♦ レコメンド情報示し、確実なアクションを導く
今回は「SOR理論とデータ分析の『XYZフレームワーク』」の解説です。
【目次】
1. SR理論から考えるデータ分析
1. SR理論から考えるデータ分析
行動心理学の世界では、SR理論(Stimulus-Response Theory)という考え方があります。行動を「刺激」(S:Stimulus)に対する「反応」(R:Response)としてとらえたものです。データ分析の枠組みで語ると「X(説明変数)」と「Y(目的変数)」の概念で捉えることができます。
- 刺激(S:Stimulus) :X(説明変数)
- 反応(R:Response):Y(目的変数)
図1. SR理論
SR理論の概念はデータ活用を考える上で幅広く使えます。広告(X)を打てば売上(Y)が上がる。機器の稼働時間(X)が長くなると歩留まり(Y)が悪化する。など、色々と応用できそうです。しかし、ここで次のような問題が起こります。
それは「同じ刺激(S:Stimulus)に対し、常に同じ反応(R:Response)が起こるわけではない」という問題です。例えば、広告打ったからといって、すべての人がその商品を購買するわけではありません。その人がどのような人なのかに依存します。例えば、稼働時間と歩留まりが悪化するタイミングの関係は、すべての工場で同じではありません。その日の気温や湿度、工員の熟練度などに依存します。
2. SOR理論から考えるデータ分析
SR理論に「有機体(O:Organism)」という概念を付け加えたSOR理論(Stimulus-Organism-Response Theory)というものがあります。「有機体(O:Organism)」とは人間であったり動物であったりします。刺激(S:Stimulus)に対する反応(R:Response)だけでは説明できない現象を「有機体(O:Organism)」という概念を導入することで説明できるようにするものです。
3. データ分析は「XYZフレームワーク」で整理
ビジネス系のデータ分析の世界であれば「有機体(O:Organism)」は生物個体だけでなく、AIであったり装置であったり工場のラインなど生物以外も付け加わります。つまり、同じX(説明変数)を与えても、個人の属性や工場の状況などにより、Y(目的変数)の値が変わる、ということです。
- 刺激(S:Stimulus) :X(説明変数)
- 有機体(O:Organism):Z(調整変数 or 説明変数)
- 反応(R:Response) : Y(目的変数)
図2. XYZフレームワーク
4. 調整変数とは
ここでは「YとXの関係はZによって変化する」ということを表現するために調整変数という概念を使います。例えば「広告」(X)と「購買」(Y)の関係性は「個人属性」(Z)によって異なる「工場の稼働時間」(X)と「歩留まり悪化のタイミング」(Y)の関係性は「天候(気温や湿度など)」(Z)によって異なる、といったことです。
調整変数は、説明変数と一緒に扱うこともありますが、意識的に区別しておいた方がよいでしょう。
5. モニタリング情報とレコメンド情報
XYZの3種類(説明変数X・調整変数Z・目的変数Y)のデータを分析することで、例えば以下のような2種類の情報を得ることができます。
- レコメンド情報
- モニタリング情報
図3. レコメンド情報とモニタリング情報
レコメンド情報とは、どのような「刺激(S:Stimulus)」(アクションなど)をすべきか、という情報です。モニタリング情報とは「刺激(S:Stimulus)」を与えた結果、どうなったのかという「反応(R:Response)」に関する情報です。通常「見える化」といった場合、こちらのモニタリング情報を指すことが多いようです。
問題なのは「反応(R:Response)」に関するデータだけを集めてしまい...