DX・AI・ビッグデータなど、データ活用にチャレンジする機会が増えてきました。ただし、目標設定が定性的過ぎて、単にそのためのシステム導入で満足してしまい、成果が出ないことがあります。そうならないためにはデータ分析・活用の成果は、あらかじめ定量的な成果指標を決め、数値目標を計画しましょう。今回は「データ活用の成果は金額換算で」というお話しをします。
【目次】
1. 定性的な「やった or やらない」目標
2. ビジネス上、何が達成されたのか?
3. 目的不在で、手段が目的化する
4. 金額に近い定量的な指標を使うのが良い
5.「カネのにおい」がする指標ほどインパクトを持つ
6. 関係者に大きな意識変化を起こす
7. 自信と実感をもたらす
8. どのような指標を使うのか?
【この連載の前回:(その285)アクションを導くために考えるべきこと へのリンク】
1. 定性的な「やった or やらない」目標
たまに定性的な目標を設定し満足してしまうケースが見られます。例えば、DMP(データマネジメントプラットフォーム)を構築する。BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入する。外観検査のための数理モデルを構築しシステムに組み込む。などです。
このような場合「できた or できなかった」という評価しかできません。さらに、何をもって「できた」と判断すればいいのかが分かり難い場合もあります。
2. ビジネス上、何が達成されたのか?
仮に「できた」ところで、ビジネス上、何が達成されたのか意味が分からないことがあります。
例えば「DMP(データマネジメントプラットフォーム)を構築する」の場合「やった or やらない」目標になってしまい、最悪「DMPさえ構築できればいんでしょ!」という感じで、全く役立たずのシステムが構築されてしまう可能性もあります。
3. 目的不在で、手段が目的化する
どうしてこのようなことが起こるのか?このような状況を眺めてみると、当然のことのように、目的不在で手段先行だからではないでしょうか。手段先行とは、DXという手段が目的化する。AIという手段が目的化する。ビッグデータという手段が目的化する。ということです。
要は、何のためのDXなのか。何のためのAIなのか。何のためのビッグデータなのか。それが不明瞭な場合があります。その「何のため」という目的が明瞭でも、それが抽象的かつ「ふわっ」としている場合もあります。
4. 金額に近い定量的な指標を使うのが良い
ビジネスでのデータ分析であれば、可能であれば、金額に近い定量的な指標を使うのが良いでしょう。例えば、DMPを構築することで100億円のコストダウン。BIツール導入で利益率10%アップ。外観検査のための数理モデルを構築しシステムに組み込むことで10億円のコストダウン。などです。
「DMPさえ構築できればいんでしょ!」という感じでにはならず、最低限「100億円のコストダウン」を達成するDMPを構築する必要がでてきます。「BIツールさえ導入すればいんでしょ!」という感じでにはならず、最低限「利益率が10%アップ」するようにBIツール導入をする必要があります。
5.「カネのにおい」がする指標ほどインパクトを持つ
下品な言い方で申し訳ないですが「カネのにおい」がする指標ほどインパクトを持ちます。分かりやすく、誰でも理解可能です。他部署の人でも分かります。例えば、人事部の新卒採用担当者がデータ分析・活用による成果を示すとき「内定受諾率が50%から80%にあがった」と言うよりも「内定受諾者数を減らすことなく3,000万円コストダウンした」の方が、分かりやすくインパクトがあります。
「内定受諾」という言葉にピンとこなかったり、受諾率が80%であることのすごさが分からなかったりしても、コストダウンという金額で示されれば、データ分析・活用によってどのくらいの規模の成果が出たのかが理解できます。
6. 関係者に大きな意識変化を起こす
データ分析・活用の成果を金額で示すことは、単に成果を分かりやすくインパクトを持って他者などに伝えるだけではありません。金額で示された指標は、データ分析・活用の関係者に大きな意識変化を起こします。データ分析する側も、それを活用する側にもビジネス成果を生む意識が高まります。
具体的な「金額」で成果を示す必要が出てくるからです。営業パーソンが売上などの数字を背負う感覚に似ています。
7. 自信と実感をもたらす
金額換算された成果は、データ分析・活用の関係者に自信と、ビジネス貢献の実感をもたらせてくれます。例えば、データ分析・活用によって「主力製品の生産の歩留まりを60%前後から常に95%以上になるよう改善した」というよりも「例年1,000億前後の営業利益を出している会社に、新たに500億円の利益をもたらせた」の方が、会社全体の営業利益を1.5倍にしたとい...