◆ ビジネスにおけるデータサイエンス
ビジネスにおけるデータサイエンスに対し、みなさんはどのような印象があるでしょうか。人によっては、魔法のような不思議さを感じる方もいれば、最新のテクノロジーを使った派手なイメージを思い浮かべる方もいます。サイエンスという響きが、通常のテクノロジーを凌駕した不思議と最近のAIブームが、魔法っぽさを醸し出しているようです。しかし実状は異なります。今回は「やってみなはれの精神でデータで石橋を叩きながら渡る」というお話しをします。
1、データ分析:石橋を叩いて渡る
「石橋を叩いて渡る」ということわざがあります。意味は、用心に用心を重ねて物事を行うことで、用心深さに対する皮肉を込めて使われることが多いです。確かに、壊れる可能性が低い頑丈な石の橋を叩き、強度を確かめながら渡るのですから、相当用心深いことが伺えます。しかしデータ分析の世界では笑い事ではありません。データ活用をするということは「石橋を叩いて渡る」ようなものだからです。
2、データでリスクを減らす
なぜデータ活用をするということが、石橋を叩いて渡るようなものなのでしょうか。例えばデータが全くない状態で、明日の来月の売上を予測することは至難の業です。データがあることで、来月の売上に対し、何らかのあたりを付けることができます。例えば昨年同月の売り上げが50億円だったから、来月の売り上げは50億円ぐらいだろう、とか。例えば今月の売り上げは昨年比で10%高いから、来月も昨年に比べ10%高いだろうから、55億円ぐらいかな、とか。そういった感じです。
3、データ分析:〇〇をしたら▢▢になる
アクションと売り上げが紐づいていて「法人営業の訪問回数を昨年に比べ1.2倍に増やしたので売り上げが10%高くなった」という関係性が分かるとどうでしょうか。多くの場合さらに嬉しいでしょう。このような関係は、データさえあれば見つけ出すことができます。ちなみに、次のように説明変数と目的変数というワードでよく説明されます。
- 説明変数 X:訪問回数
- 目的変数 Y:売上
つまり、XとYの関係性をデータから見出すということです。この「XとYの関係性をデータから見出す」ことができると、リスクを減らすことができるのです。
4、データ分析:統計モデルなどを思い浮かべると分かりやすい
統計モデルなどを思い浮かべると分かりやすいでしょう。リスクとは分散(もしくは標準偏差)の大きさを意味するからです。統計モデルを上手く構築することで、目的変数 Yの分散を小さくすることができるのです。もちろんモデル上のお話しです。統計学に馴染みがない方にとって、統計モデルや分散という言葉を使うと、より分かりにくくなってしまうと思いますので簡単に説明します。
(1) 分散とは
分散とは目的変数 Y(例では売上)のバラつきの大きさのことです。実際にデータの値が大きくばらついている場合、分散が大きくなります。データがある値の近くに集中している場合では分散は小さくなります。予測する上でこのバラつき(分散)は小さいとほうが嬉しいでしょう。なぜでしょうか。
来月の売上Yの分散が大きいとは、来月の売上Yの値がどうなるか分からない(振れ幅が大きいい)、ということです。例えば「来月の売上は10億円から90億円の間である」といった感じです。そこで過去の売り上げデータや、説明変数となるデータ(例では営業訪問回数)などがあると、この売上Yの分散を小さくすることができます。例えば「来月の売上は49億円から51億円の間である」といった感じです。
このように、データがあればあるほど、どうなるか分からないといった蓋然性が減ることで、リスクが減っていきます。
(2) やってみなければデータは溜まらない
データさえあれば、実施する前にどうなるかの目途が立ち、リスク少なく物事が上手く運べる、といった感じでしょう。しかし落とし穴があります。「データさえあれば」というところにです。データさえあれば実施する前に目途が立ちますが、データは実施しなければ溜まりません。やってみなければデータは溜まらないということです。データサイエンスやデータ分析活用は、データがなければ無力です。
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