データ分析の容易性を評価する3つの視点 データ分析講座(その160)

更新日

投稿日

データ分析

 

◆ 3つの視点でテーマを考える

【目次】

1. テーマ選定における2つの評価軸

2. 容易性を評価する3つの視点

  1. 「取得」に関する容易性
  2. 「分析」に関する容易性
  3. 「活用」に関する容易性

3. 今回のまとめ

 

 データサイエンス実践(データ分析・活用)の成否を左右するのは、テーマ選定にあります。理由は単純です。上手くいきそうもないことをいくら頑張っても、上手くいかないからです。例えば、あなたが陸上選手だとします。「3ケ月間のトレーニング期間で100メートル走を5秒で突破する」というテーマを掲げても、恐らく上手くいかないことでしょう。

 また、あなたが受験生だとします。模試の結果から「よく間違っている、かつ、点数の伸びしろが大きい設問」を把握し、その設問を「3ケ月間の学習期間で得点源にする」というテーマで取り組めば、恐らく上手くいくことでしょう。

 両者の違いは「容易性」(何となくできそう)にあります。今回は「データサイエンス実践の容易性を評価する3つの視点」についてお話します。

 

1. テーマ選定における2つの評価軸

 色々なテーマ選定軸が考えられますが、よく使うのが次の2つの軸です。

  • インパクトの大きさ
  • 容易性の程度

 「インパクトの大きさ」とは、データ分析・活用することによるインパクトの大きさです。ビジネスであれば、売上額やコストダウン額、利益額など金額換算で評価されます。こちらは、多くの場合定量的な評価になります。

 「容易性の程度」とは、データ分析・活用を実現するために、どの程度容易か(逆に難しなのか)を評価したものです。こちらは、定性的な評価になります。定性的な評価を一対比較評価などを活用することで、定量化することができます。AHP(Analytic Hierarchy Process、階層分析法)と呼ばれる手法です。

 上手くいきやすいテーマとは「インパクトが大きく、かつ、容易なテーマ」です。教育目的でインパクトの大きさを考えないのであれば「容易なテーマ」になります。

 

2. 容易性を評価する3つの視点

 「容易性の程度」とは、データ分析・活用を実現するため、どの程度容易か(逆に難しなのか)を評価したものです。具体的に、何の容易性でしょうか?色々な容易性が考えられますが、よく使うのが次の3つです。

  1. 「取得」に関する容易性
  2. 「分析」に関する容易性
  3. 「活用」に関する容易性

 どれか一つでも欠けると、実は容易ではなくなります。それぞれの容易性について説明します。

 ①「取得」に関する容易性

    『取得』に関する容易性とは「データ取得がどれだけ容易か?」を評価したものです。データの所在を確認したら、データそのものが存在しないのであれば、あまり容易でありません。データがなくても、取得が比較的簡単であれば、容易になります。データがあっても、データの状態が非常に汚かったり、データ分析用のデータセットを作るのが大変そうであれば、それは容易とは言えません。「取得」に関する容易性は、データ分析をする人であれば、必ず評価する視点かと思います。

 ②「分析」に関する容易性

  『分析』に関する容易性とは「データの整備や加工、分析、モデル構築などが、どれだけ容易か?」を評価したものです。「分析」に関する容易性は、若干経験値が必要になります。

 データ分析のテーマに取り組むのに…

  どのような集計が必要か
  どのような分析が必要か
  どのようなモデル構築が必要か

 …について、データ分析に取り組む前のテーマ設定の段階で、ある程度みえていないといけないからです。

 データ分析の経験値が不足している人は、テーマ選定の段階ではなく、データ分析をしながら評価することになるかもしれません。とはいえ「分析」に関する容易性は、どこかのタイミングで必ず評価する視点かと思います。

 ③「活用」に関する容易性

 『活用』に関する容易性とは「現場で、実際に活用し成果を得るのが、どれだけ容易か?」を評価したものです。この「現場」とは、データ分析を活用する現場です。経営の現場の場合もあれば、生産現場のケースもあります。営業の現場のこともあれば、経理の現場の場合もあります。残念ながら「活用」に関する容易性の評価は、サボられがちです。

 『活用』に関する容易性は、3つの評価の中で一番重要です。なぜなら、活用されなければ、そのデータ分析・活用の取り組みは、当然上手くいきません。活用されないのですから、当然といえば当然ですが、現場で活用しやすいかどうかの視点が、テーマ設定時で抜けているケースが結構あります。

