◆ 過去のデータの扱い方効果のある営業が誰にでも出来る、データ活用術とは
1. データベースからの知識発見
KKDの世界からKDDの世界へとはよく言われますが、先日、「データ活用してKKD(経験と勘と度胸)から脱却したい」と、ある企業の営業本部長からも言われました。
KDDとは、Knowledge Discovery in Databases(データベースからの知識発見)のことです。集めたデータから人が気付かなかった知識を発見しビジネスに活用します。データマイニングと言われている分野です。夢のような世界です。今は、データマイニングではなく機械学習やAI(人工知能)という別の言葉で、このデータから得られるかもしれない夢を描いています。
KKDとは、経験と勘と度胸の頭文字をとった造語です。長年の経験や過去の事例をベースに物事を判断し推し進めることです。一番の問題は、人の経験値や直感、才能、やる気、気分などによって左右されることです。経験は人によって違いますし、勘は日や気分によって冴えるときもあればそうでないときもあります。つまり、KKD(経験と勘と度胸)に頼った営業や販促では、人よってばらつきが大きく、同じ人でも日によってばらつくため安定しません。
2. データを活用して、ばらつきの少ない安定した営業をする
データ分析を営業や販促に活用することのメリットはなんでしょうか。今まで思いもしなかった新しいこと(知識)を発見することでしょうか。データをいくら分析しても、おそらく新しいこと(知識)はそうそう見つかりません。なぜ見つからないのでしょうか。それはデータは過去のことを記録したに過ぎないからです。
データを分析し今まで気づかなかったことが分かっても、大きなインパクトのあることはそうそう発見されません。見落としていたことに気づくだけです。自分が見落としていただけで、他の誰かは気づいていていたかもしれません。多くの場合、勘のいい人は気づいています。そして、あまり重要でないために口に出して言わなかったり、社内に言い出せる雰囲気がなく黙っていただけかもしれません。
つまり、データを集め分析しても、大きなインパクトのあることは発見しにくい。ある程度データ分析の実務を経験すると、誰もが気付きます。では、データ分析をするメリットはどこにあるのでしょうか。それは、ものすごくインパクトのある素晴らしいこと(知識)を発見することではなく、着実に物事を進めるためです。営業で言えば、大型案件を1件ドーンと受注し営業ノルマを達成するのではなく、小型や中型の案件を着実に受注し営業ノルマを達成することです。
野球でいえば、1発ホームラン狙いのホームランバッターではなく、こつこつバットにボールを当てて打率をあげるアベレージヒッターです。つまり、データを活用するとは、ばらつきの少ない安定した営業をすることです。営業や販売促進活動にデータを応用することを、セールスアナリティクス(Sales Analytics)と言います。ビジネス全般に広げると、ビジネスアナリティクス(Business Analytics)と呼ばれています。
3. データを使うことの最大の強みは、先を見通すことができること
営業活動にデータを活用するということは、こつこつバットにボールを当て打率をあげるていくアベレージヒッターになることです。営業成績は安定し、どのくらい受注できそうか先が見えてきます。例えば、この商材は家電メーカーよりも食品メーカーに営業したほうが売れそうだ、チラシを5000部まくといくらの売り上げをあげそうだ、ということが数字で見えてきます。
具体的には、受注確度や受注金額の予測値が見えてきます。このようなことが見えれば、受注確度と受注金額のより大きな業界やリード(見込み顧客)に営業活動や販売促進活動を積極的にしかけていけばよいのです。
個々の案件の受注確度や受注金額などが見えてくるということは、全体も見えてくるということです。今年度どのくらいの売上が見込めそうか、あと3か月で何件受注できそうか、などの見通しが立ちます。堅実的で夢はありませんが、先を見通すことができます。これがデータを使うことの最大の強みです。
安定もよいですが、人は夢に憧れをもちます。一発ドーンと大型案件を受注できたら、どんなに素晴らしいことでしょう。壮大な夢であるほど人はワクワクします。データを使って、超大型案件をサクッと受注はできないのでしょうか。
4. こつこつ営業成績をあげなら、ときたま、ものすごい成果を生むことも夢ではない
アベレージヒッターといえば、大リーグのイチロウです。彼はこつこつバットにボールを当て打率をあげながら、実はホームランも打ちます。そうなんです。アベレージヒッターって、打率をあげながら時々ホームランを打つのです。
イチロウ選手の成績を見てみます。
日本プロ野球のオリックス時代:1994年は打率0.385で本塁打13本、1995年は打率0.342で本塁打25本
米国大リーグのマリナーズ時代:2004年は打率0.372で本塁打8本、2005年は打率0.303で本塁打15本
データ活用も同じです。こつこつ営業成績をあげなら、ときたまものすごい成果(大型案得の受注)を生むことがあるのです。ホームランバーターのイメージの強い、松井秀喜選手の成績も参考に見てみます。日本プロ野球最後の年である2002年は打率0.334で本塁打50本、大リーグで一番本塁打を打っていた2004年は打率0.298で本塁打31本、決して打率は低くなく、むしろ高いぐらいです。特に日本プロ野球時代は、アベレージヒッターといってもよいぐらいです。それにしても、改...