◆ データサイエンスを小さく始める時のテーマ選定は、ジョハリの窓
本題に入る前に、某大手食品企業のお話をしたいと思います。
データドリブンな営業を目指し、AIというキーワードを用いた挑戦的かつ壮大なデータサイエンスのテーマに挑みました。上手くいったのでしょうか?残念ながら営業活動そのものに対し大きなインパクトを与えてはいませんでした。この挑戦的かつ壮大なテーマも現場からは理解が得られず、会社のPR(例:〇〇社、AIを活用し営業活動を効率化)に使われ、株価を一時的に上げたくらいです。ワクワクする挑戦的かつ壮大なテーマもいいですが、現場に受け入れられ活用されなければ無意味です。まずは小さな成果でもいいので、地に足の着いたデータサイエンスを目指すべきでしょう。では、どのようにすれば、そのようなテーマを見つけられるのでしょうか、今回は「データサイエンスを小さく始める時のテーマ選定は、ジョハリの窓」というお話しをします。
1、ジョハリの窓
心理学の世界に「ジョハリの窓」というものがあります。ヨコ軸に「自己について『自分が知っている』と『自分が知らない』」をとり、タテ軸に「自己について『他人が知っている』と『他人が知らない』」をとることで、次のような4つの窓を作ったものです。
- 開放の窓(open self):自分も他人も知っている部分
- 盲点の窓(blind self):自分は気がついていないものの、他人は知っている部分
- 秘密の窓(hidden self):自分は知っているが、他人には知られていない部分
- 未知の窓(unknown self):自分も他人も気づいていない部分
ジョハリの窓は、データサイエンスを小さく始める時の、テーマ選定にも使えます。
2、「ジョハリの窓」風なテーマ選定
例えば「自己」のところを「ドメイン(活用現場)」とし、「自分」のところは「現場の人」、「他人」は「データ」として考えると次のようになります。
- 開放の窓(open self):現場の人もデータも知っている部分
- 盲点の窓(blind self):現場の人は気がついていないものの、データは知っている部分
- 秘密の窓(hidden self):現場の人は知っているが、データには知られていない部分
- 未知の窓(unknown self):現場の人もデータも気づいていない部分
この時「データが知っている」とは「データを集計したり分析をしたりすることで分かる」といった意味合いになります。
3、小さく始める時、どの窓を狙えばいいのか?
では、小さく始める際、どの窓を狙えばいいのでしょうか。
「秘密の窓」と「未知の窓」は、データをいくら分析しても分からない窓です。現状のデータサイエンス技術では無理なので、別の窓を狙います。残りは「開放の窓」と「盲点の窓」です。
「盲点の窓」は、現場の営業担当者が気づいていないことをデータから導き出すため、良さそうに思えます。しかし、データ活用に対し懐疑的もしくは非協力的な場合、データから導き出された結果を信じてもらえません。現場の感覚と違うからです。そのため、まずデータを活用することに対する信頼を獲得する必要があります。そうすると、残った「開放の窓」になります。現場の営業担当者が知っていることを、データで確認するかのような感じになります。
4、「開放の窓」から始める
「開放の窓」に該当するテーマから始めることで、現場からの信頼を得ることができるでしょう。なぜなら、現場の感覚と合致するからです。しかし下手をすると「あたりまえだろ!」と言われてしまうかもしれません。そこで、ひと工夫必要になります。現場の営業担当者がなんとなく知っていることを、ズバッと数字で示し、かつ、プラスアルファの情報を提供するのです。