 この『活用』に関する容易性の評価は、活用する現場の意見が無いことには評価不可能です。現場の「やりたい」、「やれそう」、「イメージが付く」、「こうしてもらえればできる」などが必要になります。現場から「やりたくない」、「できなさそう」、「イメージが付かない」などの意見が出たら、まずデータ分析・活用は実現されません。

 テーマ選定の段階で…

  このような現場の意見を取り入れていない、
  聞きに行っていない、
  そもそも接触していない、

 …といった状況の場合、データ分析・活用がギャンブルになってしまいます。やるかやらないかは「現場まかせ」となるからです。

 

3. 今回のまとめ

 今回は「データサイエンス実践の容易性を評価する3つの視点」というお話しをしました。データサイエンス実践の成否を左右するのはテーマ選定にあります。色々なテ...

データ分析

 

◆ 3つの視点でテーマを考える

【目次】

1. テーマ選定における2つの評価軸

2. 容易性を評価する3つの視点

  1. 「取得」に関する容易性
  2. 「分析」に関する容易性
  3. 「活用」に関する容易性

3. 今回のまとめ

 

 データサイエンス実践(データ分析・活用)の成否を左右するのは、テーマ選定にあります。理由は単純です。上手くいきそうもないことをいくら頑張っても、上手くいかないからです。例えば、あなたが陸上選手だとします。「3ケ月間のトレーニング期間で100メートル走を5秒で突破する」というテーマを掲げても、恐らく上手くいかないことでしょう。

 また、あなたが受験生だとします。模試の結果から「よく間違っている、かつ、点数の伸びしろが大きい設問」を把握し、その設問を「3ケ月間の学習期間で得点源にする」というテーマで取り組めば、恐らく上手くいくことでしょう。

 両者の違いは「容易性」(何となくできそう)にあります。今回は「データサイエンス実践の容易性を評価する3つの視点」についてお話します。

 

1. テーマ選定における2つの評価軸

 色々なテーマ選定軸が考えられますが、よく使うのが次の2つの軸です。

  • インパクトの大きさ
  • 容易性の程度

 「インパクトの大きさ」とは、データ分析・活用することによるインパクトの大きさです。ビジネスであれば、売上額やコストダウン額、利益額など金額換算で評価されます。こちらは、多くの場合定量的な評価になります。

 「容易性の程度」とは、データ分析・活用を実現するために、どの程度容易か(逆に難しなのか)を評価したものです。こちらは、定性的な評価になります。定性的な評価を一対比較評価などを活用することで、定量化することができます。AHP(Analytic Hierarchy Process、階層分析法)と呼ばれる手法です。

 上手くいきやすいテーマとは「インパクトが大きく、かつ、容易なテーマ」です。教育目的でインパクトの大きさを考えないのであれば「容易なテーマ」になります。

 

2. 容易性を評価する3つの視点

 「容易性の程度」とは、データ分析・活用を実現するため、どの程度容易か(逆に難しなのか)を評価したものです。具体的に、何の容易性でしょうか?色々な容易性が考えられますが、よく使うのが次の3つです。

  1. 「取得」に関する容易性
  2. 「分析」に関する容易性
  3. 「活用」に関する容易性

 どれか一つでも欠けると、実は容易ではなくなります。それぞれの容易性について説明します。

 ①「取得」に関する容易性

    『取得』に関する容易性とは「データ取得がどれだけ容易か?」を評価したものです。データの所在を確認したら、データそのものが存在しないのであれば、あまり容易でありません。データがなくても、取得が比較的簡単であれば、容易になります。データがあっても、データの状態が非常に汚かったり、データ分析用のデータセットを作るのが大変そうであれば、それは容易とは言えません。「取得」に関する容易性は、データ分析をする人であれば、必ず評価する視点かと思います。

 ②「分析」に関する容易性

  『分析』に関する容易性とは「データの整備や加工、分析、モデル構築などが、どれだけ容易か?」を評価したものです。「分析」に関する容易性は、若干経験値が必要になります。

 データ分析のテーマに取り組むのに…

  どのような集計が必要か
  どのような分析が必要か
  どのようなモデル構築が必要か

 …について、データ分析に取り組む前のテーマ設定の段階で、ある程度みえていないといけないからです。

 データ分析の経験値が不足している人は、テーマ選定の段階ではなく、データ分析をしながら評価することになるかもしれません。とはいえ「分析」に関する容易性は、どこかのタイミングで必ず評価する視点かと思います。

