◆ 新聞売り子問題とダイナミックプライシング
データ活用が進む中、ダイナミックプライシングの動きが活発化しています。ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスを考え、動的に価格を設定することです。航空機のチケットなどで有名ですが、実際は、最終的に手作業で実施していところが多いようです。今回は「新聞売り子問題とダイナミックプライシング」というお話しをします。
【目次】
1. 価格は一定のとき、仕入れ量が重要になる
(1)予測値は分布する
(2)利益を最大化する「最適な仕入れ量」
2. 価格が変動すると、さらに面白くなる
3. 利益を最大化するダイナミックな価格設定
4. 今回のまとめ
1. データ分析:価格は一定のとき、仕入れ量が重要になる
ダイナミックプライシングではなく、価格が一定のときに重要になるのは、仕入れ量です。仕入れが需要よりも多い場合、売れ残ります。仕入れが需要よりも少ない場合、売り切れ機会損失が発生します。理想は、売れ残りも機会損失も発生しない、仕入れ量です。そのためには、需要予測が必要になります。
(1) 予測値は分布する
需要予測をするとき、「10万5千個売れそうです」とピンポイントで予測しても、実際はそうなることは稀です。ここで予測すべきは分布です。
例えば……
- 8万個未満売れる可能性が5%
- 8万~9万個未満売れる可能性が10%
- 9万~10万個未満売れる可能性が20%
- 10万~11万個未満売れる可能性が30%
- 11万~12万個未満売れる可能性が20%
- 12万~13万個未満売れる可能性が10%
- 13万個以上売れる可能性が5%
……といった感じです。一番簡単な、分布の予測の仕方は、過去データから集計し分布を求めることです。
(2) 利益を最大化する「最適な仕入れ量」
このような分布が求まれば、利益を最大化する「最適な仕入れ量」を計算することができます。このような問題を、「新聞売り子問題」と呼ばれている、古典的なデータ分析・活用の問題です。事前に、機会損失額と売れ残りコストの計算方法を決めておく必要があります。
機会損失額は比較的簡単に計算できますが、売れ残りコストの計算方法は、どのような商材を扱うかで変わってきます。例えば、食品などの廃棄する必要がある場合には、単に原価だけを考えるのではなく廃棄コストも考慮するあります。耐久財の場合には、在庫の管理コストなどが発生することでしょう。
2. データ分析:価格が変動すると、さらに面白くなる
このような新聞売り子問題の中、価格が変動すると、現場からすると「ややこしい」と思うことでしょう。データ分析・活用的には、価格が変動すると、さらに面白くなります。新聞売り子問題の出発点は、需要予測でした。予測した需要の分布をもとに、利益が最大化する仕入れ量を求めるのです。
ダイナミックプライシングは、需要予想をするときに、設定した価格に対しどの程度の需要が見込めるのかを予測します。つまり、通常の需要予測と異なり「価格」要因が前面に押し出されてくる感じです。通常の需要予測も、値引きやキャンペーンなどの要因を加味するので、似たようなことを実施していたかもしれません。大きな違いは、値引きだけでなく値上がりもある、ということです。
3. データ分析:利益を最大化するダイナミックな価格設定
ダイナミックプライシングによって、利益を最大化する仕入れから、利益を最大化するダイナミックな価格設定へ変化します。ダイナミックプライシングというぐらいですから、機械的にほぼリアルタイムに価格設定ができないと、ダイナミックではないでしょう。従来の手作業ベースの価格設定だと、破綻をきたします。まさに、データをフル活用した価格設定です。とは言え、データだけに頼るのも危険なので、最終的には人的な介入があることでしょう。
この辺りは、ダイナミックプライシングのロジックさえ検討し固めてしまえば、実現するのはそれほど難しくないと思います。
4. 今回のまとめ
今回は「新聞売り子問題とダイナミックプライシング」というお話しをしました。「新聞売り子問題」とは、古典的なデータ分析・活用の問題で、機会損失と売れ残りのバランスを考え、仕入れ量を決める問題です。一言で言うと、「利益を最大化する仕入れ」の問題です。
新聞売り子問題の出発点は、需要予測です。予測した需要の分布をもとに、利益が最大化する仕入れ量を求めるから...