私は仕事柄、幸運にもあるものを見せられることが度々あります。ある人は自慢げに、ある人は不安げにあるものを見せて語ってくれます。そのあるものとは、社内のデータを集約し、美しく見える化したBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの画面(ダッシュボード)です。そのBIの多くが「Excelなど加工し社内共有されていた財務・業績データを、BIでほぼ一元化し見える化した」という感じのものです。恐らく、ものすごい苦労があったことが想像できます。今回は「ビジネスインテリジェンスツールとビジネスインパクト」というお話しをします。
【目次】
1. BIツールは、単なる集計ツールではないか
2. データ分析をする人向けではない凄さ
3. すでにデータ活用は上手くいっていたのですか?
4. BIツールを導入しても、上手くいかない
5. 道具を変えただけで何かが急に変わることはない
6. 上手くいっていないことをIT化しても上手くいかない
7. 上手くいったデータ活用のやり方を加速させる
【この連載の前回:(その281)データで騙す預言者になるへのリンク】
1. BIツールは、単なる集計ツールではないか
BI化により、会社全体、事業セグメント別、部署別、の売上や貢献利益、変動販管費などを、1つのツール上で瞬時に比較をしたり、気になる箇所のデータを掘り下げ比較したりすることができます。昔からデータ分析をやっている人の中には「BIツールは、単なる集計ツールじゃないか!」とディスる人もいます。
2. データ分析をする人向けではない凄さ
データに馴染みのない人が「便利だ!」と言って使うことは、ものすごいことです。今まで、データに馴染みのない人が、データを扱うツールを使うことは、ありえなかったからです。BIツールが、昔からデータ分析をする人に向けたものではなく、データを活用する現場サイドの立場に立って作られているからでしょう。このようにITシステムは、活用する側に立って作られるべきでしょう。
3. すでにデータ活用は上手くいっていたのですか?
私はそのBIの画面(ダッシュボード)を見て、次にように質問することがあります。「BIツール導入前から、すでにデータ活用は上手くいっていたのですか?」
その回答の多くは……
- データが社内に散在し上手くいっていなかった
- バケツリレー方式(現場担当者→課長→部長→事業部長→……)でExcelシートを入力していて手間だった
……といったもので、要領を得ません。
少なくとも「BIツール導入前にすでにデータ活用が上手くいっていた」という明確な回答を得られることは、ほぼあまりありません。多くの場合「BIツールを導入することで、データを上手く活用しよう」というスタンスのようです。
4. BIツールを導入しても、上手くいかない
BIツールがきっかけになり、データ活用が上手くいくなら、こんな素敵なことはありません。ちなみに、ここで言う「データ活用が上手くいっている」とは、「データ活用がビジネスインパクト(売上アップ・コストダウン・利益率向上など)を出している」ということを意味しています。
私は「ここまでするのに、大変な苦労があっただろうな」と非常に感心する一方で、次のようなことを、小心者の私は心の中でぼそぼそつぶやくことも多いです。「このケース、BIツールを導入しても、上手くいかないだろうな……」もちろん根拠なくそう思うわけではありません。上手くいかないと思う理由があります。
極端な例え話をします。
【例え話】
ウサイン・ボルトにはなれない
例えば、新しく買ったランニングシューズを履いただけで人類史上最速のスプリンターと称されたウサイン・ボルトなみに足そのものが速くなることはないでしょう。
レオナルド・ダ・ヴィンチにはなれない
例えば、新しい鉛筆に変えただけで、IQが200は超えていると言われている史上最高の知性を持った人物と称されたレオナルド・ダ・ヴィンチなみの頭脳を手にし、急に学校の成績があがることはないでしょう。
受注件数が劇的に向上することはない
例えば、ディスクトップPCからノートPCに変えても、CRMなどのシステムなどを導入しても、従来の仕事のやり方を一切変えることなく営業上手になり受注件数が劇的に向上することは、ないでしょう。
5. 道具を変えただけで何かが急に変わることはない
「道具を変えただけで何かが急に変わることはないだろう」ということです。例えば、ExcelからBIツールに変えても、急にデータ活用でビジネス成果(売上アップやコストダウン、利益率向上など)がでることは、あまりないことでしょう。多くの企業は、Excel管理からBI管理に移行したのに、ビジネスインパクトがなく上手くいっていないことに1~2年後に気づきます。
なぜならば、BIツールによるデータ活用が上手くいっていれば、売上や貢献利益、変動費など何かしら財務的な数値が良くなっているはずですが、微動だにしないからです。売上アップもコストダウンも利益率向上も達成していないのなら、そのデータ活用は失敗でしょう。
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