◆ データ分析活用は、OODAループで上手くいくかもしれない。きっと上手くいく
データ分析を実務で活用するとき、管理するためのマネジメントサイクルと、動くためのドゥーループが必要になります。よくやられるのが、マネジメントサイクルであるPDCAサイクルやPDSサイクルです。いくら管理してもアクションが適切に実行されなければ意味がないのです。ではどうすればよいのか?多くの場合、ドゥーループが欠けています。
1. データ分析プロセス「CRISP-DM」再考
データ分析を活用するためのプロセスには色々あります。抽象的なものや概念的なもの、ある業界や機能に特化したものなど、色々あります。正直どれでもよいでしょう。データ分析を適用する組織や機能(例:営業や品質管理など)に一番合うのがよいでしょう。
それはさておき。昔からある有名なデータ分析プロセスがあります。非常に概念的ですが、大きな流れはどのような組織や(例:営業や品質管理など)でも、ある程度可能です。
データ分析プロセス「CRISP-DM」と言います。昔、SPSS社(現在はIBMに買収)が積極的に提唱していました。データ分析プロセス「CRISP-DM」とは、「CRoss-Industry Standard Process for Data Mining」の略で、以下の6つのプロセスからなります。
- (1) ビジネス理解(Business Understanding)
- (2) データ理解(Data Under Standing)
- (3) データ準備(Data Preparation)
- (4) モデリング(Modeling)
- (5) ビジネス評価(Evaluation)
- (6) ビジネス展開(Deployment)
最も重要なのが、(1) の「ビジネス理解(Business Understanding)」と(6) の「ビジネス展開(Deployment)」の2つのプロセスです。
(6) の「ビジネス展開(Deployment)」が上手くいっていないということは、データ分析活用が上手くいっていないということと同義です。そして、(6) の「ビジネス展開(Deployment)が上手くいくためには、(1) の「ビジネス理解(Business Understanding)」が適切でないとダメでしょう。
そして、データ分析と聞くとイメージするのが、(2) の「データ理解(Data Under Standing)」から(4)の「 モデリング(Modeling)」の箇所。で、データ分析者が興味をもって多大なる意識を集中し時間を費やしてしまうのも、(2) の「データ理解(Data Under Standing)」から(4)の「 モデリング(Modeling)」の箇所。
(5) の「ビジネス評価(Evaluation)」も見落とされがちで、これは予測モデルの評価などではなく、ビジネス展開した時の評価。例えば、売上が〇〇円アップする、コストが〇〇%ダウンするなどのビジネス上の評価のことです。したがって、(5) の「ビジネス評価(Evaluation)」の結果がよくない場合には、(1) の「ビジネス理解(Business Understanding)」に逆戻りしやり直しです。
2. (6) の「ビジネス展開(Deployment)」はどうする?
今ご紹介した、データ分析プロセス「CRISP-DM」で、(5) の「ビジネス評価(Evaluation)」まで進み、その評価結果も上々だったとします。次にすべきは、(6) の「ビジネス展開(Deployment)」です。想像してみてください。
- 適切な予測モデルができた……
- ビジネス理解もしっかりしているため、現場が必要としていることとも合致している……
- さぁ、この予測モデル群を使ってビジネス活用しろ!
- データ分析のビジネス活用が上手くいくでしょうか?
これでは、多くの場合上手くいきません。現場にデータ分析の結果や予測モデルが降ってきても、どのように実務で活用すればよいのかが分からないからです。このようなケースは非常にもったいないです。(5) の「ビジネス評価(Evaluation)」まで上手くいっているのに、実務活用されないからです。では、どのように(6) の「ビジネス展開(Deployment)」をすればよいのでしょうか?必要なのは、データを使って現場が動くためのドゥーループです。
3. OODAループという名のドゥーループ
ドゥーループの一つに、OODAループというものがあります。OODAループとは、営業やマーケティングの現場で、変化に適応し柔軟に「動くため」の運用サイクルで、以下の4つのプロセスからなります。
- (1) 観察(Observe)
- (2) 方向付け(Orient)
- (3) 決定(Decide)
- (4) 行動(Action)
非常に簡単に説明します。
- (1)の「観察(Observe)」で今得られているデータなどに異常がないかどうかデータを見て、問題があればその要因を探ります。過去から現在までの議論です。
- (2)の「方向付け(Orient)」で、現在から未来の方向性を考えていきます。そのために、予測モデルを使います。
- (3)の「決定(Decide)」で、現在から未来の方向性が複数ある場合に、実施する方向性を決めます。
- (4)の「行動(Action)」で、決めた方向性に沿ったアクションを実施します。
このように、非常にシンプルなもので、誰もが無意識でやっているようなことです。それをデータを使って意識的に実施していくのが、データ分析活用上のOODAループです。
4. 誰もが無意識でやっているOODAループ
簡単な例を最後に説明します。
例えば、試験勉強。受験勉強でも、TOEICなどの勉強でも構いません。学習計画をざっくり作ってあるとします。多くの人は、勉強の進捗状況を日々チェックしたり、模擬テストを受験することで現在の実力を計ることでしょう。
今日は順調だ……
今日はあまりできなかった……
全体的に進捗が遅れている……
このままではだめかもしれない……
この調子なら合格できそうだ……
色々思うところはあるでしょう。これが(1)の「観察(Observe)」です。問題がなければ、通常の計画通り(4)の「行動(Action)」をします。問題があれば、その要因を考え、今後の改善案を考える(2)の「方向付け(Orient)」を実施します。例えば、「今日は計画の半分しか学習できなかった」としましょう。なぜ、できなかったのか? 風邪を引いて調子がでなかった。であれば、明日と明後日も調子は戻らなそうなので、後2日間は予定の半分だけ学習し体を労わろう。その後、6日間は頑張って予定の1.5倍学習しよう!そうすれば、9日後には予定通りになっているはずだ。
このような現在から未来に向けた方向性を、いくつか考えていきます。これが、(2)の「方向付け(Orient)」です。
この例以外にいくつかの学習のリカバリープランがあったとき、どのプランが一番自分にとって無理なく確実に実現できそうかなどを考慮し、選択するのが(3)の「決定(Decide)」で、それを実行するのが(4)の「行動(Action)」です。このようなOODAループは、多くの人が、OODAループを知らずに実施していることでしょう。
5. データ分析プロセスである「CRISP-DM」
今回は、「データ分析活用は、OODAループで上手くいくかもしれない。きっと上手くいく」というお話しを、古典的なデータ分析プロセスである「CRISP-DM」に沿ってお話しいたしました。CRISP-DMとは、以下の6つのプロセスからなります。
- (1) ビジネス理解(Business Understanding)
- (2) データ理解(Data Under Standing)
- (3) データ準備(Data Prepara...