データ活用を考えたとき、先ずはデータ活用する「現場のお困りごと」を考えるべきです。しかし「データのお困りごと」から入ってしまうケースが多々あります。「データのお困りごと」とは、データが足りない、データが汚い、データが入手しにくい、ということから起因するものです。要は、データ整備やデータ基盤などの「お困りごと」です。「現場のお困りごと」とは、売上をもう少し上げたい、営業を効率化したい、コストを下げたい、離反顧客を減らしたい、利益率をあげたい、取引額を拡大したい、などです。どちらも、データ活用上の「お困りごと」ですが、そこを混在して考えてしまうケースが多々あります。今回は「データ活用の『現場のお困りごと』と『データのお困りごと』」というお話しをします。
【目次】
1. ある航空会社の例
2. なぜ「データのお困りごと」を先に考えてしまうのか?
3. 現場ヒアリングとオペレーション
4. 現場の業務プロセスの中に、データ活用のテーマが眠っている
【この連載の前回:(その274)分析結果レポートのポイントへのリンク】
1. ある航空会社の例
ある航空会社は、数年かけてデータ活用基盤を整備していました。その費用は決して安くありませんでした。あと1年でデータ活用基盤ができ上がろうとしたとき、外部からきた役員から次のような、素朴な質問がでました。「何がどう嬉しいのだっけ?」この答えが非常に難しく、担当者は難渋していました。
なぜならば「現場のお困りごと」に応えられるものではなく、売上アップやコストダウンにも寄与しているものではなかったからです。その担当者は、もともと航空券の価格設定(ダイナミックプライシング)を担当している部署にいました。その部署にいたときから、構築中のデータ基盤の一部の機能は利用できました。ダイナミックプライシングのためのデータや機能を搭載したもののはずでしたが、実際は使い物にならず、担当者が従来のやり方で実施していました。
なぜでしょうか?
現場のやり方から乖離している、もう少しいうと、現場のオペレーションから考えると非常に使いにくいものになっていました。なので、データ活用基盤からCSV形式で必要なデータを抜き出して、別の分析ツールでダイナミックプライシングの計算を実施し、その結果をデータ活用基盤に戻しつつ、必要なシステムに流すという業務をしていました。
データ活用基盤以前は、別のシステムからCSV形式で必要なデータを抜き出して、同様の業務をしていたので、データ活用基盤があろうがなかろうが業務内容も工数もほぼ変わりません。データ活用基盤の構築と運用コストだけ、コストアップしています。
要は、データ活用基盤が「現場のオペレーション」をサポートするようなものではなく、現場が利用していた(正確には、蓄積されていた)データを統合したものだったからです。
2. なぜ「データのお困りごと」を先に考えてしまうのか?
なぜ「データのお困りごと」を先に考えてしまうのでしょうか?たぶん、わかりやすいからです。データを統合する、データを一元化する、データを多くの部署から使えるようにする、そのためにデータ活用基盤という名のシステムを構築しよう。
要は、システム構築ということでわかりやすいからです。当然ですが、データと統合し一元化し多くの部署から使えるようにしても、それをどう使えばいいのかわからないと、使われません。多くの部署から使えるようにするといいながら、現場の状況を無視してシステムを作ると、使い勝手の良くないものが出来上がります。そうなると、データ活用基盤をサポートするアプリのようなものを、大量生産することになります。しかも、個々の部署で……
某企業で、事業部ごとに似たような営業リスト生成アプリを構築し運用していました。現場の状況を考慮したデータ活用基盤であれば、共通機能として標準装備できたかもしれません。
3. 現場ヒアリングとオペレーション
上記に対しての解決策は現場ヒアリングもしくは現場体験しかないと思います。先程の航空会社の例ですが、現場から情報提供を受けていたり、ヒアリングなどは実施していたのですが、視点がデー...