ビッグデータやDX、AIなどの掛け声とともに、データ活用に取り組む機会も増えてきたのではないでしょうか。しかし、データ活用のテーマには、筋の良いものと悪いものがあります。知らず知らずのうちに筋の悪いテーマを選び、そのテーマに挑むと苦労も絶えません。どうせなら、筋の良いテーマを選び取り組みたいものです。今回は「上手くいくかどうかはテーマ設定次第」というお話しをします。
【目次】
1. 2つの軸
2.「容易性」とは?
3.「インパクト」とは?
4. テーマ設定の流れ
Step 1:ビジネス課題の洗い出し
Step 2:データ活用の候補の抽出
Step 3:テーマ候補の評価と選定
【この連載の前回:(その289)比較というキーワードでチャレンジしよう へのリンク】
1. 2つの軸
ここでは、テーマの筋の良し悪しを次の2つの軸で考えていきます。
- 容易性
- インパクト
2. 「容易性」とは?
「容易性」とは、どれだけ簡単に実現できるのか、ということです。もう少し具体的に言うと、テーマとしてあげられたビジネス課題の解決が、データを使ってどれだけ容易に実現できるのか、ということです。容易性の観点には、次の3つがあります。
- 取得に関する容易性
- 分析に関する容易性
- 活用に関する容易性
3. 「インパクト」とは?
「インパクト」とは、データ活用したときに得られる「成果の大きさ」です。可能であればすべて「金額(円)」で表現するようにしましょう。
4. テーマ設定の流れ
テーマ設定の流れは、次にようになります。
- Step 1:ビジネス課題の洗い出し
- Step 2:データ活用の候補の抽出
- Step 3:テーマ候補の評価と選定
Step 1:ビジネス課題の洗い出し
Step1の「ビジネス課題の洗い出し」のポイントは「先ず、データの存在を忘れて、解決すべきビジネス課題を考える」というところです。データ活用のテーマと聞くと「データで出来ること」を軸にテーマを探し始める人も少なくありません。「データで出来ること」を軸にテーマを探し始めると視野が狭くなり、場合によっては「データの可能性」を殺してしまうことがあります。データの可能性を殺すとは、データで課題解決できたテーマを見つけられず、データで解決する機会を奪い去ることを意味します。
そのため、ビジネスの「お困りごと」である「ビジネス課題」を、データを活用するかどうかに関係なく洗い出します。データを使うという制約が外されることで、色々なビジネス課題(仕事の「お困りごと」)が洗い出されることでしょう。
Step 2:データ活用の候補の抽出
では次に、Step2の「データ活用のテーマ候補の抽出」です。ビジネスの「お困りごと」である「ビジネス課題」の中から、どのようにして「データを使った方がよさそうなテーマ」を抽出するのでしょうか。例えば、次のような逆算アプローチで探していきます。
肝となるのが「Step 2-3」です。「Step 2-3」でデータ分析の内容だけでなく、そもそもデータ分析が必要かどうかの判断もします。もし、データ分析が必要であれば、その課題は「データ活用したほうがよさそうなテーマ」となります。そうでなければ、データ分析をしなくても解決できる課題、もしくはデータ分析の力を活用しても解決できない課題ということになります。
「Step 2-4」でどのようなデータが必要なのかを考え「Step 2-5」でそのようなデータが存在するのかを検討していきます。したがって「Step 2-3」で「データ活用したほうがよさそうなテーマ」とされても「Step 2-5」でデータが手元にないことが分かり「データ分析できない」となることがあります。もちろん、データが手元になくてもすぐに入手可能であるならば、その限りではありません。この場合、テーマ候補から外れます。これで、データ活用のテーマ候補が抽出されます。
Step 3:テーマ候補の評価と選定
テーマ候補が出そろったら、次にテーマ候補を先ほど説明した次の2つの軸で評価します。Step3の「テーマ候補と評価と選定」です。
・容易性
・インパクト
テーマを選定するとき「容易性×インパクト」の掛け算で考えていきます。
このとき「筋の良いテーマ」とは「簡単でインパクトが大きい」テーマです。複数のテーマ候補があるのなら、簡単でインパクトが大きい「筋の良いテーマ」を選びましょう、となります。しかし「簡単でインパクトが大きいテーマ」が、いつもあるわけではありません。多くのデータ活用のテーマ候補は「インパクトが大きいが難しいテーマ」(腰を据えて挑むテーマ)もしくは「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」(積小為大なテーマ)になります。
データ活用の経験値が少なく、まだデータ活用の成果があまり出ていないのなら「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」(積小為大なテーマ)を優先すべきです。
理由は「簡単だけどインパクトの小さなテーマ」の場合、簡単に成果が出るため、成功体験をどんどん積めて、関わった人のデータ活用の能力を高めるからです。インパクトの小さなテ...