◆ 見える化のその先へ進むために、データ分析活用上必要なこと
「見える化」の掛け声とともに、何かしらのデータ蓄積基盤を整備し「見える化」に向けて動き出す企業も少なくありません。しかし思ったほどのビジネス成果という名のメリットを得ていない企業が多いようです。「見える化」によって得られるメリットを夢見て整備まではしたけど、その先へ進められないというケースです。
最近では「見える化」という名のデータ分析の活用基盤として、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入し、ダッシュボードという指標を見るための画面を設け「見える化」までは達成したが、結果はただ見えただけという悲報をよく聞きます。
BIツールやDMP(データマネジメントプラットフォーム)などを導入することで、データがある程度整備されいつでも分析できる状態に近づいたと考えると非常な進歩です。しかしビジネス成果が出ないようだと、単なるIT投資の失敗と言われてしまうかもしれません。今回は「見える化のその先へ進むために、データ分析活用上必要なこと」というお話しをします。
1.データ分析:「見える化」の効用
人は自分の作業が「見える化」することで、モチベーションになったり、逆に危機感を募らせ行動に駆り立てられることがあります。例えば小中高生時代、勉強の成果として模擬テストの点数が上がれば勉強に対するモチベーションは上がります。努力の成果が見えるからです。逆に模擬テストの点数が下がり続ければ危機感を覚え、何とかしなければと日ごろの学習時間を増やしたり、何かしら工夫をするかもしれません。このように、データを集め「見える化」することで嬉しいことも増えてきます。多くの企業で「見える化」というキャッチフレーズとともに、データを集め始めるケースも少なくありません。しかし「見える化」することで、問題が解決するかのような大きな期待を背負い、データだけがどんどん溜まっていきます。
2. データ分析:「見える化」の限界
「見える化」には限界があります。先ほどの例で挙げた、小中高生時代の模擬テスト。自分自身の成績が点数という形で「見える化」されます。テストの成績が落ちたからといって、皆がみんな危機感を覚え必死に傾向と対策を打ち、積極的な学習を実現すことは少ないでしょう。例えば塾に通ったり、家庭教師を付けることで教師の力を借りたりするかもしれません。つまり単にモノゴトが見えただけで行動変容することは、非常に少ないということです。人によっては「見える化」したでけで行動変容するかもしれませんが、多くの場合はそうでないと思います。
もちろん、自分の命や財産が危機的な状況にでも陥れば別かもしれませんが、「見える化」しただけでは、ものすごく意識が高くない限り、行動変容が起こり、何かしらアクションが起こることは少ないことでしょう。
3. 動かせないデータ分析に意味はない
人が関与するようなデータ分析の場合、その人を動かせないとデータ分析そのものが無意味になる可能性が高いです。その代表例が営業です。マーケティングも、どんなに便利なツールが登場し自動化が進んでも結局は人が関与します。
工場もそうです。工場の最大の不確定要因は工員です。データを蓄積し、どんなに分析を行って素晴らしい結果を導き出しても、そのデータが現場で生きるかどうかは別問題です。要するに多くのデータ分析活用では人が登場し、それが最大の不確定要因であって、その人が行動変容を起こせないと最大の阻害要因となりビジネス成果が生まれません。
4. データ分析:「見てどうする」まで考える必要がある
行動変容を起こすためには何が必要でしょうか。非常に単純で「見てどうする」まで考えればいいのです。「見える化」を考える時「見てどうする」まで考え、データ収集を行えばいいのです。生産の品質管理の世界では昔から、実験計画法という手法を使いデータを収集する前に、どのようなデータをどのように収集するのかを検討していました。マーケティングの世界では、この実験計画法を応用しコンジョイント分析やABテスト、多変量テストなどといったものがあります。「見てどうする」まで考えるというのは、無理難題を言っているわけではなく、昔からデータ分析の世界では当たり前のように実施されていたことです。
5. データ分析:「2つの時制」で考える
「見てどうする」まで考えろ!と言われ、何も浮かばないような「見える化」は良くありません。ほぼ確実に失敗します。つまり「見てどうする」まで考え、何かしら思い浮かぶかどうかが、その「見える化」の良し悪しを決める第1の評価基準です。では仮に「見てどうする」まで考え、何かしら思い浮かんだとします。第1の評価基準を突破したケースです。ただ、これはこれで1つ問題があります。
思い浮かんだことの良し悪しを評価しなければなりません。この場合「2つの時制」で評価すると比較的上手くいきます。
「2つの時制」とは次のようなものです。
- 「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせたのか」を考える過去評価
- 「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか」を考える将来評価
6. データ分析:全くデータの蓄積がないケース
全くデータの蓄積がないケースでは、2番目の将来評価で評価していくことになります。具体的にどのようなアクションが起こせそうか考えが浮かんでこなければ、その「見える化」には欠陥があるということです。そして、この「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか」は、現場に非常に近い人や経験者でなければ評価できません。
しかし多くの企業では全くデータの蓄積がないということはなく、何かしらデータを蓄積をしているケースが多いです。このようなケースでは、過去評価(その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせたのか)と将来評価(その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか)の2つの時制で考え、評価する必要があります。既に何かしらデータ蓄積がなされていれば、何かしらビジネスに生かせているものとそうでないものがあるはずです。
過去評価は、何かしらビジネスに生かせているデータについて、具体的にどのようなアクションが起こっているのかを考え「思い浮かんだこと」を過去の視点から考え評価することです。つまり経験値ベースの評価です。
この「2つの時制」をもとに、単なる「見える化」を「見てどうする」に昇華させ、データ分析活用でビジネス成果を生むことができるようになることでしょう。もしあなたの会社の中で「見える化」止まりだなと感じることがありましたら参考にして頂ければと思います。もしかしたら、そのデータ分析活用が上手く回り始めるかもしれません。
7. 単なる「見える化」を「見てどうする」に昇華させること
今回は「見える化のその先へ進むために、データ分析活...