします。

 

【目次】

1. データ活用の効果・効能

データ活用の効果・効能の1つに、リスクを回避しながら果実を得る、というのがあります。要は、以下の2つを満たすようなことが実現されます。

  • リターン最大化
  • リスク最小化

 

データをうまく活用することで、リスクをできるだけ小さくしながら、ほどほどのリターンを得るという感じです。営業の新規受注を例にとると、受注確度の薄い大型受注の見込める顧客を狙うのではなく、そこそこの受注金額の見込める受注確度の高い顧客を狙う、という感じです。

 

要は、ハイリスクハイリターンの夢をあきらめ、ローリスクミドルリターンを狙うということです。野球で言い換えると、ホームランを打つパワーヒッターではなく、こつこつヒットを稼ぐアベレージヒッターになるということです。

 

射幸性の嗜む博打好きとは逆を行く感じです。

 

2. データ活用で平準化

アベレージヒッターになるということは、失敗が減りそれなりの成果を継続的に出し続けるということです。結果的に、何事も平準化されていきます。平準化されるとは、安定的にほどほどの成果を上げられるということです。

 

営業活動でいえば、受注件数や売上金額などが安定してくるということです。生産活動でいえば、歩留まりやサイクルタイムなどが安定してくるということです。何やら良さそうですが、落とし穴があります。

 

3. 新商品で大きな失敗がなくなった

ある消費財メーカーで、データを活用した製品開発を行っていました。製品そのものの開発業務では、それなりにデータ活用をしていましたが、消費者ニーズを組むこむところのデータ活用が不十分でした。そこで、商品のコンセプト設計やローンチ(上市)前に、消費者データを活用することになりました。

  • 商品のコンセプト設計時:コンセプト受容評価を消費者データで実施
  • ローンチ(上市)前:商品受容評価を消費者データで実施

その結果、赤字になる新商品が激減しました。

 

4. エンタメ性がなくなった...

赤字になる新商品が激減したことで、この消費財メーカーのブランドマネージャーは、失敗の烙印を押されることが少なくなりました。しかし、データ活用には代償がありました。データを過度に活用することで、無難な新商品しか生み出せない、という現象に陥り面白い商品を生み出せなくなったのです。

 

そのことを、この消費財メーカーのエライ人たちは問題視しました。そして「チャレンジしろ!」ということを声高に叫び、チャレンジした者に対し賞与で報いるという施策を実施しましたが芳しくありませんでした。

 

チャレンジをして赤字商品を生み出した場合の減点の方が、チャレンジしたことによる一時的な賞与のUP額よりも小さく見えたからです。

 

5. 金太郎飴のよう

データ活用の末路とは、データを活用が過度に上手くいくことで、みんなが金太郎飴のようになってしまうことです。データ活用によって、オリジナリティを殺し平準化し、無難なところに収まってしまうのです。

 

金太郎のようなヒーローに収まるならまだいいですが、実際はその下のどこかに収まります。これがデータ活用の末路です。ワクワクの足りないつまらない社会が待ち受けています。

 

では、どうすればいいでしょうか?

 

6. 安定とチャレンジ

データ活用が上手くいくと平準化し、どうなりそうか計算できるようになり安定しだします。

 

その安定のもと、思う存分チャレンジするのがいいのではないでしょうか。そのチャレンジにはデータの裏付けを必要ありません。世の中が取り上げているないことを行うぐらいがいいのかもしれません。みんなが思っていることと逆のことを行うぐらいがいいのかもしれません。

 

重要なことは、そこにワクワクがあるかどうかです。

 

データ活用の安定を生み出し、何ら憂えることなく、ワクワクする馬鹿なことにチャレンジするのがいいのかもしれません。安定を生み出す人、チャレンジする人、安定を生み出すこと、チャレンジすること、明確に区分したほうがよさそうです。同じ土俵で評価するとおかしなことになります。

 

チャレンジしたことに対し、チャレンジしたこと以外の成果を求めた瞬間、無難なところに落ち着くことでしょう。

 

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