◆ データ分析で「IT化の不効率」を乗り越える「プロセス改革」
2000年頃からIT化の波が押し寄せました。ITバブルがあったころです。当時、ビジネスパーソンの中では、まだ電子メールすら一部の人にしか浸透しておらず、業務コミュニケーションは対面か、電話か、Faxかといったところでした。新人の代表的な仕事と言えば、「電話番」があげられていました。
その後、一気にIT化の波が襲い掛かり、電子メールは当たり前、休暇申請も、出退勤も、決済申請も、顧客管理も、物品購入も、旅費申請も、IT化できるところは片っ端からIT化されました。IT化とは何なのでしょうか?
恐らく何かが効率化され、楽になったなら許せますが、多くの場合ツールに振り回され、とてもじゃないけど楽になった気がしません。このように感じたら、それは「IT化の不効率」が起こっています。この「IT化の不効率」を乗り越えるカギになっているのが、データです。特に、「プロセス改革」を実現するには、データ分析が非常に重要なファクターになっています。データ分析視点で語れば、データ分析は「プロセス改革」を実現することで大きな価値を生み出します。
1. IT化の不効率
IT化とは何だったのでしょうか?
ここ20年の動きを見ていると、IT化とは現状の一部の業務を、情報システムやツールで代替し効率化することだと思います。つまり、「業務の大きな流れなどは基本的に変化させず、その一部を変化させる」ということです。プロセス改善のIT化です。その結果何が起こったでしょうか?
多くの場合が、構築したシステムやその上で操作するツールに対し、人間の方が歩み寄り、それらの扱い方や操作方法を習得する感じかと思います。要するに、IT化すると人間に負担がかかるのです。IT化によって、何かしらの負担が人間のほうにかかるなら、それ以上に何かしらの負担が減らない限り人は楽になりません。
2. IT化によって起こる4つの変化
IT化によって4つの変化が起きます。
- 変化1:加わる
- 変化2:増える
- 変化3:減る
- 変化4:消える
変化1の「加わる」とは、IT化によって今までやっていなかった業務などが新たに加わることです。例えば、新システムの運用やツールの操作などです。一方で、変化4の「消える」とは、IT化によって今までやっていた業務の一部などが無くなることです。
そして、変化2の「増える」とは、IT化によって作業時間などの増える業務が出てくること。変化3の「減る」とは、IT化によって作業時間などの減る業務が出てくること。こう考えると、「変化1の『加わる』と変化2の『増える』」よりも「変化3の『減る』と変化4の『消える』」の方が大きいと、IT化の不効率が起こってしまいます。
冷静に振り返ってみると、「変化1の『加わる』と変化2の『増える』」の方が「変化3の『減る』と変化4の『消える』」の方が大きいケースが多々ある。IT化によって、面倒なツール操作が増えたのに、無くなった業務があまりにも少ない。
例えば、出退勤管理。
IT化の前には、多くの会社ではタイムカードで打刻するだけなので数秒で終わっていた。入口の前にあるので、ほぼ毎日きちんとタイムが記録されていた。IT化されたことにより、社内の勤怠システムにPCからアクセスし時間を記入し、さらに上長に申請をする必要がでてきた。そして中には、毎日勤怠管理システムにアクセスせず、月末に一度に入力し申請することに。
さらに会社側が欲を出し、勤怠管理システムに業務内容を記録させるようになった。月末に一度に入力するので、この業務内容と時間が正しいか疑わしい。このようなデータをいくら眺め、そしてデータ分析しても、価値あるものは生み出しにくい。
そして、数年単位で勤怠システムが新しいものに置き換えられ、慣れ親しんだころに、新しいシステムに人間が合わせる必要が出てくる。プロセス改善のIT化で、よくこのような現象が起こっている気がします。
3. プロセス改善という思想を乗り越える
プロセス改善のIT化では、自ずと限界が来ます。今までやっていたことを肯定し、それを効率化しているだけだからです。
ここでいうプロセスとは、2つの意味があります。
- 意思決定プロセス
- 業務プロセス
今までやっていたことを肯定するとは、今までの意思決定プロセスや業務プロセスを変革させることなく、プロセスの一部をIT化することにより効率化させようというものです。基本的な流れは変わらず、今までのプロセスの流れの中にIT化された部分が付け加わる感じです。
先ほど申し上げたように、IT化によって何かが付け加わるだけで、減ったり無くなったりする箇所が非常に少ない。ただただ面倒が増えるだけで、「IT化をした感」があっても「効率的になった感」があまりない。
現状のプロセスに無理やりIT化するから、このようなことが起こってしまうのではないでしょうか。どうせなら、プロセスそのものを変革させた方が良い。それがプロセス改革。プロセス改革とは、そのプロセスの目的の達成のスピードやその質とコストを念頭に、プロセスそのものをゼロから考え実現化させるということです。結果的に、今までとあまり変わらないプロセスになるかもしれませんし、今までとは全く異なるプロセスになるかもしれません。そういう意味では、結果至上主義の立場をとります。
4. 人間がITに合わせるのではなく、ITが人間に合わせる
IT化の副産物としてデータが生み出されます。 IT化の不効率を起こしている場合、必ずと言っていいほど、生み出されたデータを上手く活用できていません。
例えば、現状のプロセスの中に「データ活用をしている業務」が無かったら、現状のプロセスを肯定する「プロセス改善」の中で、データを活用することはほぼないことでしょう。では、現状のプロセスの中に「データ活用をしている業務」があった場合はどうでしょうか。先ほど例の勤怠管理の場合、出退勤の確認と残業代の計算ぐらいでしかデータを利用していなかったら、プロセス改善のIT化では、それ以上のデータを活用することはできないことでしょう。
プロセス改革のIT化では、よく「データドリブン」(データ駆動)という言葉を使うことがあります。IT化の不効率の壁を突破するためには、データドリブンという思想が必要になってきます。そのプロセスの目的達成のために、データを上手く活用し、プロセスそのものをゼロから考える実現する思想です。
IT化による「プロセス改善」から、IT化×データドリブンによる「プロセス改革」です。それを実現するのが、データ分析なのです。プロセス改革が実現されたとき、「人間がITに合わせるのではなく、ITが人間に合わせる」といったことになることでしょう。そ...