◆ 先行き不透明な際、活用するゲーム理論的分析と活用術
2020年からの新コロナウイルスという不測の事態により、先が見えない状況が続いています。サイコロやじゃんけんで決める事とは違い、今後どうなるか分からない時の意思決定に、ゲーム理論を活用したデータ分析・活用をすることが多々あります。今回は「不測の事態が起こり、先の見えないときに活用するゲーム理論的データ分析・活用術」というお話しをします。
【目次】
1.ビスマルク海海戦
(1)状況説明
(2)ルート(選択肢)
(3)利得行列
2.MaxMin戦略
(1)日本軍のMaxMin戦略
(2)連合軍のMaxMin戦略
3.今回のまとめ
1.ビスマルク海海戦
ビスマルク海海戦とは、第二次世界大戦中の1943年に日本軍と連合軍の間に起きた海戦です。マッカーサー指揮下の連合国軍ニューギニア・オーストラリア方面部隊が、日本軍の輸送船団に対し航空攻撃を行った戦闘で、ダンピール海峡の悲劇とも呼ばれています。結果は、連合軍の航空攻撃により日本軍の輸送船団は壊滅させられました。
(1)状況説明
状況を簡単に説明します。日本軍は、ニューブリテン島ラバウル(ニューブリテン島東部)から、ニューブリテン島の西隣にあるニューギニア島のラエ(ニューギニア島東部)まで物資を運びたい。簡単にいうと、ニューブリテン島の東側から西側(実際は、西隣のニューギニア島)に物資を運びたい。物資を運ぶルートは、ニューブリテン島の北側ルートと南側ルートの2つあります。悩みどころは、どちらのルートで物資を運ぶのか? ということです。要するに、相手の手が読めない状況で意思決定し行動に移す必要があったのです。
日本軍の行動図(引用:Wikipediaから、https://ja.wikipedia.org/ 最終更新 2021年3月11日)。
このような先が見えない時に活用するのがゲーム理論的データ分析です。この例は相手が連合軍ですが、相手を新型コロナウイルスの状況として考えると、同じようなデータ分析をすることができます。
(2)ルート(選択肢)
ビスマルク海海戦のルート(選択肢)です。北側ルート、南側ルート、連合軍から見た場合には、北側を偵察するのか、南側を偵察するのか、という選択肢が発生します。日本軍にとっては、北側ルートを選んだときに連合軍が北側の偵察を選んだり、南側ルートを選んだときに連合軍が南側の偵察を選んだりすると、よろしくありません。日本軍にとっては、連合軍の選択と逆が望ましいのです。なぜならば連合軍による発見が遅れ、その結果爆撃期間が短くなるからです。
日本軍サイドから考えると、物資を運ぶのに要する4日間の内、どれだけ爆撃期間を短くするのかがポイントになります。連合軍サイドから考えると、どれだけ爆撃期間を長くするのかがポイントになります。ポイントは、爆撃期間です。ゲーム理論的には、ここで利得行列というマトリクスを作り分析を進めます。
(3)利得行列
爆撃期間を元に、日本軍の利得行列を作ると、次のようになります。
視点を連合軍に移し、爆撃期間を元に、連合軍の利得行列を作ると、次のようになります。
これらの利得行列を元に、どのような選択肢をすべきかを考えていきます。
2.MaxMin戦略
利得行列を元に、どのような選択をすべきかを考える時、色々な考え方があります。相手の手は幾つか想像はできるが、どの手がどの程度の確率で起きそうなのか、検討が付かない場合によく利用するのが、MaxMin戦略です。昨今の新型コロナウイルスの状況で考えれば、想定される状況を幾つか考えられるものの、どの状況が起こりそうかが読めない場合に相当します。
MaxMin戦略は、2 Stepで考えます。
- Step 1:各選択肢の最悪を想定(Min)
- Step 2:最もましな選択肢を選択(Max)
(1)日本軍のMaxMin戦略
まずは、日本軍のMaxMin戦略です。次のようになります。
日本軍が北側ルートを選んだとき最悪なのは、連語軍が北側を選んだときです。このとき利得は「-2」(2日間の爆撃)です。要は、北側ルートを選んだとき最悪「-2」だ、ということで、見方を変えればこれ以上最悪にならないともいえます。日本軍が南側ルートを選んだ時、最悪なのは、連語軍が南側を選んだときです。このとき利得は「-3」(3日間の爆撃)です。要は、南側ルートを選んだとき最悪「-3」だ、ということで、見方を変えればこれ以上最悪にならないともいえます。北側ルートと南側ルートの最悪を想定した中で、最もましな選択肢はどちらでしょうか?北側ルートが「-2」で、南側ルートが「-3」なので、北側ルートの方がいいのです。要するに、日本軍のMaxMin戦略は「北側ルート」になります。
(2)連合軍のMaxMin戦略
同様に、連合...