◆ データ活用の火を消さないために、データ分析組織に求められること
データ分析組織(データサイエンス専門の組織)を作ったのに、データ分析が根付かない。情報系や理学系の学生を新卒として採用したり、分析経験のある人を中途で採用し、人材を強化したのに、データ分析が根付かない。データ分析組織があって人材がいても、根付かないものは根付かないでしょう。データ分析が当たり前のように根付いている組織と、そうでない組織、何の違いがあるのでしょうか?
今回は、「データ活用の火を消さないために、データ分析組織に求められること」についてお話します。
1. 多くのデータサイエンス専門の組織に歴史と伝統がない
ビッグデータやデータサイエンス、最近ではAI(人工知能)などといわれるブーム以前から、データ分析を生かしている組織はありました。私もいくつか知っています。不思議なことに、私の知っているそのような組織は、あまり表に出てきていない印象があります。「あれっ?」と思うぐらい、表に出てきていません。もちろん表に出てきている組織もありますが。
表に出るとは、新聞や専門誌、データサイエンスに近しい雑誌などに出てくるということです。
正直、出てこない理由は知りません。あえて表に出して、宣伝する必要性を感じていないのかもしれません。たとえ表に出ることがあっても、数年で100名体制にするとか、そういった派手なことをしていません。ちょっとだけ、私の話をします。
私が昔所属していた組織も、データ分析を70~80年ぐらい前から実施し、何かしらデータ分析が活用されていました。第二次世界大戦の終戦前からあるため、歴史と伝統は相当なものだと思います。
人材も20代~50代まで、まんべんなく揃っていました。データ分析で迷ったとき、周囲に多くの手本がいて、さらに適切なアドバイスをもらうことも、当然可能でした。そういう意味では非常に恵まれていました。
そこで私が感じたのは、「データ分析というものはその人のフィロソフィーを色濃く反映する鏡である」ということです。その人の人間性というか生き様が、データ分析ににじみ出てくるのです。しかし、ブーム前後にできたデータ分析組織の場合、設立して長くて10年ぐらいでしょうか、あまり歴史と伝統がありません。歴史と伝統があまりないということは、そのデータ分析組織(データサイエンス専門の組織)で長年データ分析をしてきた人がいないのではないかということです。
20~30年以上の経験を持った先輩がいないということは、その歴史と伝統を、その組織に属した人が作っていかなければなりません。ポジティブにとらえれば、歴史と伝統を作り放題ということにもなります。しかし、ブームに乗って作ってしまったデータ分析組織(の場合、その責任者に近い立場の人ほど、何をすればよいのかと悩まされることになります。
2. データ分析:どういった「必要性」があるのか?
自社も、データを使って儲けるぞ! ディープラーニングだ! デジタルトランスフォーメーションだ! それやれ!!!
ブーム以前から存在していたデータ分析組織は、何かしらデータ分析の必要性があったからこそ、専門の組織を作ったのでしょう。例えば、紙媒体の企業が「これからはWebの時代だ」ということで、デジタルマーケティング系のデータ分析人材の強化に取り組み、ある程度の成功を収めたりしています。
例えば、Amazonで頻繁にお買い物していたある社員の発想がもとで、自社のBtoB(法人相手のビジネス)でも行けるのではと思い、ECサイトを作ったところ、今では大きな収益を上げるようになりました。その大きな収益を上げるため、自社なりに組織的なデータ分析に取り組み、かなりのものになっています。
他にもデータ分析で組織内の課題解決に取り組んだ結果、ある程度成功している組織や重要な意思決定ほどデータ分析を活用すべしとなっている組織など、色々あります。皆、共通しているのは「必要性」からデータ分析組織を作ったということ。ブームだからではなく「必要性」があったからです。
「必要性」があるということは、そのデータ分析組織に必要とされていること、言い換えると「期待されていること」が、ある程度明確になっているということです。逆に、明確な「必要性」がないのに、何となくブームに乗ってデータ分析組織を作ってしまった場合、何を期待されているのか分からないため、迷走することでしょう。
3. データ分析:何が期待されているのか?
データサイエンス専門の組織には、何が期待されているのでしょうか?
私が聞いた、ブーム後に設立された幾つかの企業のデータ分析組織の悩みは、「もうそろそろ、何か明確な成果を出さなければ、事業貢献しなければ、売上をたてなければ」というものが多いように感じます。
どんなにデータ分析やデータサイエンス、機械学習系の書籍を読み、研修を受け、コンサルティングを受けても、なかなか思う通りにはいかないようです。
理由は明白で、組織内にデータ分析の小さな成功体験すらないのです。
ここでいう成功体験とは、リアルに〇〇万円の売上や利益に貢献したという、明確な数字です。誰かに喜んでもらえたとか、褒められたとか、スゴイと言われたとかではなく、あのデータサイエンス専門の組織のおかげで、売上が○○万円増えた、コストが〇〇%減った、新規顧客獲得のリードタイムが〇〇%短くなった、1社あたりの売上が〇〇%増えた、リカーリングの売上の占める割合が△△%から〇〇%になった、ということです。
データを専門に扱う部署なのですから、自部署の成果も数字で明確に示すべきです。「データ分析組織の人たちから数字がたくさん出てくるのに、自分たちのことは数字で示せない」と思われたら周囲は理解をしてくれないかもしれません。
4. データ分析:では、どうする?
少なくとも、企業であればデータ分析組織に「期待されていること」は明白です。それは、「収益」に貢献することです。これは、データ分析組織でなくとも、期待されていることです。
データサイエンス専門の組織であれば、さらに「効率性の向上」もしくは「競争力の強化」も求められていることでしょう。効率性の向上とは、「データ分析によって効率的になった」ということです。費用対効果や生産性の向上といってもよいでしょう。
競争力の強化とは、製品やサービスにデータ分析の技術を付加することで価値を高め、価格を落とすことなく競争力を高めたということです。例えば、検知力向上、分類精度向上、予測精度向上、など統計モデルや、機械学習モデル、最適化モデルを組み込むことで、製品力やサービス力を高めるということです。
何はともあれ、少なくとも「収益」に貢献することがデータ分析組織に期待され、それを見える形にすべきです。つまり、売上か利益かコストかでその成果を示すべきです。利益率でも、稼働率でも、継続率でもよいです。収益と関係を見える数字で示すべきです。
営業やマーケティング系のデータ分析でなくとも、問題ありません。例えば、人事系の新卒採用のデータ分析でも、担当者の働く時間が短くなり生産性が高まれば、理論的には人件費というコストが安くなることを意味します。
データ分析組織に求められる事は、自分たちの仕事を常に収益につながる何かで表現することです。できれば、金額換算する習慣を持つことが重要だと思います。「分析しっぱなし、予測モデルの提供しっぱなし、検知モデルの組み込みしっぱなし」ではいけません。データサイエンス専門の組織は、歴史と伝統がないほど、自分たちの成果を明確に周囲に宣伝する必要があると思います。
5. データ分析組織は、やっていることを金額換算
今回は、「データ活用の火を消さないために、データ分析組織に求められること」というお話しをしました。
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