 ③「活用」に関する容易性

 『活用』に関する容易性とは「現場で、実際に活用し成果を得るのが、どれだけ容易か?」を評価したものです。この「現場」とは、データ分析を活用する現場です。経営の現場の場合もあれば、生産現場のケースもあります。営業の現場のこともあれば、経理の現場の場合もあります。残念ながら「活用」に関する容易性の評価は、サボられがちです。

 『活用』に関する容易性は、3つの評価の中で一番重要です。なぜなら、活用されなければ、そのデータ分析・活用の取り組みは、当然上手くいきません。活用されないのですから、当然といえば当然ですが、現場で活用しやすいかどうかの視点が、テーマ設定時で抜けているケースが結構あります。

 この『活用』に関する容易性の評価は、活用する現場の意見が無いことには評価不可能です。現場の「やりたい」、「やれそう」、「イメージが付く」、「こうしてもらえればできる」などが必要になります。現場から「やりたくない」、「できなさそう」、「イメージが付かない」などの意見が出たら、まずデータ分析・活用は実現されません。

 テーマ選定の段階で…

  このような現場の意見を取り入れていない、
  聞きに行っていない、
  そもそも接触していない、

 …といった状況の場合、データ分析・活用がギャンブルになってしまいます。やるかやらないかは「現場まかせ」となるからです。

 

3. 今回のまとめ

 今回は「データサイエンス実践の容易性を評価する3つの視点」というお話しをしました。データサイエンス実践の成否を左右するのはテーマ選定にあります。色々なテーマ選定軸が考えられますが「インパクトの大きさ」と「容易性の程度」が次の2つの軸となります。

 一方「容易性の程度」とは、データ分析・活用を実現するのに、どの程度容易か(逆に難しののか)を評価したものですが、よく使うのが「取得」、「分析」、「活用」に関する容易性の3つです。

 どれか一つでも欠けると、実は容易ではなくなります。3つの容易性の評価の中で一番重要なのが『活用』に関する容易性です。なぜならば、活用されなければ、そのデータ分析・活用の取り組みは、当然上手くいきません。現場で活用しやすいかどうかの視点が、テーマ設定時で抜けているケースが結構あります。上手く進めるためには、現場に行って議論をしたり、インタビューをしたりと、何かしらのコミュニケーションが必要になります。

 ちなみに、現場から「やりたい」、「やれそう」、「イメージが付く」、「こうしてもらえればできる」などの意見の声が多ければ容易性の評価は高くなりますが「やりたくない」、「できなさそう」などの意見の声が多ければ容易性の評価は低くなります。なんとなく、データ分析・活用が上手くいかないと感じましたら、3つの容易性の視点でテーマそのものを考え直してみてはいかがでしょうか。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
上手くいかないデータサイエンス・プロジェクトに共通すること:データ分析講座(その329)

  データサイエンス・プロジェクトは、不必要に複雑さの罠に陥ることが多いようです。期待の表れなのか、得体のしれないものへの恐れなのか、よく...

  データサイエンス・プロジェクトは、不必要に複雑さの罠に陥ることが多いようです。期待の表れなのか、得体のしれないものへの恐れなのか、よく...


見える化検討からアクション評価へ データ分析講座(その242)

  ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!   もっともシンプルな...

  ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!   もっともシンプルな...


ソラ・アメ・カサとデータサイエンスによる課題解決:データ分析講座(その337)

   【目次】 データサイエンスは今や多くの産業や社会の課題解決に不可欠な要素となっています。課題解決のアプローチ...

   【目次】 データサイエンスは今や多くの産業や社会の課題解決に不可欠な要素となっています。課題解決のアプローチ...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
中小製造業のウェブ戦略

 中小製造業がウェブサイトを立ち上げる際、その目的として「自社の信用力を高めるための会社概要的な役割」と考える経営者も少なくない。しかし、当社のクライアン...

 中小製造業がウェブサイトを立ち上げる際、その目的として「自社の信用力を高めるための会社概要的な役割」と考える経営者も少なくない。しかし、当社のクライアン...


‐情報収集で配慮すべき事項(第3回)‐  製品・技術開発力強化策の事例(その11)

 前回の事例その10に続いて解説します。ある目的で情報収集を開始する時には、始めに開発方針を明らかにして、目的意識を持って行動する必要があります。目的を明...

 前回の事例その10に続いて解説します。ある目的で情報収集を開始する時には、始めに開発方針を明らかにして、目的意識を持って行動する必要があります。目的を明...


ソフトウェア特許とは(その2)

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...