◆ データの力が政治を動かし始めた時代
今回は「データの力が政治を動かし始めた時代」というお話しです。2018年10月21日の日経新聞の朝刊の一面「データの世紀(News & Trend)」に「米政治、マネー vs SNS 中間選挙24万ツイート分析 民主の拡散力、共和の5倍」という記事が掲載されていました。現時点で民主党のほうがSNSを上手く活用している、という内容で「データの力が政治を動かし始めた。」と結論づけられています。
その結論は、11/6の米中間選挙の下院議員候補が1~10月上旬にツイッターで投稿した24万件を日経新聞がデータ分析を行った結果得られたものです。そもそも統計学的なデータ分析は、政治・行政のためのものだったのではないのかと、不思議な感じがしました。
1. データ分析: 米国選挙のデジタル化
アメリカで選挙のデジタル化が大々的に報道されたのが、2008年に民主党のオバマ氏が大統領に当選した時です。インターネットを活用し選挙資金を集め当選しました。その後は共和党のトランプ氏がSNSを駆使した結果、約2倍の資金を集めたヒラリー・クリントン氏を破り大統領に当選するなどインターネットは資金集めにも活用できる上、資金的に劣勢でも上手く使えば跳ねのけられることが証明されました。
2. データ分析: 政治算術
政治算術は、17世紀のイギリスで開発され始めたものでウィリアム・ペティの本が有名です。Wikipediaでは「社会構造・動態を数値に置き換えて国力を測り、将来予測を立てる政治算術」となっています。「データの力が政治を動かし始めた」といわれると、大昔から「政治算術」があるのではないかと思うのでした。
これ以外にプリンストン大の今井さんが書かれた「社会科学のためのデータ分析入門(Quantitative Social Science An Introduction)」などは大変面白い本です。この本の中でも選挙予測が取り上げられています。
3. データ分析: 古代ローマ
政治・行政のデータ分析の歴史は古く、少なくとも古代ローマ時代には既にあったようです。ローマ帝国の初代皇帝(在位:紀元前27年 – 紀元14年)であるアウグストゥスが、人口調査を実施し分析していることが分かっています。国民から確実な徴兵や徴税を行う必要があるため実施したといわれています。日本でも大化の改新時に班田収授法という法律のもと300年以上の長きにわたり調査分析が実施されています。
4. データ分析: 何が新しいのか
要するに、古代からデータ分析を活用し政治・行政が行われ「データの力が政治を動かし始めた。」といわれると、私のような行政機関でデータ分析に関わってきた人間からすると「えっ!」と驚いたり「古代からそうだろ!」などと思ったりしてしまいます。
見出しや書き出し部分だけでなく、記事はきちんと読むべきもので、読んでみればなるほど面白く「データの力が政治を動かし始めた」とは言い得て妙だと感じ入りました。厳密にいうと「SNSを使った候補者自らの発信によって当選が左右される時代になり始めた」のではないかと思います。そういう意味では古代にはなかった新しい現象です。
5.「データの力が政治を動かし始めた」というために必要なこととは?
「データの力が政治を動かし始めた」というためには最低限「SNSなどのデータを分析し、その分析結果を生かして当選した」ということろまで行き着くか、さらに「SNSなどのデータを活用することで、より良い政治が実現し始めた」という結果が見えると「本当にそうだね」となる気がします。
先ほど「『データの力が政治を動かし始めた』とはなかなかのものだ」と述べました。なぜそう思ったのかといいますと「SNSで拡散するのは『テキストデータ』であって、そのテキストデータという名のデータが拡散さることで選挙が左右されれば、確...