収穫逓減とは、例えば「農業において、一定面積からの一人当たりの収穫が、労働力の追加的投下によってしだいに減少する」という現象を表現したものです。要は、労働投入量の増大に比例せず、追加労働1単位の収穫量は逓減していく、ということです。これは、土地の収穫逓減の法則と呼ばれているものです。このことは、データ分析やデータサイエンス、機械学習などを実務適応した際にも起こります。今回は「データ分析と収穫逓減の法則と果汁理論」というお話しをします。
【目次】
1. 果汁理論
2. 絞るべきか、他に目を向けるべきか
3. 常にビジネスインパクトを考えよう!
4. 売上アップ系よりもコストダウン系で多い
5. 売上アップ系のテーマも収穫逓減する
【この連載の前回:(その266)点過程データと時系列データへのリンク】
◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!
1. 果汁理論
果汁理論とは「1つのオレンジから絞れる果汁には限界がある」というものです。業務最適化などによる効率化には限界がある、ということを説明するときに用いられる、よくある例です。最も果汁が出るのが最初のひと絞りでしょう。次に絞ったときは、最初のひと絞りよりも果汁は少ないことでしょう。そして、絞れば絞るほど、果汁の出が悪くなります。収穫逓減です。
ひと絞りあたりの果樹が、どんどん逓減していくからです。あなたが実施している、データ分析やデータサイエンス、機械学習などのテーマが、業務効率化やコストダウンなどをテーマとしている場合、同じようなことが起こっているかもしれません。
2. 絞るべきか、他に目を向けるべきか
果汁は絞れば絞るほど、出てくる果汁の量は減っていきます。問題は、次のひと絞りが妥当かどうかを判断することです。このひと絞りよりも、他のテーマのひと絞りの方が、果汁の出が良いかもしれません。もし、他のテーマのひと絞りの方が果汁の出が良いならば、そちらに注力した方がいいでしょう。
しかし、取り組んでいるテーマが上手く行っているほど、残り数滴のひと絞りに執着しやめられないものです。では、どうすればいいのか?
3. 常にビジネスインパクトを考えよう!
データ分析やデータサイエンス、機械学習などのテーマを決めるときに、何らかのビジネス的な評価は実施するかと思います。可能であれば、金額換算し評価した方がいいでしょう。
このようなビジネス的な評価は、テーマを推進するときに、何度も何度も実施した方がいいです。例えば、ひと絞りごとに評価するのがいいでしょう。
例えば、メンバー3人で、あるテーマをデータ分析することで次の利益創出ができたとします。
- 1絞り(例 1年目):10億円
- 2絞り(例 2年目):1億円
- 3絞り(例 3年目):1千万円
この例ですと、3絞りあたりは微妙です。労務費を考慮していなかったら、恐らくそのデータ分析の取り組みはよろしくありません。労務費のほうが高いからです。3絞りをやるかどうかは、2絞りが終わった段階で見積もる必要があります。費用対効果からやらないという判断をすべきです。
2絞りは1億円と金額の額は高いですが、他のテーマで100億円の利益創出するものがあれば、そちらに注力した方がいいかもしれません。
4. 売上アップ系よりもコストダウン系で多い
このような収穫逓減は、売上アップ系のテーマよりもコストダウン系のテーマで多い印象があります。
データドリブンなコストダウンの試みをする際、コストダウンの対象が少なくなり逓減するパターンと、特定のコストダウン対象のコストダウン額が逓減するパターンの両方があります。ただ、データ分析などで成果が出やすいのは、コストダウン系のテーマです。
5. 売上アップ系のテーマも収穫逓減する
売上アップ系のテーマは収穫逓減しない、というわけでもありません。
例えば、見込み顧客を増やそう、商談中の顧客の受注率をあげよう、離反顧客を減らそう、みたいな売上に直結するようなテーマでも、収穫逓減は起こります。
例えば、チャーン分析を適切に実施することで離反率は減少します。しかし、その離反率の減少幅が年を経るごとに小さくなることがあります。特に、成熟市場で起こります。
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