◆ 受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析
受注に関するデータはどのような会社にもある価値のあるデータです。これがなければ売上が計上できません。このような受注履歴や売上データからだけでも何かしら分析ができます。
例えば、法人相手にビジネスをしているBtoB企業の場合、購入者と販売した商材が直接紐づきます。一般消費者相手にビジネスしているBtoC企業であっても、購入者と販売した商材を結ぶデータを持つ企業もあります。通販やエステ、自動車販売、不動産、英会話スクールなどです。
このような購入者と販売した商材が直接紐づいたデータ、いわゆる受注履歴データを使うことで、色々なデータ分析ができます。今回は「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをします。
1.セールスアナリティクス:3大テーマ
マーケティングや営業生産性など販促効率を高めるデータ分析といわれているセールスアナリティクスには、次の3つの大きなテーマがあります。
- (1) 新規顧客の獲得
- (2) 既存顧客の離反阻止
- (3) 既存顧客の取引拡大
セールスアナリティクスのビジネス成果として、次の2つがあります。
- 顧客数
- LTV(顧客生涯価値=1人の顧客が生涯で払う金額の合計)
顧客数を増やすには(1)の「新規顧客の獲得」と(2)の「既存顧客の離反阻止」が必要です。単に新規顧客を増やしただけではだめで、いかに離反顧客を減らすのかも重要になってきます。
LTVとは「年間取引額×取引年数」です。したがって(2)の「既存顧客の離反阻止」することで長いお付き合いを目指しつつ(3)の「既存顧客の取引拡大」を目指します。そう考えると、キーになるのは(2)の「既存顧客の離反阻止」になります。しかし、既存顧客の離反は、顧客がいなければ始まりません。その顧客を増やすのが(1)の「新規顧客の獲得」です。
2. データ分析:理想の新規顧客
理想の新規顧客とはどのようなお客様でしょうか。人によって答えは変わってくるとは思いますが、LTVの視点から考えると、「長く取引を継続してもらえ、かつ、取引額も大きなお客様」つまり、LTVの大きくなりそうなお客様が、理想の新規顧客ということです。
3. データ分析:いまどうなっているのか?
受注履歴データから、各顧客ごとの取引開始日、取引期間、年間取引額、取引商材、担当営業のことなどが分かるかと思います。また各顧客ごとの業種/業態、企業規模、業績、取引部署のような情報も分かることでしょう。すぐ実行できるのは「今どうなっているのか?」の分析です。
4. データ分析:正確なLTV
例えば、現時点の累積取引額は「仮想LTV」として計算します。取引が停止している顧客であれば「仮想LTV」ではなく「正確なLTV」となることでしょう。取引が停止しなければ、正確なLTVは計算できませんが、現状どの程度の規模の取引になったのかは分かります。
「取引停止中」と「取引中」の顧客に分け「取引年数(ヨコ軸)× 平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット=置く)を作ることで、どの顧客のLTVが高くなりそうなのかが、何となく見えてくるのではないでしょうか。マップの右上にプロットされている顧客が理想です。
取引先のデータが十分にあれば、例えば「2000年に取引開始した企業」という形でデータを限定させ1年、5年、10年で取引が終了した企業、いまだ取引が継続している企業などを集計するといいでしょう。このような、集計だけでも見えてくることはたくさんあります。
5. データ分析:入口は何か?
課題は「理想の新規顧客」の中から「LTVの大きくなりそうな顧客」を見つけることです。それには取引開始時の状況に注目することが重要で、まずどのような顧客と、どのような取引を行ってきたのかを調べます。例えば、先程挙げたLTVの大きい顧客の業種/業態、企業規模、業績、取引部署、取引商材、担当営業などです。記録として残っているもので十分です。
新規取引が始まってからの売上記録を調べることで、今後どのような顧客と、どのような取引をするといいのかが分かってくるでしょう。ちなみに、LTVを見積もりたい場合は次の「LTV予測モデル」を構築すればいいでしょう。
6. データ分析:LTV予測モデル
もし「LTV予測モデル」を構築してあるようでしたら、現在のターゲット企業の中で、最もLTVの予測値の高い企業を軸に営業・販促活動を展開することが考えられます。当然ながら、このLTVの予測値は単なる目安に過ぎません。未来に対し何の情報もなくターゲット企業を選択するぐらいであれば、何かしら情報があったほうがいい、といった感じです。このように、受注履歴データだけでも、新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析を実施することができます。
7. 顧客生涯価値が高くなりそうな顧客との初取引時の状況
今回は「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをしました。
法人相手にビジネスを...